陶磁器16:日本の焼き物(岐阜県:美濃焼)
おはようございます。
今日は朝から快晴で日差しはあるもののもはや空気は秋色で、台風一過のような状況でも真夏のそれとはもはや違ったものになりそう。まだまだ雨自体は降る地域も多いようだけど、なんとかやり過ごせますように。
さて、日本各地の焼き物の名産地をピックアップしたところで、具体的に1つずつ見ていこう。
7回目の今日は、北陸から中部に南下して、岐阜県の美濃焼。
美濃焼(陶器、磁器)
美濃焼は、岐阜県の東濃地方で作られている焼き物。美濃焼の特徴は多様な種類が存在し、美濃焼は1つの様式を持たず、15種類が伝統工芸品として指定されている。様式がなく「特徴がないのが特徴」といわれることも。
代表的なものは千利休によって確立され古田織部の美学によって作られた織部。主に瀬戸黒天正年間に焼成されたため、天正黒・引き出し黒という呼称もある。緑釉の深い色と個性的な形、幾何学的紋様の装飾が魅力で、作風によって黒織部・青織部・総織部などの種類がある。また「志野」は、釉薬の下に絵付けが施されたという点で、日本の陶器の歴史上で画期的な焼き物とされている。薄紅色が美しく、長石釉による気泡状の風合いがある志野の最盛期は桃山時代とされている。
人間国宝の荒川豊蔵が尽力し、江戸時代にいったん姿を消した志野を再現し、現代に続いている。同様に近代になって再注目された黄瀬戸は、控えめで素朴な趣きがあり、人気のある美濃焼。
歴史
美濃焼は、5世紀頃に朝鮮半島から須恵器とろくろ、穴窯が伝えられたことを機に始まる。平安時代には、灰釉を施した白瓷(しらし)という、須恵器を改良し釉薬を使った陶器が焼成された。安土桃山時代から江戸時代はじめまでは、茶の湯文化を反映した芸術性の高い焼き物が多く生産され、織部や志野、黄瀬戸など美濃焼を代表する焼き物が隆盛を極めた。
17世紀後半からは生活雑器が生産され、磁器の白さをめざす白釉を施した太白が焼成される。江戸時代末期には磁器の製造が始まり、透光性をもつ長石質磁器が作られた。
明治時代に入り、染め付け顔料の唐呉須の輸入開始により発色が安定し、銅板やスクリーンプリントなど様々な技法が開発された。明治時代中頃には日常生活雑器の生産を開始し、低コストを実現するために製品別分業が発展。大正時代末期には、電気の供給開始により機械化が進み生産規模を拡大し、窯も登り窯から炭釜へと変換していく。昭和時代に入ると、高級品の生産やタイル製造もはじまり、美濃焼は名実共に日本一の生産量を誇る焼き物となった。
地理
美濃焼が生産されている、岐阜県・東濃地域(土岐市・多治見市・瑞浪市・可児市)は、日本一の陶磁器の産地として知られる。その生産量は日本の陶磁器生産量の半分を超えており、長い歴史の中で時代のニーズに合わせて作ってきた幅広い製品展開とその生産量によって、南の瀬戸焼や佐賀の有田焼と共に日本三大陶磁器に数えられる。
縦長の岐阜県においてこれらの東濃地域は岐阜の南に位置していて、愛知県の瀬戸市からは山間を抜けて10kmほどとほぼ隣町といった距離感で存在している。また、この地域には土岐川(愛知県に入ると庄内川と呼ばれる全長96 kmの一級河川)が流れており、ここでも土作りと水運で役立っていたものと思われる。
作り方
土練り 固さ、水分が十分に均一になった土を、少しずつ回転させながら練る。回転させるのは中の空気を抜くため。練った後が菊の花びらに見えるため、土練りは菊練りとも言われる。
成形 美濃焼は主にろくろ、手ひねり、またはタタラ成型で作られる。原型から使用型まで多種多様な型を使用して量産していく。い込み成型は、凹の石膏型に泥状の粘土を入れて作る。圧力い込み成型は、圧縮空気によって粘土泥を石膏型に送って成形する方法。その他にも機械ろくろ成型、全自動成型、プレス成型などの型を用いる。
乾燥 成形した後削るなどの作業が終わったら、素焼きを行う前にゆっくり乾燥させる。乾燥の方法は陰干しあるいは天日干し。模様の貼り付け、金櫛・竹櫛で模様を描くなどの素地の装飾や厚さ、作品の大小で乾燥に必要な時間が変わる。それぞれ適正な時間をかけて充分な乾燥が必要となる。
素焼き 素焼きは原料の土の水分をとばし、可燃物を燃やして強度を上げる工程。700度~800度の温度で時間をかけて焼成していく。素焼きすることによって、釉薬がかけやすくなる。
下絵付け 下絵付けは施釉の前に行う工程で、釉薬の下に絵を描くこと。乾燥させた生地を素焼きしたものに、コバルトや鉄、銅といった好きな色の顔料を使って絵付用の筆で描いていく。描き終わったら上から透明釉をかけていく。呉須とよばれる酸化コバルトを使用すると藍色に発色し、鉄で描いたものは茶褐色や黒褐色に発色をする。
施釉 素焼きした作品に釉薬をかけることを施釉という。釉薬は焼くと溶けて、表面にガラスのような膜を作るため、透水性がなくなり硬度が増す。色を付け、光沢を与えて作品を装飾する役割をします。釉薬の基本は、灰釉・長石釉・鉛釉の3つの種類です。この基本に鉄や銅、金属を加えて、いろいろな釉薬ができ、 施釉の主な手法は、ずぶがけ・ひしゃくがけ・スプレーがけなどがある。
本焼 施釉後に高温で行う焼成が本焼。窯詰めは丁寧に行い、窯全体が均一の密度になるように慎重に置いて焼き上げる。主な窯の種類は、登り窯、ガス窯、電気窯など。
上絵付け 上絵付けは、本焼した後に上絵用の絵の具を用いて絵や文様を施すこと。赤絵・色絵・五彩の上絵付がある。絵具は、鉄・銅・コバルト・マンガンなどの金属にソーダや鉛などをプラスして調合したもの。繊細な線を書き込んだ後、色が飛ばないよう本焼よりも低い700~800度で焼成を行う。
完成 最後の焼成が終了後、やすりがけを施して仕上げとなる。
*上記の情報は以下のリンクからまとめています。
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