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心が気を失うほどの愛

「ちょっと、気が狂いそう」と思うほどに凄まじい愛を、感じたことはあるだろうか。

わたしは、ある。めちゃくちゃにある。
その愛の矛先が向かうのは、今年デビュー20周年を迎えた歌姫・aikoだ。

中学生の時分、なんとなくアルバムを聴いたことをきっかけに、どハマりしてから早7年。
あの時からずっと、いやあの時の何倍も何百倍もわたしは彼女のことが、歌が、うなじが、たたずまいが、変態さ加減が、笑い方が、言葉の選び方が、横顔の美しさが、とにかく何もかもが、好きで好きでたまらない。

やり場に困ったそのとめどない愛たちは、涙として溢れるよりほかになくなるのだけど。


昨日、彼女のコンサートツアーの京都公演に参戦した。

今ツアーはじめての参戦である。
昨年の7月を最後に、一度もaikoに逢っていない。それは結構由々しき事態で、ちょっともう早く逢いたい無理なんですけどという気持ちではちきれそうだった。

相当量の期待を胸に。入場して席にたどり着くと、想像以上に、めっちゃ近い。
わたしと甲乙つけがたいほどaiko愛がすごい相方と共に、狂喜の舞をしずかに踊った。余裕で肉眼aikoができる距離であったので、無理もないことである。

やばいね。見えちゃうね。やばいね。と、IQ3くらいの会話を幾度も飽きずに繰り返しつつ、わくわくわくと開演を待った。


結論。
本当に、ほんっとうに、すんばらしいライブであった。

わたしはこれで参戦18回目となるのだけど、毎回毎回ほんとうに、過去最高かと思うレベルで弾け飛ぶから、すごい。

開演時刻を15分ほど過ぎたころ。
突然SEが止み、さあっと会場が暗くなる。
一斉にあがる歓声。そうせずにはいられないといった様子で皆立ち上がり、懸命に手を叩く。

BGMとともに、デビューシングルから最近の作品へと順に移り変わる感動的なオープニング映像が流れはじめる。
これは、完全に泣かせにかかってきている。当然のごとく、すでにわたしは滝のように涙を流していた。(※aikoはまだ出てきていない)

映像が終わり、会場のボルテージがピークに達した頃、満を持して歌姫が登場した。

死ぬほど、泣いた。

いつものことではあるけれど、開演した途端に頭がばかになる。
好き、すき、あいこ、すき。
aiko、おる。
二語文以上を組み立てる能力を途端に失う。

胸が苦しい。
こんなに、苦しい。
好きすぎて、苦しい。
愛している。aiko、あいこ。

ふわふわの赤いワンピースを着、その裾を可憐になびかせながら歌う彼女は、歌姫以外の何者でもなかった。
CDやテレビ越しに聴くよりも遥かに力強く、そしてかすかに甘い声。何度だって、わかっていたって、一瞬にして酔いしれてしまう。

aiko、来たよ。今年も会えたよ。
心の中で泣き叫ぶ。


「aikoがいる」という事実でしばらく泣き通したのち(平均3〜4曲)、ようやく曲自体を楽しめるようになってくる。

大好きな曲、新しい曲、すり切れるほど聴いた曲。イントロが流れるたび小さく歓声を上げ、時に相方と手を握り合いながら、目と耳をしっかと見開いて聞き惚れる。

大切な今も、愛おしい過去も、過去になりきれないくすぶる想いも、aikoはすべて肯定したうえで見事に歌い上げてくれる。

後悔も不安も無気力も、全部あっていいんだよと優しく彼女は語りかける。それだけではなく、この世には楽しいことなんて死ぬほどあるのだと、自分だけの道を自分はちゃんと知っているのだとも教えてくれる。

さらに、君にいいことがあるように、シアワセな気持ちでありますようにと強く祈ってくれさえするのだ。いったい誰が、彼女を嫌いになれようか。(反語)


ライブの終盤、アップテンポの曲を歌っていた時のこと。
バンドメンバーと目が合った瞬間、aikoが軽く笑い声を立てながら歌ったフレーズがあった。
すごく楽しそうに。歌えることが嬉しくてたまらない、といったふうに。

途端、もう、すごく泣けてきた。

aiko、楽しそう。
嬉しい、好き。

またしても二語文以上を組み立てることが不可能になり、その代わりにとめどなく涙が溢れ出る。
というか、今回のライブはとくに、初めから最後まで大抵目が濡れていた。

aikoがいるのが嬉しくて。aikoが楽しそうで嬉しくて。aikoがあまりにかわいくて。
勿論、歌に涙したことも多々あったが、それ以上にaikoの存在自体、そして会場の雰囲気が最高でたまらなかったのだ。


aiko対会場の全員、では断じてない。
たとえ客席にいるのが数千人であろうと数万人であろうと、彼女は変わらぬ熱量を持って一人ひとりに対し全力でぶつかってくるのだ。

ファンもそれに負けてはいない。
「食らいつく」どころではない、「かぶりつく」とでも言おうか。全力でぶつかるaikoにぐいぐいかぶりつき、これでもかと愛をぶん投げる。
それを受けたaikoは、当然のごとくレベルアップした熱量で応え、愛をぶつけてくる。

その空間には、キャパオーバーなんて存在しないのだ。ぶつければぶつけるほど、それが二倍にも三倍にもなって返ってくる。

どんどんヒートアップしてゆく会場。極上の歌声と歓声が混ざり合い、とてつもない熱気と汗がそこらじゅうに立ち込める。
異様な興奮と歓喜に包まれるうち、いつしか全員がその空気に呑まれ、酔いしれずにはいられないのだ。


声を張り上げ続けた喉が痛い。ずっと頭上で手を叩いているから腕もだるいし、休む間も無くジャンプしている足も限界を迎えかけている。はずなのに、不思議なほどに1ミリたりともそれらの苦痛を感じないのだ。

あの空間には、きっと魔法が存在しているに違いない。ファンは苦悶の表情を浮かべるどころか、aikoが「もーみんなほんまに可愛い!ムラムラするわ〜」と悶えるほど、見渡す限りに笑顔、笑顔、笑顔ばかり。

もう、嬉しくてたまらなくなってくる。
ここにいる人たちみんな、aikoのことが好きで好きでたまらなくて、それがaikoにきちんと伝わっていて、aikoも全力で応えてくれている。こんなに幸せな空間が、いったいほかにあるだろうか。(反語)

死ぬほど愛している人と、完全両想いであるというこの至福。あまりの事実にくらくらしてしまう。


アンコールの熱気冷めやらぬまま、止まないaikoコールに応えてダブルアンコールに突入した。

驚かれるかもしれないが、aikoのライブにおいてはしばしば起こる現象である。
ツアー最終日やデビュー記念日でなくとも、基本的にファンは絶対諦めない。動くもんかと腰を下ろし、全力で声を張り上げ手を叩くのだ。

そこで決して期待を裏切らないのがaiko、その人である。

「もうちょっと歌っても、いいですかぁーーー!!!」などと言いながら飛び出してくるから、その日何度目かわからぬほどのレベルで会場が沸く。
いぇーい! なんてものじゃない、ヒィェーーーイ!!! くらいの狂いっぷりでファンが叫び、胴上げしかねない勢いで彼女を迎える。これは夢か現か、と思うほどに最高の瞬間なのだ、これがまた。

ダブルアンコール1曲目が終わり、2曲目に入る前のこと。

「ええか、ちゃんと盛り上がってや。これであかんかったら次(3曲目)ないからな! お前ら、わかってんねやろな!!!」

そんな最高な挑発ありますか? といった内容のことをaikoが叫び、その口調がSっ気満載で、そんな可愛いのにそんな言い方するん? となり、わたしはぞくぞくするほど興奮した。変態か。


そんなこんなで無事3曲目まで歌ってくれ、なにもかも冷めやらぬままライブが終わった。

終演直後はいつも、相方と喋りまくるか、言葉すら失ってぼうっとするかのどちらかなのだけど、今回は完全に後者であった。

というか、めっちゃ泣いていた(またか)。

エンドロールを眺めていると、この3時間に起こったできごとの一つひとつが鮮明によみがえり、心がびしょびしょの洪水になっていたのだった。
たましいというものが、本当にあるのかもしれないと本気で考えた。それほどに、体を貫通して内側を揺さぶってくるようなライブだったから。


音楽は耳だけで聴くものじゃないのだと、改めてものすごく思った。
ライブってまさしく「ライブ」なんだなあと、これまた当たり前の事実を痛いほどに肌で感じた。
今、この瞬間でしかありえない空間が確かにあって、この瞬間でしか聴けない歌があるのだと。

こんなに価値のある時間、なんて贅沢で素晴らしいんだろうと、18回目にして改めて強く思ったのだった。

そう思わせてくれたのは、勿論他でもないaikoであって。だから余計に、やっぱりすごい。彼女と同じ時代に同じ時間を生きられることに、感謝したくなっちゃうくらいだ。
母とか神とか、ありがとう。


aikoが歌っている限り、この世は生きるに値する。

すべての動作が「生」という大前提の上で成り立っているわたしたち。普段はなかなか意識できないことであるけども、昨日のわたしは強烈な「生」を感じていた。

心が、鼓膜が、全身が、絶えずびりびり震えている。
昨日までのわたしは、一体どうやって生きていたんだろう。忘れてしまいそうなくらい。
久しく出会っていなかった感情で、体じゅうがいっぱいになる。この瞬間のために生きてゆけるとさえ、わたしは思った。

また逢いたい、すぐに逢いたい。
どうかどうかその日まで必ず、元気でいてね。わたしもそれまでがんばるね。

ステージに向かって、力いっぱい手を振った。


愛の深さは勝手
まだ大したことはないんじゃない

aikoは、なんでもないことのようにそう歌う。
そんな彼女のファンたちが、底知れぬ愛を抱いてしまうのは無理もないことだろう。

愛の深さはいつも勝手だ。
それは勿論、時に苦しいことでもあるけれど、だからこそ得られる想いの方がきっと多い。

こんなに人を好きになれるのだという歓び。
その人の声や歌や生き方が、自分の人生の指針となる心強さ。そんな想いに救われてきた経験の数はきっと、計り知れない。

これからもずっと、一生彼女についていくのだと心に決めた。
というか、とっくに決めていた。

20周年、本当におめでとう。
そして、心の底からありがとう。


追記 : 現在、全身すさまじい筋肉痛に見舞われています。aikoからのお土産だと思うと、しかしそれすらも愛おしい……。


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