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組織に「対話のコンテナ」の生態系をつくる

組織開発のファシリテーションの方法論として、中原先生のブログで、クリス・コリガン氏、ケイトリン・フロスト氏の講座の学びがシェアされていました。ブログを読むだけでもかなり学びがありました。

対話を生み出す「コンテナ」という考え方

中心的な概念として、対話の場を捉える「コンテナ」というものの見方が紹介されています。

安心・安全の雰囲気のなかで、人々の対話がうまれ、そこで相互の学びあいが起こっているような「入れ物」のようなもののことを、ここでは「コンテナ」とよんでいます。(中原ブログより)

「入れ物」としているのはあくまでメタファーで、人と人との間に(暗黙のうちに)発生している、対話的関係を担保している見えない関係構造のことを「コンテナ」と表現しているのだ、と安斎は理解しています。(なんとなく無機質な印象を受けるので、「繭(まゆ)」とか言われた方がイメージに合いそうだな、と個人的には思いましたが)

組織内で入れ子に重なり合うコンテナ

チーム内で、AさんとBさんは腹を割って深い話し合いができるが、そこにCさんが乱入して3人になるとあまり話せなくなる..といった場合、AとBはコンテナに入っているが、Cはそのコンテナに入れていない、ということになります。

ただし、もしかすると、Cさんは、Aさんとのラポールが築けていないだけで、Bさんと2人きりであれば深い話し合いができる関係性が築けている可能性もあります。この場合、BとCは別のコンテナに入っていることになります。このように、コンテナは「入れ子状(nested)」的に重なり合う可能性があることも指摘されています。面白いですね。

葛藤をコントロールして、コンテナをホールドする

ブログでは、ファシリテーターの役割である「コンテナのホールド(健全に保つこと)」の項目として、「コンテナに名前をつける」「境界を健全に保つ」などいくつかの視点が紹介されていますが、以下に書かれているような、安定と不安定のあいだにある葛藤のコントロールが特に重要だと安斎は感じました。

コンテナは、生まれた当初は、1)不安定さからはじまるものです。しかし、ファシリテータの働きかけによって、それは、いったんは「安定さ」を取り戻す。しかし、コンテナの内部が「安定」しすぎて、なぁなぁの雰囲気に支配されていては、なかなか対話にはならない。  ということは、ファシリテータは2)「安定さのなかに不安定さをつくりだすこと=葛藤を生み出すこと」を敢えて行わなければならない局面がでてきます。このような葛藤のはてに、3)メンバー同士が対話を通じて「探究・創造をつくること」に迎えるのが、もっともよい状況です。最後に、意味と探究が行われたあとには、ファシリテータは場合によって、コンテナを終うこと(End the container)が求めれます。(中原ブログより)

以上、具体的なソリューションとしては実感が湧きにくいかもしれませんが、現場をとらえるための認識の枠組みとして、「コンテナ」は非常に説明力のある概念だなと感じました。

組織内のコミュニケーションを捉え直す

この考え方は、対話型のワークショップのファシリテーションの考え方としても有用だと感じましたが、組織デザインにおけるコミュニケーションの在り方においても示唆的だと感じました。

弊社のようにSlackなどのチャットコミュニケーションツールをメインで使用している会社の場合、オンラインとオフラインの両面において多層的に対話のコンテナが構成されているはずです。

Slackの運用ノウハウについてはさまざまな議論がされていますが、基本的に社内コミュニケーションをオープン化することが奨励されています。つまりコンテナの壁を透明化し、なるべく閉鎖的なコミュニケーションチャネルで組織が分断しないようにする考え方が主流です。

けれども「効率的な情報流通に適した環境」「深い対話に適した環境」イコールではないので、必ずしもオープン化されたオンラインチャット空間で「対話」が起こるとは限りません。結果として「なんとなくこれはダイレクトメッセージで伝えたい」「Slackでみんなに共有する前に、対面で2人で相談しておきたい」といった欲求が生まれることは、自然なことです。

これに対して「クローズドで話すのはやめよう!みんなが見えるところで話そう!それが組織のあるべきコミュニケーションだ!」と頭ごなしにオープン化を促すことは、組織のコミュニケーションを活性化しているように見えて、小さな対話のコンテナを焼畑的に破壊する行為としてネガティブにとらえることもできます。

かといって、組織内のコミュニケーションが濃度の高い少人数の対話のユニットだけで構成されてしまうと、社内の情報に偏りが生まれ、全体としての求心力が失われてしまうこともまた事実です。

組織内において必要なコミュニケーションには、対話、議論、雑談、説得、情報共有など複数の相反するモードがあること、それらを同時に成立させるには環境設定にジレンマがあることを理解しながら、オンラインツールと対面のワークショップやファシリテーションを組み合わせて、生態系に広がるビオトープのような多層的なコミュニケーション環境をつくることが重要だと改めて感じました。

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組織内のコミュニケーションの構造や風土の改善、変革のための対話のファシリテーションのご依頼はミミクリデザインのウェブサイトからお気軽にお問い合わせください。


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