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安斎への講演依頼、2023年の人気テーマ

この3年間で『問いのデザイン』『問いかけの作法』『リサーチ・ドリブン・イノベーション』『パラドックス思考』などを出版し、最近では「新時代の組織づくり」「冒険的世界観」などのキーワードを積極的に発信していることから、大変ありがたいことに幅広いテーマで講演依頼をいただくことが増えてきました。

リソースに限りがあるためすべてのお声がけにお応えすることはできないのですが、自分にとって「探究の成果を話すこと」は内発的にも楽しい仕事で、喋りながら「回数を重ねるごとに、言語化の精度があがってきた!」とか「このネタは話すのに飽きてきたな..」とか「同じ事例でも、以前と意味づけが違って感じられるな」とか「これは伝わるけど、これは伝わらないのか」とか、あれこれ発見があって、自分の探究をさらに前進させるプロトタイプの場として重宝しています。

何より「こんなテーマで話してほしい」というご依頼の傾向から、自分の見られ方や世の中のトレンドを感じ取ることができるので、マーケティング活動としても参考にしています。それゆえ、お引き受けできるかどうかはさておき、講演依頼は大歓迎です!

今回の記事では、2023年のここまでの登壇を振り返って、特にご依頼が多かった人気のテーマについて、傾向分析も兼ねてまとめておきます。記事の後半には、まだ依頼頻度は少ないけれど、これから積極的に話していきたいテーマも付記しておきます。


人気テーマ①新時代の組織づくり:軍事的世界観から冒険的世界観へのカルチャー改革

今年の夏以降に激増しているのは、6月27日にMIMIGURI主催で実施したウェビナー「ヒトと組織に強い経営人材になるための『新時代の組織づくり』」に関連する内容です。

広告を一切使わずに自社広報した結果、ベンチャー企業、大企業の経営層・マネージャー層・人事などを中心に3,200名以上を動員。満足度98%を記録したことで、大きな反響をいただきました。Youtubeでも講義の前半を公開しています。

本ウェビナーで掲げた「軍事的世界観から冒険的世界観へ」というメッセージは、大企業からベンチャー企業まで、さらには学校教育関係者の方々にも多く共感いただき、さまざまな場所で「話してほしい」と言われるテーマです。世界観の話だけなら10分程度で解説できるので、頼みやすいというのもあるのでしょう。

20世紀の軍事的世界観に基づくマネジメントから、冒険的世界観へ。

他方、この新時代の組織づくりについて体系的に解説しようとすると、時間がいくら経っても足りません。実際にMIMIGURIでは、この考え方を経営向け・人事向け・ミドル向けにフル解説する研修パッケージを開発して法人提供を開始しているのですが、相当に骨太なプログラムになっています。(研修に関心ある企業様はMIMIGURIまでお問い合わせください笑)

これを90minの外部講演で話し尽くすのは難しいので、理論的な解説はほどほどにして、以下のような組織づくりのTIPSをいくつかピックアップして、主催者や聴講者の関心に近いものを選んで、具体的に話す形式が好評です。

さらに興味深いことは、この内容を踏まえて「カルチャー改革(組織文化の変革)」を主題に話してほしいというご依頼が多いことです。有名企業の不祥事が相次ぎ、組織の目に見えない「カルチャー」を変えていく必要性が高まっているせいか、とても増えているテーマです。

多くの企業が、かつての「軍事的文化」が衰退し、現在では「官僚的文化」の閉塞感に頭を悩ませている。これをいかにして「冒険的文化」に改革していくか?が求められる。

実は安斎自身、2023年の研究テーマにカルチャーを掲げていて、組織文化論や組織アイデンティティ論の体系化を行っていたため、このテーマについては「待ってました!」と言わんばかりに喜んでお引き受けしています。

人気テーマ②問いのデザイン:問題の本質を見抜き、本当に解くべき問いを立てる

通念で安定して多いテーマは、やはりこれまでの著作傾向をダイレクトに受けた「問いのデザイン」に関するものです。

会議が盛り上がらないとき。良いアイデアが浮かばないとき。メンバー同士が「わかりあえない」と感じるとき。問題解決や意思決定がなかなか前進しないとき。ーこれらの原因は「問い」がうまくデザインされていないケースが大半である。

…こうした仮説のもとで問題の本質を見抜き、“本当に解くべき課題“を設定する方法論を体系化した『問いのデザイン』がHRアワード2021最優秀賞に輝き、現在は5.6万部。さらには翌年にミーティングの方法論に特化した『問いかけの作法』も3.6万部と連続でベストセラーになり、「問い」に関するさまざまな切り口で講演をいただく機会が増えました。

あとちょっとで10万部!

ご依頼によって力点はさまざまで、どちらかの著作をベースに話してほしいという依頼もあれば、著作を横断しながら俯瞰的かつ体系的に話してほしいというケースもあります。ニーズに応じて、以下のようなメタ整理を活用して「つまみ食い」的な内容にも応じています。

上が『問いのデザイン』寄りで、下が『問いかけの作法』寄り。
最近はテーマ①とのかけ合わせて「冒険(Quest)」における「問い(Question)」の重要性を解説する機会も増え、このように俯瞰して整理することも。

そして2023年になって改めて依頼が増えている背景には、ChatGPTの普及によって生成AI時代の実感が強まり、以前にも増して「問い」の重要性が高まっていることも起因していると考えられます。結果として、講演のサブタイトルに「生成AI時代〜」という枕詞がつくことも増えました。

人気テーマ③チームを覚醒させ、心理的安全性を醸成するファシリテーション型マネジメント

続いて多いテーマは、ファシリテーション型のチームマネジメントを主題にしたものです。

これはテーマ①の冒険的世界観の実現には、マネジメントを完全トップダウン式から半ボトムアップ式のファシリテーション型に切り替える必要があるため、そのチームづくりの具体論を展開するものです。

ミドルマネージャーの役割は「司令と管理」から「ファシリテーション」へ

いわゆる現場の「ミドルマネジメント」と呼ばれる領域の知見はさまざまありますが、それらをこれからの時代にアップデートしながら、各論を編み直しているところです。

ミドルマネジメントやチームづくりの実践論は現在進行形でアップデート中です。

このようなテーマは、昨今の"心理的安全性ブーム"に関連づけて依頼されることも増えています。そうした企業様の多くは、すでに心理的安全性に関する社内セミナーや研修を実施して意識改革を試みたものの、あまり手応えがないとのことで、より具体的な処方箋やネクストステップを求めてご相談いただくケースが多い印象です。

人気テーマ④ボトムアップの新規事業開発:問いを起点としたアイデアのつくり方

最後に地味に多いのが「新規事業開発」に関するものです。

ビジネスを取り巻く環境がめまぐるしく変化し、小さなイノベーションの積み重ねが求められる昨今、現場主導の「ボトムアップ型の新規事業開発」がスローガンとなって、大企業を中心に推進されています。

しかしながら、言うは易し。どのようにアイデアの切り口を見つければよいのか。見つけたアイデアの種をどのように育てればよいのか。これまでの既存事業はうまく活かしたいけれど、そこに囚われてしまってもいけない。現場の自由な意見を活かしたいけれど、トップが認めなければ、コトは動かない。そのようなさまざまな「ジレンマ」に、いまあらゆる企業が頭を悩ませています。

2023年2月16日にSPEEDAセミナーでもお話しさせていただき、反響をいただきました。

このテーマでご依頼いただく場合には、経営や人事に向けて「どのようにボトムアップ型の新規事業開発をファシリテートしていくか」をお話しさせていただく場合もあれば、現場の担当者の方々に向けて「どのようにアイデアを生み出し、周囲を巻き込み、自社の事業に影響を与えていくか」をお話しさせていただく場合もあります。

あまり「アイデア発想法」だけお伝えしても意味がないのですが、自分の衝動と熱意をアイデアに込めて、周囲をうまく巻き込んでいくためのプロジェクト推進の方法については前著『リサーチ・ドリブン・イノベーション』などでも体系化したため、好評いただいています。

おまけ:今後増やしていきたい仕込みテーマ

以上、2023年に入ってからここまでの講演依頼の傾向を振り返って、人気テーマの例を4つ挙げてきました。

  1. 新時代の組織づくり:軍事的世界観から冒険的世界観へのカルチャー改革

  2. 問いのデザイン:問題の本質を見抜き、本当に解くべき問いを立てる

  3. チームを覚醒させ、心理的安全性を醸成するファシリテーション型マネジメント

  4. ボトムアップの新規事業開発:問いを起点としたアイデアのつくり方

これはあくまで一例で、ご依頼によってテーマをまたいで要素を組み合わせたものもあれば、予想もしない角度からの変化球オファーもあって、面白そうなものには積極的にオーダーメイドでご対応しています。

その意味で、まだそんなに多くはないけれど、今後積極的に挑戦していきたいテーマについても以下に記しておきます。

仕込みテーマ⑤冒険的世界観のキャリアデザインに関するもの

これは完全に僕の趣味なのですが、冒険的世界観に基づく個人のキャリアデザインに関しても何かしら探究して、論をまとめたいと思っています。

以前にもこんな記事を書きましたが、安斎自身も大学で博士号を取得しながらも起業したり、ワークショップの専門性を確立しながらもアンラーニングしたりなど、冒険的なキャリアを進んでいる自負があるため、リフレクションも兼ねて言語化したいと思っています。

特に学習論の観点から「アイデンティティの変容」に関心があるので、関連づけながら探究し、発信していきたいな、と。

仕込みテーマ⑥仕事における「遊び」を切り口にしたもの

最近めっきりと話す機会が減っているのですが、実は僕は元々は「遊び」に関心があって、研究のコアキーワードにしていたほどです。

人間の根源的な営み・動機としての「遊び」のメカニズムや、それを仕事や課題解決に応用するための考え方について、地道に言語化・体系化をしていたのですが、あまりにも「問い」に思考を奪われて、停滞していました。

いまはあれこれ考えているうちに「問い」と「遊び」を切り離す必要もないと考え、問題発見や課題解決における「ひねり」や「ずらし」などの観点から改めて言語化しようと試みていますが、思考を前進させるためにも話す機会があれば大歓迎です。

仕込みテーマ⑦組織や仕事の「ルール」のデザインに関するもの

前述した「遊び」に関連しますが、「ルール」に関する具体論についても絶賛探究中で、これについても発信機会を増やしたいと考えています。

「ルール」は「問い」と同様に人間の社会的な営みに関わる基本的なテーマで、その性質やデザイン論についてまとめるのはやりがいがあると感じています。そしてテーマ①で示したような「カルチャー(組織文化)」にも大きく関わるテーマで、軍事的世界観⇄冒険的世界観に関わる重要変数のひとつだと感じています。

ただ、探究を始めたばかりでまだあまり具体的なノウハウがまとまっていないこともあって、以下のように試論をためながら、少しずつ言語化していくつもりです。

以上です!人気テーマ4選でも、仕込みテーマ3選でも、はたまたここに書かれていない予想外の変化球でも、講演のご依頼をお待ちしております!オンライン登壇はもちろん、オフラインやハイブリッド開催、地方開催なども以下のサイトのお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

※もし何らかの返信がない場合は不具合の可能性もあるため、再度ご連絡いただくか、安斎のSNS(X / Facebook)にご連絡ください。

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