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ネットフリックスの人事責任者に求められるのは経営者スキル

ハーバード・ビジネス・レビューの掲載された元ネットフリックス最高人材責任者のパティ・マッコードの記事。ネットフリックスがどのように採用を進めたか、どんな基準で採用したか、報酬制度はどう変わっていったかなどが書かれている。

ちなみにパティは、Aプレイヤーという言葉が大嫌いだし、カルチャーフィットも懐疑的な人物。その人の記事の日本語タイトルに「Aプレイヤー」という言葉をあえてだろうけど含めているのだから、相当DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部はキモが座ってますね。

では採用活動では何を見ているのか?

優れた採用活動とはすなわち、優れたマッチングである。そして、それはあなたの予想通りにいかないことが多い。
(1)履歴書では見えない水面下に隠されたところを見極める。
(2)マネージャーを採用のあらゆる段階に関わらせる。
(3)採用担当者をビジネスパートナーとして扱う。
(4)常に採用を意識する。
(5)必要なパフォーマンスや目指す未来に見合った報酬を用意する。

(1)の例である。ネットフリックスで技術系人材の採用担当者で最も優秀だったのは、テクノロジーについてはほとんど何も知らないが、会社のビジネスや、会社が解決すべき根本的問題を理解している人材だったようだ。つまり、採用担当者は、候補者の経歴よりも問題解決に対するアプローチのほうが重要であると理解する必要がある。

採用においては、一般的には、肩書決めて、採用要件決めて、採用人数決めて、さぁ募集開始というのが多いだろう。

その人が、会社にどのように貢献するか、ユーザーをどのくらい伸ばすか、収益をどのくらい伸ばすか、ユーザーのリテンションをどのくらい高めるか、それらは何を通じて行うかという視点は見られない。それは採用要件には書かれないことがほとんどだからだ。

採用担当者は、一昔前の営業と同じような仕事をしている。採用要件にあった人をなるべく多く採用して目標達成するというイメージだ。だから、例えば事業を理解する、ユーザー獲得方法を理解する、売上をあげる方法を理解するという事業に直結した考えに基づいて、採用要件を深めようというインセンティブは湧きにくい。事業を理解した上で採用要件に落として、そのことが採用担当者の評価になるという仕組みが必要である。評価になるというのは、全社として、その採用基準が徹底されている必要がある。

その採用担当者の上司が、人事部門の責任者になるわけだ。だから、人事部門の責任者は、人事の専門家ではなく、ビジネスパーソンが人事部門の運営をするべきだ。人事部門の責任者は、会社のビジネスの詳細、収益構造、顧客、将来の戦略を理解しなければならない。そうでなければ、採用担当者に課している仕事内容との整合性が取れなくなる。

ここは非常に重要なポイントだ。

例えば次のようなエピソードが書かれている。

ネットフリックスの非常に重要な人材に対して2倍の報酬が持ちかけられた。極めて価値の高いパーソナライゼーション技術に取り組んでおり、専門知識の高さは世界でも並ぶものがいない。ネットフリックスで働くことでこの人材はまったく新しい市場価値を獲得した。

その人材に対して、パティは考え抜いた後でこんなメールを出したという。

私が間違っていました。ところで、損益計算書を確認したところ、このチーム全員の給与を倍にできそうです。

人事責任者が、収益構造を理解し、将来の戦略を理解しているからこそ、失ってはいけない人材がわかり、そしてその人材に対しての適切な報酬金額がわかるわけだ。パティは、今ある既存の人事制度と給与幅にはこだわっていない。それにこだわりすぎると、会社に今後顕著に貢献するであろう人材を失ってしまうことを誰よりもわかっているからだ。

もちろん、彼はこうも言っている。

すべてのポストに最高レベルの報酬は出せない。だから業績を伸ばす可能性が高いポストを特定し、そこには高い報酬を出して最適な人材を充てる必要がある。

ココらへんのまさにバランス感覚、何を「捨てるか」が経営マインドそのものと言える。差をつける感覚がなければ事業は営めない。これが人事部門の責任者にも徹底されていることが、ネットフリックスの強みなのだと改めて分かる。

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