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適応障害休職中に私を変えた魔法の言葉「通行人D」

「適応障害」と診断され、約半年小学校教員を休職した私。
現在は症状が回復。退職後、ライターとして活動を始めています。

休職してしばらくの間は、医師の診察とカウンセリング以外、家でボーッと過ごしていました。「何もしたくないなら、何もしないで過ごした方がいい。心が休みたがっているから」と医師に言われたからです。

1ヶ月程経って、心が落ち着き始めると、ネットで「適応障害」について検索していました。そこで「リワーク」という言葉に目が留まりました。「リワーク」とは、精神疾患を原因として休職している人が職場復帰するためのプログラムのことです。医療機関や福祉施設で実施されています。

私は、リワークプログラムを実施している民間の施設を見学することにしました。そこで行われていたのは、ストレスコントロールに関わる認知(思考のクセ)を適切にしていくためのグループワーク。アルバート・エリスの「A B C D E理論」に基づいた方法で、ストレスと感じたときのことを、状況(A)、考え方(B)、結果(C)、反論(D)、効果(E)に分けて分析してみるというものでした。

私は、「人から言われたマイナスの言葉が心に残って、次の行動に踏み出せなくなってしまうこと」をグループの人に相談しました。

すると、メンバーの1人が「僕は、人は人と切り離して生きています。100%の理解は不可能と考えて、割り切っています。」と話してくれました。

「通行人Dと思えばいいと思う。」と、彼は続けました。

「自分は主役じゃなくて、『通行人D』くらいだと思えば、気がラクになる」という意味です。

私は、その言葉を聞いて、心がすっと軽くなるのを感じました。

リワークプログラムをきっかけに心がだんだんと回復しました。誰かに見られているのではとドキドキしていた駅の雑踏も、不思議と怖くなくなったのです。


ふと振り返ってみると、今までの私は、理想の姿を子どもたちに押しつけ過ぎていたのかもしれません。学習指導要領を分析し、どうしたら子どもたちに資質・能力が身に付くのかばかりを考えてきました。他の先生が「この子たちには難しいよ」ということも、身に付けなければならないことなのだからと、策を練り、必死に授業を考えてきました。一生懸命やればやるほど、子どもたちの本当の姿と離れていたのです。

人は他人なのだから、簡単に変えることなどできません。大人ができることは、子どもたちに正しい1本のレールを用意することではなく、子どもたちが選べるたくさんの道を示すことだと考えられるようになりました。

「通行人D」と言う言葉は、私の生き方を変えてくれた魔法の言葉なのです。


昨年度、精神疾患で休職した公立の教員数は、5478人と過去最多。文科省によると、原因として、学習指導要領の改定による業務量の増加、保護者による過剰な要求や職場内でのハラスメント行為などが挙げられています。さらに、新型コロナウイルスによる不安とストレスで心理的な負担が大きくなっていると言われています。

1人の教員で1つの学級を受け持つのはもう限界なのです。教員の負担を減らし、心理的な余裕を生むことが、子どもにとっても大人にとっても良い選択だと考えます。

今、辛いと感じている教員の方にとって、私の経験が少しでも役に立てたらと思います。「通行人D」のように誰かの心を軽くするそんな存在でありたいのです。


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