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そいつは本当に小さいのかい

 ふとした喜び、楽しさ、うれしさ、やさしさ。日常の中でぽつぽつと出会うそれらを、人はよく『小さな幸せ』なんて言ったりする。
 ちょっとした偶然、ちょっとした気遣い、ちょっとした巡り合わせ、などがもたらしてくれる、ちょっとした幸せ。気分をほんのり上向きにさせてくれる出来事。なるほどセンセーショナルな感動や悦楽をともなうものでないなら、確かに『大きな』幸せではないのかもしれない。

 けれど、それらのちょっとした幸せを感じるために用意された『現実』という舞台は、実に繊細かつ緻密に組み上げられてきたものではないか。その瞬間に至るまでの自分の行動――生き方が、その瞬間を共にした誰かの生き方が、その瞬間に至るまでに自分や他の誰かが影響を受けた、さらに他の誰かの……が、少しばかりズレていたら、幸せを感じた『その瞬間』は、またちょっと別の形をとっていたのでは、ないか。

 辛いことも、全然ないではないはずだ。それでも過去の上に現在を積み重ねて未来に手を伸ばせること、日々の幸せを幸せだと感じられること、そういった心構えができている人にちゃんともたらされる幸せ――は、大きいと呼べるものではなくとも、思っているほど『小さい』わけでも、ないんじゃないかな、なんて。

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