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稽古場「そのもの」をどう捉えるか

公演期間が長かろうと短かろうと同じぐらい準備期間がかかるのは本当に面倒だけど、「すごく大きな会場で1日だけに集約する」のと「中小規模の劇場で長く公演を打つ」のは一体どっちがいいのやらとつくづく思う。個人的にはロングラン打ちたい。

さて、手前味噌だけれど過去の記事。

「稽古場がない!」と小劇場界隈の人たちが言っているのは「自分たちの予算に見合った安くて広くてうるさくしても文句言われなくて直前でも予約ができる稽古場がない」ということであって、まあはっきり言って何かを妥協すれば稽古場は見つかるってことですよ、主に課金もしくは時間に余裕を持った稽古場確保で解決する感じはするけど。

さてリアルな話をしよう。

稽古場の費用を抑えるために、都内の小劇場の団体がやっていることといえば


● 東京23区内で「演劇で利用可能な公共施設を洗い出し」
● 団体の利用者登録を行い(ここで割引になったりする)
● 登録団体だと優先的に抽選に参加できるので最速で予約できる日に希望日を抽選で出し
● それでも取れなかったら一般申し込み受付の日に補填したり、他の会場を探したりする。

ざっとこんな感じである。舞台やイベントのチケット確保するオタクばりの努力であるけれど、まさにそう。イベントスケジュールが発表された段階から戦争はすでに始まっているというけれど(会場までの移動手段・宿の確保、キャンセルが可能な期限のチェックなど)それこそ、劇場を予約した段階どころか候補日が上がってきた段階で稽古場取り戦争は始まっていると言っても過言ではない。つまりこれは、「とりあえずこの日程あいてるから!」で3ヶ月先の劇場を押さえて公演やったろ!今から準備!という団体においてははっきり言って無理な芸当である。

ちなみに、ファンクラブ先行ならぬ登録団体の先行抽選は利用開始日の2ヶ月前だったり3ヶ月前だったりするので、それこそ稽古期間が2ヶ月間あるのであれば、本番の5ヶ月前とかには稽古スケジュールを暫定でも出せていれば稽古場は最も安く押さえられる可能性があるということ。キャストのスケジュールが出てない?演出家にNG日を出させて2ヶ月先の予定を調整させるしかないだろう、直前までスケジュール粘って稽古場取れない方がよっぽど問題だ。いちいち全員のスケジュールにお伺いを立ててまで稽古をするんじゃなくて、まず第一段階で合わせられる人間を集めよう。

稽古時間がトータルで120時間として、公共施設の枠が1回4時間、合計30コマ抑える必要があるとすると、5万の予算で仮に確保するとするならば、1コマにかけられる稽古場費は1,500円。実は色々駆使すれば結構これぐらいの費用で収まってしまうのである。

ちなみに、公共施設の稽古場利用というのはデメリットももちろんあって、公民館のたぐいでは「単発利用」しかできない。稽古場ジプシーである。
たとえ、同じ部屋を次の日終日借りていたとしても、荷物は置いておけないし、当然舞台セットも持ち込めない。また、部屋自体が小さいところもあると舞台の実寸での稽古ができなかったりもする。

稽古というものは本番の質をあげるための期間であるにも関わらず、作品のクオリティとトレードオフになっている場合がある

もちろん、稽古場ジプシーで問題ない演出・美術プランの場合はある。例えば、朗読劇であるとか、2階建だったり階段があるような大掛かりな舞台セットを組まない、移動する大道具でパネルの移動やドアなどがない、置いてある小道具で家具とかの類がないものだったら絶対的に問題はないと思う。役者がその都度持ち帰ってなんとかなるサイズの手持ちの小道具、衣装だけでなんとかなるような公演なら実寸ある程度取れれば問題ないと思う。

稽古場用の大きめの小道具は全部本番用とは別のもの、稽古場にあるパイプ椅子などで問題ないというのは妥協できるポイントかどうかは企画者の決定次第だけれど、実際問題、劇場に入ってから本番用の道具で合わせられるほどの力量がある役者に出てもらえるかどうかというのは運だと思う。かといって、実寸とって稽古していても劇場に入ってから調整できない人ももちろんいるし。

ちなみに、それなりの稽古場を借りようとするなら最低でも1日1.5〜2.5万円は必要。そこに仮組みした舞台セットやらなんやら入れるなら道具代も跳ね上がるのは自明。つくづく、動画などでもよくアップされてる商業舞台、特にやれ回転、やれ2階建なセットが多いミュージカルの稽古って、金がかかってる現場だな!と思うわ

小劇場クラスの予算感、それこそ1本200万円コースで稽古場代に20万も30万もかけてられないのはわかるし予算として「そこにそこまでかける?」とは思うけれど、じゃあ「どう折り合いをつけるか」というのは難しい話よね。

でもやっぱり、本番で事故りそうだったり動きがおぼつかない公演を見ると、どこで何とかできたポイントがあったんじゃないかなあと、一観客としては思うわけですよ。難しいね!


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