紫がたり 令和源氏物語 第百三十六話 澪標(四)
澪標(四)
紫の上はここのところたびたび空を眺めるようになっておりました。
そして、そんな折には祖母の尼君が愛用していた数珠を人知れず握りしめているのです。
形のよい額をあらわに、美しい横顔には憂いが含まれています。
源氏が須磨へ隠棲した時からの習慣のように、紫の上はふと空を見上げることが多くなっておりました。
初めは須磨の源氏を想って、きっとこの同じ空を眺めているに違いないという思慕の情からでした。
それが、物思いが嵩じると心を解放するように自然と目が空の彼方を臨もうと