ワンちゃんは人間より歓迎です
"ワンちゃんは人間より歓迎です"
最近ハマっているフレンズのアルバムを聴きながら、夜道を一人歩いていてふと、そんな「ツッコんでください」と言わんばかりの魅力的な誘い文句が目に飛び込んできた。
どうやら進行方向左手に佇む、おしゃれな雰囲気のお店の看板らしい。
看板を眺め、スマホのカメラを構えた瞬間、お店の扉が反対側から開かれ、中から元気なワンちゃんが顔を出した。私自身、犬は好きだがあまり詳しくはなく、犬種についてはよくわからない。ただとにかく元気で可愛らしいのだ。
ワンちゃんと一緒に、飼い主さんらしい方もお店から出てきた。私は扉の向こうに視線を向ける。
しばらく見ていると、さっきお店から出てきたお客さん(とワンちゃん)がお店の中へと戻っていった。
はて、なぜ一度出たのだろうか。
そんな疑問が頭に過っていたとき、お店の中から店員さんらしい男性が出てきて、私に声をかけた。
「バーのご利用ですか?」
ちょうど一日の締めくくりに少し飲んで帰ろうかと考えていた私は、嬉々として、お店の中へと誘われた。
お店の中には、季節外れのクリスマスツリーがどーんと立っている。そして可愛らしい犬の絵が、少し天井の高いこのお店の壁を彩るように飾られているのだ。
一瞬で、「今日はいい夜になりそうだ」という予報が脳全域に伝播した。
いや、私のこの静かな興奮は、もしかしたら店員さんや先客(とワンちゃん)の脳にすら伝わってしまっていたかもしれない。
店員さんは、素敵な絵と、それからお店の奥の超おしゃれなバーカウンターについて説明をしてくれた。
お酒について詳しくない私は(ちょっと待って、私いろいろと無知すぎるな)、潔くおすすめを尋ねる。
いくつかおすすめのお酒を教えてもらい、その中から私は、モヒートを注文した。
店員さんは、朝摘んできたというミントを丁寧に丁寧に仕込んでくれる。
作ってくれたモヒートを、まずはミントの香りを感じてから、いただく。
おいしい。そしてなんとも爽やかだ。
それから、お店で作られているというお酒の話を聞かせてもらった。
お酒に詳しくない(無知な)私は、ここぞとばかりに前のめりに知識を吸収した。
ふと後ろのテーブル席の方を振り返ると、先ほどのワンちゃんがソファーの上でくつろいでいらした。
さすが、我々人間よりも歓迎されたる存在。堂々たるくつろぎっぷりに、お店の謳い文句の真実味を見たのだった。
役者は揃った。
心地よいサウンドと、美味しいお酒と、お店の温かさと、ユーモアの実演と。
最高の環境で過ごす、平日の夜。
そんななんでもない、静かな非日常の記録。
では、また。
▼Art Shop 『Na』さん
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