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タンパク質中心の食事の本当の効果とは。【健康面のコスト Part 2】

さてさてまだ続きます「タンパク質シリーズ」。だって、あまりにも皆さんにお伝えしたいことが多すぎるんだもん。(いきなり恋する乙女感出すな。)

今までのタンパク質シリーズでは、タンパク質の基礎固めと、動物性と植物性のタンパク質の比較をタンパク質の質と健康面のコストの2つの視点でしてきました。これでもうタンパク質を摂取するにおいて気をつけた方がいいことはわかったから、「早くタンパク質のいい摂取源教えて!プロテイン、バッチコーイ!」となっていることと思います。(決してそんなことはない。)

でも、タンパク質摂取源やその取り入れ方のご紹介をする前に、もう一つ触れておきたいことがあります。それは、タンパク質の過剰摂取の危険性

動物性タンパク質であれ植物性タンパク質であれ、タンパク質の摂りすぎはそれなりの影響を体に与えます。痩せたい一心(まず、それ以上痩せる必要ある?って話ですが、話変わっちゃうのでこれについてはまた今度)でタンパク質中心の食事にに手を出す方も沢山いらっしゃいますが、体を傷つけるだけでなく、引き締まった体どころか、太りやすい体作りをしてしまうことになることも。

なので、高タンパク質食よって起こる体への悪影響をちゃんと理解して、悲惨な事態を未然に防ぎ、バランスの取れた食生活を送るモチベーションを上げるお手伝いができたらなと思います。

では、早速いきましょう。

今回の目次はこちらです。


タンパク質の取り過ぎってあるの?【前置き】

「アトキンスダイエット」
「パレオダイエット」
「ケトジェニックダイエット」
「ケトン体ダイエット」
「糖質制限ダイエット」

など、早く体脂肪を落とし、筋肉量を増やす食事法として色々な「たんぱく質中心」かつ「穀物や豆類、または炭水化物自体を否定」するようなものをよく目にします。

「たんぱく質はいくら食べても太らない。」
「食べたら食べた分だけ筋肉が増える。」
「体脂肪を落としやすくなる。」
「血糖値を上げない。」

などの正しいわけでもない殺し文句を使って、食事の量を制限する必要がなく、お腹いっぱい食べたい方、腹八分で食べるのをやめることができない方、我慢したくない方、過食気味の方がとっても食い付きやすい食事法です。

実際、高タンパク質&低糖質な食事をしたら、短期で簡単に体重が落ちます。でも、それで味をしめてその食事法をそのまま続けると、体の内側からどんどんと健康が奪われていってしまうのです。

ちょっとしたYukaの語り。
炭水化物をほとんど食べないようにするダイエット法として一時人気を集めた『アトキンスダイエット』を考案したアトキンス博士が、心臓発作と心不全に見舞われていたり、高血圧だったりしたことはよくこのことを表しているかなという感じがして止まないです。
ちなみにアトキンス博士は『心臓病専門医』で、管理栄養士ではなかった上に、この食事法は低炭水化物を推して脂肪燃焼を狙うものだったのですが、タンパク質の目先の効果だけを見て、長期的にはどんな影響が出るのかはちゃんと考えられていなかったのかなと。
まず、理想のマクロ栄養素の割合からかけ離れちゃってますしね、アトキンスダイエット。炭水化物は人間の体の一番のカロリー源として摂るべき栄養素なので、その摂取を制限してしまうと体に不調が現れるのは当たり前です。
『お医者さん』が提唱している食事法だから確実&安心と思うのはやめたいですね。

高タンパク質食の弊害をお話しする前にまず、多くの人が高タンパク質の食事に惹かれる一番の理由である、減量効果についてお話ししていきましょう。


1.「高タンパク=減量」の原理

高タンパク質の食事でスルスルと体重が落ちる理由の一つ目、体の水分量が減る。二つ目、ない

もちろん、高タンパクの食事を続けることで体内の糖質の貯蓄がなくなって、体脂肪が燃え始めて体重が落ちることもあり得ますが、それが実際に起きるまでには結構時間がかかります。体脂肪が燃えるより先にタンパク質(筋肉)が燃やされるので。(悲しいことに。)

なので、高タンパク質食で初めにスルッとに体重が落ちるのは、体に蓄えられている水分がどんどん体内から出されるからなんです。

高タンパク質食:たんぱく質のカロリー的割合が20%よりも高い&自分のタンパク質摂取基準よりも高い食事。タンパク質の摂取量を増やす分、糖質の摂取量を抑えているという前提で書いています。

高タンパク質食にすると、体から水分が出される理由は大きく分けて2つあります。

1-①糖質枯渇による脱水

高タンパク質食をして食べる糖質の量が減ると、体内のいろんな機関を働かせるには体内に入ってくる糖質(グルコース)の量だけじゃ足りなくなってしまいます

そうなると使われ始めるのが、今まで体に貯蓄されていた糖質(グリコーゲン)。グリコーゲンが使われるたびに、グリコーゲンと一緒に貯められていた水分も解き放たれるので、水分が体の外に出され、その分体重がどんどん減っていきます。

1-②タンパク質過剰摂取による脱水

タンパク質は体内で分解(消化)されてアミノ酸として吸収されるという話はもう前の記事でお話ししましたが、分解されてアミノ酸に変わるとき、同時に窒素も放出します。この窒素は体液中でいらないものとして水分と一緒に体外へ排出されるので、タンパク質過多の食事をすると、沢山出る窒素の排出のために水分も一緒に体外に出されてしまいます

Yukaのコメント
高タンパク質食をしているいていないにかかわらず、スルッと体重が落ちた時は、体脂肪が落ちたと思うよりも、水分が出たから、もしくは筋肉量が落ちたからと思う方が堅実。体脂肪は簡単に落とそうと思えば落ちますが、時間はかかるので。


2.たんぱく質過剰摂取による体への悪影響

続いて、タンパク質を沢山取り過ぎてしまうことによる体への悪影響について。タンパク質シリーズ第一弾ではタンパク質の役割&必要性について、第二弾では動物性タンパク質の健康への影響について取り上げました。

今回の記事では動物性植物性関係なく、「タンパク質」の取り過ぎによる体への弊害についてお話ししていきます。

2-①脱水症状

上でもお話しした通り、高タンパク質食は体から水分を出します。そして慢性的&低レベルの脱水状態になる可能性があります。

「水不足なら沢山水飲むようにすればいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、高タンパク質食を長期的に続けていると、体が水分を保つキャパシティ事態落ちてしまいますし、いつも通りもしくはそれ以上の水分摂取量では水分不足になることもあります。

Yukaのコメント
人間は体内の水分量がほんの数パーセント減るだけでも意識障害を起こします。脱水状態が続き、気づいたときには「手遅れ」となってしまうことも。これから暑くなりただでさえ水分不足になりやすいので、自ら脱水状態になりやすい状況を作ってしまわないように気をつけたいところ。

2-②便秘・下痢(腸内環境悪化)

高タンパク質食は、タンパク質源が植物性でも動物性でも腸内環境を悪くすると言われています。でも便秘や下痢などの症状は、豆類などの植物性タンパク質ではなく、特に「肉・魚・卵・乳製品」などの動物性タンパク質を選ぶことで起きてしまうようです。

タンパク質を摂るために動物性食品に偏った食生活にしてしまうと、

①食物繊維を食べる量が減る(善玉菌の餌が減る&便のカサが減る)
②腸内で悪玉菌のエサとなる窒素化合物が増える
③腸内でアンモニアが増え、悪玉菌が過ごしやすいアルカリ性側に傾く

という3つが相まって悪玉菌が有意な状況を腸内で作り出してしまいます。このような悪い腸内環境では、善玉菌は腸内を整えることができずに下痢や便秘などを含む腸の不調を引き起こすことになってしまいます。

Yukaのコメント
この点、植物性タンパク質は食物繊維が豊富ですし、ムング豆のタンパク質を食べるとフィルミクテス門(Firmicutes)が減って、バクテロイデス門(Bacteroidetes)が増加し、エンドウ豆のタンパク質を食べるとビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)とラクトバチルス属(Lactobacillus)が増えるという研究結果が出ています。
フィルミクテス門:悪玉菌と共生する日和見菌で、糖を代謝することで人が食べた物からエネルギーを抽出する働きを持つ。勢力が大きくなると、少しの食べ物からも多くのエネルギーを吸収するようになり太りやすい体を作ってしまう。肥満の人に多く検出されている、通称「デブ菌」。

バクテロイデス門:善玉菌と共生する日和見菌。食物繊維を消化する中で短鎖脂肪酸という物質を作り出し、は腸管ホルモンの分泌を活性化させて食欲を抑えたり、体の代謝を高めたりして太りにくい体質を作るお手伝いをする。やせ型の人に多く検出されている、通称「やせ菌」。

ビフィドバクテリウム属(ビフィズス菌):乳糖などのオリゴ糖をエサにして乳酸と酢酸を作り出し、腸内のpHを酸性に傾けることで大腸を悪玉菌の増殖しづらい環境にしてくれる乳酸菌の一種善玉菌と呼ばれる。

ラクトバチルス属:ビフィズス菌に似た作用を持つ、昔からヨーグルトの製造に使われてきた乳酸菌の一種。これもまた善玉菌

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2-③腎不全

タンパク質を中心とした食事は、体の中で沢山の老廃物(アンモニアなど)を作り出します。この老廃物たちを体外へ排出するために、私たちの体はせっせと働かないといけないのですが、この老廃物を外に出すためのお掃除を担う臓器が腎臓です。

毎日のようにタンパク質を沢山食べ、沢山の老廃物を作り出すと、腎臓は常にフル稼働することになり疲れ果ててしまいます。その結果、いずれ自力で掃除できなくなり、腎不全を引き起こす可能性があります。尿検査で「尿中蛋白」の欄があると思いますが、あれは腎臓の機能が低下してろ過する働きが弱まった時に陽性反応が出たりします(違う原因で陽性になることもありますが)。

Yukaのコメント
ちなみに、腎機能が低下した場合は、一般的に低たんぱく質食が施されます。もっとひどい場合は人工透析をしなければいけなくなることも。植物性タンパク質は動物性タンパク質よりも比較的腎臓への負担が軽く、菜食は従来の食事ほど腎臓へのダメージが大きくないので、重度でない腎不全患者の食事療法として、従来の低タンパク食よりも菜食の方が持続可能&効果的かもしれないと検討されています。

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2-④アシドーシス

高タンパク食(特に動物性たんぱく質)により、理想的なタンパク質の割合よりも上回っていたり、自分に合ったタンパク質の摂取基準よりも多くタンパク質を食べていると、体を酸性に傾けてしまいます

理想的なタンパク質の割合:全体の摂取カロリーの13-20%
自分にあったタンパク質の摂取基準:活動量、運動量、スポーツや運動の種類によって、菜食の場合は0.9-2.0g/kg/d。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

体が酸性に傾くとは、私たち人間の体に流れる血液のpHが下がってしまうことを言います。人間の血液のpHは、通常弱いアルカリ性pH7.40くらいにいつも保たれています。血液がpH7.35未満になってしまうと、体が通常値よりも酸性側に傾いている「アシドーシス」という状態になります。

①アシドーシスと骨の健康
体を酸性に傾ける食材を摂る量が多いと、尿中へのカルシウム排出量が増えると言われていて、骨密度低下につながる可能性があります。実際に、体を酸性に傾ける食材を摂る量が多いと背骨や骨盤の骨密度が減るという研究結果が出ていて、さらに植物性よりも動物性のタンパク質をより多く食べていると、大腿骨頸部の骨密度低下し、その部位の骨折率も高いということが明らかになりました。

②アシドーシスと腎臓結石
体を酸性に傾ける食事と腎結石になるリスクの結びつきはかなり強いと言われていて、すでに腎結石になった人は特に食事内容を体を酸性にしないようなものにするよう勧められています。

体のpHを正常値に保ってくれる食事:野菜果物をたっぷりと摂り、動物性タンパク質を避け、タンパク質の摂取量は理想値&摂取基準に留める。

③アシドーシスと筋肉
食事によるアシドーシスはタンパク質分解を活発化させることによって、加齢による筋肉量の低下を促進すると言われています。老後に筋肉量が減ると転倒しやすくなりますし、高タンパク質食を長く続けていたことによって骨密度が低下していると、転倒により骨折し、歩くことが困難になってしまうなんてこともあるかもしれません。

また、アシドーシス状態から脱し、体がよりアルカリ性になることで、筋トレなどの無酸素運動の際に発生する乳酸が中和されやすくなり、疲れるタイミングが遅れるため、より一回のトレーニング量を増やせると期待できます。

④アシドーシスと生活習慣病
食事などによって起こる軽度のアシドーシスによって起こる体内の反応の一つとして、コルチゾールの分泌が増えることとコルチゾールの働きを抑える能力が下がってしまうことがあります。これによって、活性化されたコルチゾールの量が体内で増えると、様々な代謝異常が起こり、インスリン抵抗性、2型糖尿病、心臓病などのリスクを上げると言われています。

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はい、今回はこれくらいで止めておこうかなと思います。

長期にわたる高タンパク質食はこういったリスクを伴うため、注意が必要なんです。こんな弊害がありつつもタンパク質をたくさん食べる人が多いですよね。

このようなリスクを知らないということを除いた場合、タンパク質を沢山食べる理由で一番多いのが「筋肉をつけたいから」だと思います。でも、タンパク質は食べたら食べた分だけ筋肉を作るのに使われるというわけではありません。

タンパク質は体内に入り、消化吸収されると、

①筋肉を作るために使われる
②その他の体内機能のために使われるこちらの記事にまとめています)

というのが主ですが、摂りすぎてしまうと

③体脂肪として蓄えられる
④トイレに流される(言いたいことわかりますよね、、?笑)

筋肉を増やしたいのであれば、自分に一番合っているタンパク質摂取量を知り、それを目指してタンパク質を摂取し、それ以上は自分の体のためにも摂らないように心がけることが大切です。

理想のタンパク質の摂取基準に合わせて食事をすると、今までよりも食事の量が減ってしまう場合は、その代わりに穀物や芋類でしっかりと筋肉を動かすためのエネルギー源(グルコース)を摂りましょう。筋肉があってもエネルギー源なかったら動かせないですからね(立派な車があってもガソリンがなければ動かないみたいに)。

そして、果物や野菜もしっかり食べ、体の調子を整えましょう(車がいつも万全な状態で動いてくれるように、細かい部位を整備する感じです)。

効率的かつ健康的な筋肉量の増やし方(タンパク質の量、摂るタイミング、タンパク質の種類など)についてはまた後日お書きしますね。


次の記事では、
・菜食のタンパク質摂取源
・取り入れ方のコツ

などについて書いていきます!

noteには書かれていないより詳しい情報をご希望の方や個人的な質問・ご相談のある方は菜食栄養学セミナーにてお伺いいたします☺︎

I hope you are having a wonderful morning, noon, evening or night, whenever you are reading this.

Lots of love,
Yuka

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