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「遊び」の要素分解:鬼ごっこのバリエーションから考える遊びの再発明

イノベーションプロジェクト、ワークショップデザイン、ファシリテーションにおける「問いのデザイン論」と平行して「遊びのデザイン論」についても考察を進めています。

遊びが本来的に持っている楽しさや活動構造のポテンシャルをうまく活かして、組織変革やイノベーションに必要な人間の学習や創発を生み出していくという考え方です。

以前に「問いの因数分解」という考え方を紹介しましたが、今回の記事では、遊びの性質を読み解き、手懐けるためのエクササイズとして「遊びの要素分解」という考え方を紹介します。

遊びを環境変数に分解する

遊びを分解するにあたって、「学習環境デザイン」の枠組みが役立ちます。学習環境デザインとは、人間の学びの環境を「活動」「空間」「共同体」「人工物」という4つの要素に分解し、それぞれを結びつけながらデザインしていく考え方です。これを「遊び」に適応すると、以下のように遊びを環境要因に分解することが可能です。

活動:どんなルール、目標、プログラムを通して遊ぶか
空間:どんな建物、家具、地形を利用して遊ぶか
共同体:どんな人たちとどんな関係性で遊ぶか
人工物:どんな道具、教材、素材を活用して遊ぶか

鬼ごっこを要素分解してみる

たとえば「鬼ごっこ」という遊びは、「鬼役 vs 子役」という関係性(「共同体」デザイン)のもとで、「鬼役が子役を追いかけ、タッチされたら鬼になる」というルール(「活動」デザイン)が設定されていることによって、面白さが成立している遊びです。

必要な「空間」には特に制約はありませんが、フィールドが制限される(ex 公園の中だけで逃げる)場合が多いかもしれません。そして「人工物」は特に必要のない、シンプルな遊びです。

鬼ごっこの環境変数のバリエーション

鬼ごっこには、上記の環境デザインを原型とした類似した遊びのバリエーションが多数存在します。(以下、その一例です)

鬼ごっこ:鬼役が子役を追いかけ、タッチされたら鬼になる
ケイドロ:警察役が泥棒役を追いかけ、牢屋に入れる
隠れ鬼:かくれんぼ+鬼ごっこ
しっぽ鬼:タッチの代わりにしっぽを取る
ボール鬼:タッチの代わりにボールを当てる
高鬼:鬼よりも高い所にいれば安全
色鬼:鬼が指定した色に触れていれば安全
氷鬼:鬼が触れると凍り、仲間が触れると解除
手繋ぎ鬼:タッチされたら鬼と手をつなぎ鬼に加担
目隠し鬼:鬼が目隠しし、子は手を叩いて逃げる

これらについて要素分解をしてみると、遊びの要素分解の意義と醍醐味がより見えてきます。

たとえば「ケイドロ」という遊びは、「鬼ごっこ」の原型をベースにしながらも、「警察と泥棒」というよりリアリティのある共同体的な文脈が持ち込まれ、さらにフィールドに「牢屋」という新たな「空間」設定をすることで、「捕まった仲間を牢屋から救出する」という新たな「活動」(ルール)が設定され、また違った面白さが創出されています。

他にも「しっぽ鬼」は、お尻に「しっぽ」という「人工物」をつけることで、また「高鬼」は、地形の高低という「空間」の要素を活用することで、原型に比べて難易度やふるまいを変質させています。また「手繋ぎ鬼」などは、鬼が増員されていく「共同体」的な要素が面白さの性質をだいぶ変えていますね。

遊びの変数操作による再発明

言い換えれば、これらは「鬼ごっこ」という遊びの環境変数を操作することで、再発明された遊びのバリエーションと捉えることもできます。

この要素分解の感覚を身につけると、既存の遊びの面白さの本質を探ったり、ある遊びに別の遊びのエッセンスを転用したり編集したりすることで、新しい遊びを発明していくことが可能となります。

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このような発想で、たとえば「かくれんぼを要素分解すると?面白さの本質はどこにあった?」「だるまさんがころんだを要素分解すると?面白さの本質はどこにあった?」「かくれんぼの面白さを、だるまさんがころんだに転用すると、どんな遊びが考えられる?」などと考えてみるだけでも、「遊びをデザインする」ための思考の筋力がトレーニングできるのではないかと思いますので、ぜひトライしてみてください。

以下、参考記事です。ぜひ「問いの因数分解」にも挑戦してみてください。

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