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正しい方法だけを教わっても学習にはならない。

高校生に小論文を教えています。小論文には、色々な型があるけれど、提示された文章や資料を自分なりに分析して、要約したり意見を述べたりするのが主な内容です。受験科目に小論文がある場合はもちろんですけれども、今の入試は記述問題が中心になっているので、要約をしたり自分の意見を述べたりする練習を、なるべく長い期間、積んでおいた方がいいですね。社会に出てからもずっと使うスキルです。

英語や数学などの、絶対に正解がある問題と違い、小論文はある意味、なぜそれで合格答案だったのかうまく説明しにくい科目であるとも言えます。もちろん指導してる私達はそれが言語化できますけれどね。
このあたり、ちょっと修行に似ているかもしれません。

入試が近くなって、いよいよ過去問題に取り組んだ時に、いかに小論文を甘く見ていたか驚く受験生も多いです。日本語で書かれた問題なので、何とかなると思ったんでしょうか。「何これ……解けないんだけど……」となるわけです。
私からすれば、数学や英語は前日の踏ん張りで、1点もしくは2点追加できる科目だと思います。が、小論文は絶対にそんなことはない科目だと思っています。少なくとも1、2年ぐらい前から準備を始めないと、ちょっと間に合いません。

1万時間の法則ではありませんが、資料の文章や統計資料などを読みこんで要約をしたり問題点の解決策を述べたりできるようにするのは、とにかく失敗をたくさん経験しないといけないからです。
付け焼き刃的に、受験直前になって「1週間で完成する」だの「30日で合格する」だのという小論文のテキストを読んでも、なかなか難しいんじゃないかと思います。
確かにそこには模範解答が書いてあり、合格答案にはどのような要素があるべきかなども分析されていますが、その要素をピックアップするすればいいんだとすぐに分かるセンスが、一朝一夕には身につかないものだからです。

最近は、日本の人口減少の問題、それから少子高齢化問題について、意見を書かせる課題が多いですが、公立中高一貫校や私立中学校の入試でも時事問題としてよく取り上げられる課題です。同じ課題なのに、作文と小論文は何が違うのでしょう。大学入試の小論文だと、もう少し踏み込んだ内容の要約と分析が必要になってきます。そういう時に、一度小学生レベルの作文を書いて「こんなんじゃ全然だめだよ」と言われる経験が必要。
作文と小論文は何が違うのか、どんな言葉を使ったら作文ぽく小学生チックで、どんな言葉を使うと高校生らしくて客観的なのか、また、幼稚な論理展開について、何回も何回も失敗する必要があります。

聞かれたことに答えていない、もしくは、とんちんかんな方向にどんどん論点がずれていく。このような間違いは誰にでもあります。それを、入試の1、2年前から経験し、そうならない練習を積み上げていくことが大事。
前日にコツだけ掴んだって合格しないんです。

さきほど修行に似ていると書きましたが、例えば、美味しいうどんを作る入試問題があったとして(笑)、1、2年間練習してきた子と、直前にコツだけ参考書で読んだ子。その差は火を見るより明らかですよね。小論文というのは、そんな感じです。

本番に失敗しないように、その前に何回も何回も失敗する必要があるんです。ただ、受験の小論文は、なぜそれが失敗なのか、説明してくれる大人がいないと、ちょっと厳しいかも。

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