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余っていなければ生まれないものがある

突然だが、人生において余白を持ちながら生きるということは非常に素晴らしい営みだ。

今日も都内を散策しながらこの仮説の確らしさを感じたので聞いてほしい。

昨晩はいつも通り仕事が夜遅くまで終わらず、結局0:00を過ぎてからタクシーで帰宅した。
だから土曜日の今日は、いつもよりゆっくり起きて、ゆっくりコーヒーを飲みながら、読みかけの本を読むところから一日が始まった。

幸い今日は夜までフリーなので、どこかに繰り出して写真でも撮ろうかと思い立ち、「まあこれくらいなら友人に会うことはできるなあ」くらいの身支度をテキパキと済ませて家を出た。
渋谷まで出てきたところで、そう言えば「吉祥寺プラザ」が今月いっぱいで閉館になるのだということを思い出した。
なんとなく最後に一作品、見納めておきたいという気になって、吉祥寺に向かうべく井の頭線の電車に乗り込んだ。

流石に土曜日の真っ昼間。人が多い。
基本的に人混みは嫌いだが、幸い今日は雨空だ。

雨の日の人混みはなぜだか許せる。


きっと晴れの日の人々の持つ強力なエネルギーにいつも圧倒されているから、雨の日は幾分こちらのダメージが少ないのだと思う。なんの根拠もないけれど。

数十分後。私は調布駅にいた。

吉祥寺に向かうつもりで井の頭線に乗り込んだはずだったにも関わらず、私は調布駅にいた。

なぜか。

途中、明大前駅で同じ車両にいたほとんどの人が降りたのだ。「何事か」と思った2秒後、つられるようにして私も電車を降りてしまった。
さらに明大前駅の乗り換え案内に目が止まり、京王線に乗り換えることができることを確認した。なんとなく、京王線に乗りたいという気分になってしまい、目的地も決めずに乗り込んだ。

当てのない外出というのは、こういうその時その時の気分でいくらでも融通が効くから良い。

電車が調布駅に着くと、ここでも思いつきで「そろそろ降りるか」と言って電車を降りた。そしてついに改札を出て街に解き放たれた私。
外は外出時よりも強く雨が降っている。
あいにく傘を待ち合わせておらず、そして当然あまり濡れたくもないので、仕方なく駅に隣接した商業ビルに逃げ込む。
3階までなんとなくエスカレーターで登り、書店が見えたのでなんとなく降りて、なんとなく書店に向かう。

書店に立ち寄ってしまったが最後、魅力的な書籍の数々が私を翻弄した。
なにより、書架の配置や特集を組んだ棚のセンスが私好みであった。

よし、この書店にはまた来よう。

心の中で思った。

結局、書籍を三冊購入。しめて約5,000円だ。
いや、書店で気になってKindle版をその場で買った一冊も含めると、正確には四冊、しめて7,000円弱の大きなお買い物になってしまった。
内訳としては、趣味の雑誌が一冊、エッセイ本が二冊、そして勉強用の書籍が一冊。
まあ、給料日の翌日ということで、今月の自分へのプレゼントとしようではないか。事後肯定で自己肯定。給料日万歳。

書籍は無料の紙袋にまとめて入れてもらった。
カバンの中に雑に押し込むこともできただろうが、買ったばかりの本を傷ませたくなかったので、ここはやむなし。地球よ、ごめん。別の形で貢献するね。何より、

良い買い物をした後というのは、その買い物袋を見せびらかせて歩きたい、そういうものではないか?


◇◇◇

丁寧に包んでもらった紙袋を片手に書店を出ると、すぐ隣に飲食店が併設されていることに気がついた。
その時点では入るつもりはなかったが、お店をよく見ると、なんとなく店内の雰囲気が良く、そして何より本を読むのに適している感じがしたため、気がついたらまんまと入店していた。

お店にはなんと簡易なお座敷のような席が設けられ、全体的に日本風を意識した空間になっていた。後で調べたら、調布以外にも同じお店があるようだった。よく考えますねぇ。
絶対コンセプトのしっかりしたカフェなんだろうなという確信を持ちながら席についた。お店の想いとか遍歴とか、そういうのにいちいちテンションが上がってしまう。コンセプト大好き抽象人間としての性。

ただし、ここだけの話だが私がこのお店に惹かれてしまった最大の決め手は他にあった。
というのも、顔のサイドを刈り上げており、まるで武士のような佇まいで茶しばきをしているのお客さんがパッと目に入り、なんとなく、

自分もこの人と同じ空間にしばらく滞在したいな

という欲が生まれてしまったのだ。無論、この方は例のお座敷の席に鎮座していた。

それから私は、お店の推しメニューと思しき「ブッダボウル」なる料理を注文した。調べたところ、米国発祥のヘルシーな丼もの料理らしい。

ブッダボウルを美味しくいただいた後、ふとお座敷席に視線を向けると、例の武士ライクなお客さんはまだ友人と楽しげにトークを繰り広げていた。会話に混ざりたい。

なんとなく、その方が近くにいることで自分のクリエイティビティが一段階上がるのではないかという気がして、私は先ほど購入した書籍のうち勉強用の一冊を手に取り、読み始めた。

小一時間ほど読書を進めた。非常に捗った。勉強としてのインプットが進んだこともさることながら、コンテンツの新しいアイデアがいくつか浮かんだりもした。

私の中で、クリエイティブな作業や考え事をすることに適しているムーブがいくつかパターン化されているのだが、調布にて新しい良きムーブを見つけてしまったかもしれない。

ただ何よりも大事なことは、この一連の行動を通して常に余白のある状態だったことだと思うのだ。

次に何をするのか、誰が決めるわけでもない。その場にあるもの、その場にいる人、そこで起きることに合わせて「なんとなく」生きる。 

これができること、これだけ余白のある休暇を過ごすことができることで、この上ない幸せを感じる。

では、また。

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