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『然る後』_前期ニーチェ序曲

 濁っている。世界が濁っている。眼球が汚水で満たされてしまった。
 
 価値が転倒する。世の中の全てが塗り替えられていく。

 神は悪だ。私たちは救いを見たか。
 悪魔は善だ。声を張り上げる人の身なりを見よ。

 いつまでも旧式の善を為そうとするから、損をするのだ。社会から蔑まれるのだ。

 踏め、価値を。疑え、感覚を。

 足元で気味悪く、粘着質に蠢くものは先人の脳髄だ。
 所詮は、日陰でジメジメと、陽の当たる場所を恨んできたに違いない。

 いま、私たちは苦しみから逃れるための善を探求する懊悩から解放され、縋る四肢を切り落とし、うららかな雅曲に酔いしれる。

 見よ。新しい世界がはじまる。

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