パッとひらめいた文章はたいがい思考停止文章。一回捨てて思考を始めよう。
頭の回転が速い人ほど、無難な、及第点レベルの文がひらめく。この現象は小学校中学年くらいから現れる。とくにまとめの段階で発生する。無難な、及第点レベルの文っていうのは、次のような文章。
楽しかったですまた行きたいです
このように良いところと悪いところもあるのでバランスを取りたいです
これからは気を付けたいです
他にも色々なパターンがあるんだけれどこの三つのパターンについてなぜ書き直さなくてはいけないのか、解説しますね。
1楽しかったですまた行きたいです
このパターンは、体験作文、例えば、子どもだと遠足や運動会の作文などに現れます。大人では、Twitter や Facebook の投稿などでよく見受けられますね。こう書いてあれば、学校ではほぼほぼ✕は付けられないので、これでいいんだと思うのかもしれません。学校の責任です。思考を深めるよう促してほしいです。
確かに、楽しかったし、また行きたいのでしょう。それは合っているでしょう。でも、誰でも楽しかったらまた行きたいですよね(笑) そこで思考が停止しているんです。この文章で良いと思った瞬間に、そこから先の思考が停止するんです。これは非常に危険です。「楽しかった」というのはいわば総称であり、人によって、例えば理由が違います。むしろその理由の方をきちんと書くといい。だからこんな文を書いてしまったら、一回ボツにして「楽しい」と「また行きたい」についてもう一度考察する必要があります。
改善例
2このように良いところと悪いところもあるのでバランスを取りたいです
世の中の全ての出来事には、必ず良いところと悪いところがあります。そんな当たり前のことを書いてはいけません。子どもの場合は、その事実に気がつかないこともあるので、教師や親が教えてあげましょう。
今までの日本は、とにかくバランスと書けば及第点のようなところがありました。でもこれからの日本では、必ずどちらかの立場に立って意見を述べられるような人間にならないと、大変です。もちろん、過ぎたるは及ばざるが如しで、そういう意味でのバランスは大事です。でもどちらの立場にも立たない中途半端な覚悟での意見は、人に響きません。
賛成派と反対派に別れた時に、まずは必ずどちらかの立場に立って、自分の立っている立場に足りないものを補っていく。行き過ぎたものを削っていく。そういう意味でのバランスのとり方が、これからの社会を生き抜いていくのに大事なんだと思います。だから小学生の時代からこんな曖昧なことを書いて、そこで思考ストップしてちゃいけないんです。
大人よりも子どもに大切な覚悟です。
※これは一例であって、もちろん反対意見も存在する。そりゃそうだよね。だから、まずはどちらかの立場にしっかり両足で立ち、そこからバランスを取っていく。賛成反対両方に、片足ずつ立っちゃだめ。
3これからは気を付けたいです
気を付けたいと書いているけど、このような文を書く人は、その後も全然変わらない。子供も大人も。だいたい今の日本は、危ないことや、騙されることや、病気や怪我を負うリスクが多く、気をつけてなくちゃいけないことが山のようにある。なのでいちいち何かに対して「気を付けたい」という希望だけでは、本当に気をつけられないんだよね。
例えば遅刻をしてしまって「これから気をつけます」という人は、大体気をつけられない。そもそも「気をつける」ぐらいじゃ、習慣は変わらないから。
例えば、どういう工夫をしていくのか「気を付けます」の先で考えなくちゃいけない。
そしてその考えた結果を「気をつけます」の代わりに入れないと。相手にしてみたら「いやー、気をつけますって言われても、気をつけられないからできてないんでしょ?」っていうようなことになっちゃう。
私の生徒でも、毎回宿題の提出が遅れる子がいる。中には、私が「今日、授業なんだけど?」と催促をして、慌てて送ってくる子もいる。大抵は送り忘れたんじゃなくて、やり忘れてるんだけどね。そういう子に限って「これから気をつけます」って書いてある。でも治らない。だから私は「どう気をつけるの?」と聞く。
もちろん、こういう提出物の締め切りを間に合わせる方法を、大人は知っている。でもそれをまるごと教えちゃダメなんですね。自分で考えなくちゃ。だから「これから気をつけます」と書かず「どういう工夫をしていることを『気をつける』と表現するのか、考えて書くことが大事なんですね。
頭の回転が速い子ほど、こういう言葉をパパッと思いついて、書いて、そこで終わりにしちゃう。「はい!書けた!」ってしちゃう。子供も大人もそうです。だからむしろ、こういう言葉が出てきた時に「やばい……。私、思考停止してるかも……」って自覚した方がいいです。そしてその文を消しちゃいましょう。消して、本当は何なのか、思考しましょう。
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