見出し画像

エグチさんのオトナ買い

成田空港へ向かうリムジンバスの中。「この旅はわたしの人生の分岐点になる」そんな言葉が浮かんで、涙がこぼれた。まだ始まったばかりなのにびっくりした。 どうってことのないことばかり。でもとても大切な旅の記録。2016年1月のこと。

エグチさんのオトナ買い

エグチさんはお金の使い方がカッコイイ。

美味しいと評判のスモークサーモンの製造販売をしているところに連れていってもらった。

画像3


お店、というにはあまりに素っ気ない倉庫の一部のような建物を入ると、大きな冷蔵ケースがドーンと一角を占めていて、その中にはいろいろな種類の冷凍スモークサーモンやジャーキーなんかが並んでいる。

画像1

画像4


画像2


おじさんは試食を口にしてすぐに、臨戦態勢。
ショッピングカートならぬ、パレットを抱えて、冷蔵ケースの中のサーモンを片っ端から放り込んでいく。
「あれ?これって美味しかったヤツだっけ?」
「美味しかったヤツ、どれ??」
時々、おじいちゃんみたいなことを口にするのもかわいらしい。
さんざん悩んだり、試食を食べたりして、1袋がだいたい20~30ドルくらいするそれを、300ドル近くお買い上げ。
・・・冷凍サーモンをお土産用に、約3万円分買うって、どうよ(笑)

Facebookも使いこなしているので、お支払い後、店内のケースにあるいかにも「鮭」ないでたちのシロモノを手に「取ったどー」のポーズをたっくんに写真を撮らせて投稿。
エグチさんの防寒仕様の服装が漁師にも似ているので、いづみちゃんとゲラゲラ笑った。

エグチさのかわいらしいところはこの後も続く。

Facebookにアップした写真に、早速お友達からのコメントが続々寄せられたようだ。
その中に「お金を払うから100ドル分くらい買っておいてくれ」と西海岸に住む日本人のお友達からのコメントがあったらしい。
それを見てエグチさんは、「明日もサーモンを買いに行くぞ」とたっくんに指令を出す。
律儀というか、マジメというか・・・。
翌日も結局、爆買い。
わたしの記憶が曖昧なのだが、2日目は恐らく500ドル近く買っていた気がする。2日合わせて500ドルかもしれないけど。
いずれにせよ、そもそも人口の少ないフェアバンクス。
冬の観光客も数えるほどだろう。
まして冷凍サーモンをお土産に買う観光客、しかも大量。しかも2日連続の来店。
キャッシャーをしてくれたお店の女の子も、さすがに苦笑い気味。
アラスカには恐らく、当時はまだ、アジア人観光客の「爆買い」は派生していないだろうから、いづみちゃん命名の「爆買いジャパニーズ・第1号」は間違いない。
店内に貢献者として写真を掲出してもらったらどうかと、勝手に車内で盛り上がった。
そしてこのサーモンたちは結果、TUMIかRIMOWAかのトランクまるまる一つを占拠して、サーモン専用ケースとして、西海岸へ運ばれていったのだった。

エグチさんはご機嫌な声で
「小金持ちのオトナ買いとはこうなんじゃーい」
「買い物ってのは、こういうふうにするんじゃーい」
と張り上げた。男気を見せてくれた。
そして、もう何の恥じらいや遠慮もなく、
「こがねもちは~小金持ち~」と低めのいい声で、鼻歌ではなくしっかりと熱唱した。

ちょっとおいしいおやつが食べたい。楽しい一杯が飲みたい。心が動く景色を見たい。誰かのお話を聞きたい。いつかあなたのお話も聞かせてください。