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薄毛に悩む85歳の母に、抗がん剤経験者のわたしがウィッグ指南した話

自分の経験で得た知識が、誰かの役に立つことに喜びを感じる。

そんな、おせっかいおばちゃん気質のわたしは、85歳になる母にも何かとおせっかいを焼く。

母はわたしと違ってあまり自分から行動するタイプではない。あるものでなんとかする、というマインドなのでついつい手を出したくなる。

過去には、もともと難聴があった母が一人暮らしするにあたり必要だと判断し「まだ聞こえる」と主張する母を説得して補聴器を買いに連れて行ったり、不愛想な歯科医が入れ歯を調整してくれないとなれば自分が信用している歯医者に連行したりと「困ったときの便利屋さん」的な動きをしているなぁと思う。

今回のテーマは「母の薄毛」対策。

母はもともと猫毛で髪が細かったのだが、80を過ぎてからさらに髪が薄くなり、ある日毛染めにアレルギー反応が出てしまった。母は考えるより先に行動するタイプなのでかゆいかゆいと思い切り頭皮を掻いたところ、その部分がまるっと禿げてしまった。

皮膚科に行ってもステロイド薬が出るだけで、いくつかよさそうな皮膚科を探して行ってみてもらったが、状況は変わらず。かゆみの原因はわからずとも、薄毛は加齢も原因だろうと思うので、うまく付き合っていくしかないだろうと思われた。

さらに、頭皮がかゆいので、毛染めはもちろんストップ。家で使っていたカラーリンスもストップ。美容室に行っても怖いので触れないというので寂しい毛量で禿げ部分があり、伸ばしっぱなしの白髪頭という落ち武者のような風貌になってしまった。

わたしが言うのもなんだが、母はわたしが小さいころから誰に会っても「美人」「女優みたい」と言われてきた。85歳になった今でも「おきれいですね」と言われる。だけどやはり人間、髪型が寂しいと急に老け込んで見える。

それを見てわたしもなんとなく寂しい気持ちになったし、母は「もう年だからどうでもいいや」と言ってはいたが、会うたびに「歳を取るって嫌だねぇ」と口癖になっていった。日に日に見た目が老いて、できることも少なくなっていく自分に嫌気がさしているのかなと心配になった。

母は戦争経験者。空襲の焼野原から生還し、兄弟がバタバタ早死にするなかで病気もせずにひとり長生きしている。けれど与えられた命があるのに、しょんぼりしている姿を見ているのがなんだか切なくて、ついついなんとか母の気分があがる機会を提供したくなってしまう。

わたし自身も抗がん剤治療でまるっと禿げたことがあるのでなんとなく気持ちがわかるのだが、髪がないって、ものすごく貧相になるし、テンションが下がる。

抗がん剤治療が終わり、生えて来た髪が5分刈りくらいの長さだった時、鏡でノーメイク状態の自分の顔を見て衝撃を受けたのを今でも覚えている。

亡くなる間際の老いた父にそっくりだったのだ。こけた頬、形の悪い頭、ずっと毛染めしていたので白髪の総量もわからなかったが、かなり白髪の多い5分刈りの自分。見た瞬間にゾワっと鳥肌が立ち、たまらなく嫌になって、ダッシュでドラッグストアに白髪染めを買いに行き、その日に染めた。白髪がなくなった自分を見て、テンションがふわっと上がった。見た目ってやっぱり気分に影響する。

もともと出かけるときは必ず化粧をするような母なので、見た目の劣化はなおさらテンションが下がる案件ではないかと想像した。

母は自分から行動するタイプではないし、どこかに連れ出してあげたいのだけれど、わたしはわたしで自分の生活がバタバタしすぎて近くに住んでいるものの母ともあまり頻繁に会えない。会うと思い切り世話役をやってしまうので、自分のエネルギー状態もよくないと疲れてしまうというのもある。

そんな状況で何かできることはないかと最初に考えたのは「帽子」。いまや抗がん剤治療もポピュラーだし、高齢化で同じように薄毛に悩む人も多いだろうとネットであれこれ帽子を探したところ、柔らかそうな帽子を見つけたのでそれを買ってあげた。

こんなやつ

買った帽子はこちらに紹介

すると母はたいそう喜んで、毎日帽子をかぶっていると連絡があった。介護施設に行っても、知り合いに会っても「素敵ね!どこで買ったの?」と聞かれると嬉しそうに言うので良かったなぁと思った。

今まで帽子のおしゃれなんてしなかったので、この際、薄毛を逆手にとって帽子でおしゃれをしてみたら?と提案し、しまむらやリユースショップなど安いところでベレー帽などシニア女性が上手にかぶるとおしゃれに見えそうな帽子をいくつか見繕った。

それでも母は喜んでいたのだが、わたしから見ると、やはりどうしても「おばあさん」感が出てしまう。コーディネイトを間違えると、なんとなくチンチクリンにも見えてしまう。

なんかもうちょっと、昔の「美人な母」を復活させる術はないかと考えた。母よりも、わたし自身が、昔の母のようにいてほしいと思ったのかもしれない。

そこでふと思い出したのが、抗がん剤のときに愛用していたウィッグ。自分が想像していたよりずっと手ごろで使い勝手もよく「いかにもヅラ」感がなかったので、母にも薦めてみようと思った。

母は基本、何事にもお金をかけたくない性質なので、アデランスなど大手メーカーが出している高級なウィッグだったら絶対に「いらない」というだろう。買ってあげるといっても「もうすぐ死ぬからいらない」と固辞するのは目に見えていたので、わたしが抗がん剤時代に使っていた安価でおしゃれなウィッグショップに、母によさそうなウィッグがないかとネットで調べてみた。

するとやはり高齢者のニーズが多いのか、わたしが利用していた6年前にはなかったような、グレイヘアーのウィッグが登場していた。うちの母に似合いそうなデザインのショートヘアもあり、どれも8000円程度で買える。

こちらの記事でも紹介している「プリシラ」さんは、ドラマ撮影やパリコレなどにも提供している、オシャレウィッグの専門店。今回調べてみると、グレイヘアのラインナップも増えていて、安価で気軽にオシャレなデザインの髪型が楽しめるだろうと思い、母を連れて行ってみようと思った。

プリシラ通販サイト

ひとまず母にウィッグの画像を見せてみた。すると「これくらいの値段で買えるなら、ちょっとやってみたい」というので、試着に連れていくことに。

ウィッグはネットでも購入できるのだが、ウィッグこそ「試着必須」のアイテムだ。

自分がウィッグを選ぶ時も、モデルさんと実際にかぶった自分の姿とイメージが全く違って驚いた。顔の大きさ、頭の大きさ、首の長さ、顔型などで、同じウイッグでも別物になってしまう。髪色も実際につけてみないとわからない。似合わないウィッグは不自然で、かつ一番避けたい「いかにもヅラ」になってしまいやすいのだ。

ただ問題は、このお店が原宿にあるということ。群馬の田舎で生活していて、現在も神奈川の住宅地に住み、徒歩圏内で生活している母。年齢もあって人ごみは疲れてしまう。電車で行けなくもなかったのだが、原宿周辺をうろうろ歩くのは疲れてしまうし、それだけで行きたがらないと思ったので、運転に自信がないわたしが一念発起して車で行くことに。

かなりヒヤヒヤしながら東名、首都高を抜けてなんとか原宿へ。だがあと少しで到着というときに道を間違え、めでたく人生初、パトカーに追いかけられて違反きっぷまで切られる経験もしてしまった。ゴールド免許はく奪。

しょげるわたしをお金で解決できるだけマシ、と励ます母。母は割とむちゃくちゃやるほうで、50代で原チャリに乗っていたころ、ヒール履いてノーヘル、さらにサドルの前に小さいわたしを乗せて一方通行の道を速度違反で爆走し「あんた違反5個してるよ」と捕まった経験を持つ。マジでよく生きてるな。

そんな、ときに荒ぶる豪快な母になぐさめられながらお店に入る。

以前訪れたときの店舗から移転し、ラフォーレ原宿の中に入っているそのお店は、以前よりスペースが縮小されてはいたが、こじんまりして見やすい雰囲気。

早速店内に足を踏み入れる。シニアっぽい女性がウィッグを手に取って購入していた。落ち着いた感じの女性が接客してくれ、事情を話すと、おすすめのウィッグの相談に乗ってくれた。

わたしがひそかにいいなと思っていたのは「帽子ウィッグRELAX」。

オールウィッグ(要はヅラ)は伸縮性のある素材のものをかぶり、フィットさせるため、自分の経験上ちょっと締め付け感が鬱陶しいなぁと思っていた。薄いネットに手植えで作られた医療用であればラクなのだけど、それだと3万円程度になってしまう。おしゃれウィッグは安いけれど少し使用感が落ちる。

年を取ればとるほどラクチンにこだわりたいので、オールウィッグを買ったとしても、締め付け感で徐々に使わなくなってしまうかなぁと思っていた。

さらに、オールウィッグは上手にかぶるのにちょっとコツがいる。真ん中とかもみあげの位置、おでこの位置をキレイに合わせないと「カツラが曲がっている人」になってしまう。いちいち付け方も学ばないといけないとなると、母が面倒で使わなくなるという懸念もあった。

わたしは抗がん剤で禿げていた時にウィッグ研究に燃えていたので、さまざまなウィッグを試したのだが、当時国立がん研究センターが独自開発していた「ウィッグなぼうし」という商品があり、それは締め付け感が少なく、肌当たりも良く、かぶるのにもコツがいらなくて使い心地が良いものだった。

ただし残念なことに、髪型は1種類、髪色は黒かめっちゃ濃い茶色。使い心地は良いのに遊び心に欠けるのが残念で、近所に行くとき以外使わなかった。

その商品からインスパイアされたのか、プリシラさんが新たにこの「ウィッグなぼうし」を踏襲した商品を出しているのを発見。

たぶん写真じゃわからないと思うけど、つけたらわかるこの大きな違い。

プリシラ公式サイトより

これなら母も快適につけられるのではないかと思ったので、早速その商品を試着してみることに。

すると、思った以上にバッチリはまり、「ちょっと貧相なおばあさん」が、一瞬で「オシャレなシルバーヘアのシニア」に変身した。

グレイヘアにも2色展開があり、白髪が少ないバージョンと、ほぼ白のバージョンとあった。母がはじめ白髪が少ないほうを試着したのだが、こちらはリアルすぎて本当に毛染めを怠っている老人のように見えてしまった。

試着は展示品しかできないので白髪が多い方は試着できなかったのだが、顔の横に当ててみるといい感じ。いっそのこと白髪が多いほうがいいということで、シルバーヘアの帽子ウィッグをお買い上げ。

母が購入したウィッグ

プリシラ公式サイトより。色はTGH


その後にランチに行くつもりだったので、その場でウィッグをつけていくことにした。

ウィッグを装着完了して店を出てよく見ると、シルバーヘアなのだけど、前髪部分は白髪が多めで、わざとメッシュを入れている風、後頭部や襟足付近は黒が多めで、自然かつオシャレ。プリシラさんて、こういうところが分かってるんだよねぇ。

母は小柄なのでもともとショートヘアが似合うタイプだが、高齢になるとあまりロングヘアが似合わないのと、人工毛のウィッグがロングだと絡みやすく長持ちしにくいなどもあり、カールのついたショートヘアならセットいらずでかぶるだけ。手入れも楽で母にはベスト。

母は猫毛でいつもスタイリングが決まらなかったので、なんなら今まででベストな髪型じゃない?という感じ。

ちなみに、どうせウィッグならライトブラウンの髪でもいいんじゃない?と試着させてはみたけれど、いかんせん顔が老人なので、ツヤツヤすぎる人工毛は超違和感。「カツラでございます」感がすごかったので即却下。

グレイヘアは白黒ミックスされて人工毛特有のテカテカ感が抑えられていることと、そもそもリアルな白髪もギラつきがあるので、そこが逆にリアル?なのか、本当にウィッグと分からないほど母によく馴染んだ。

わたしの目で10分もすると、母は以前からこんな髪型だったんじゃないかという錯覚に陥るほど自然。下手すりゃ当時のわたしより自然なんじゃないかな。

ランチを終えて竹下通りをちょっと覗くと韓国コスメのお店が。そこで油を売っていると、おしゃべりな韓国人スタッフのおばちゃんが「ママ超キレイね!!!女優さんみたい!」とべた褒め。もちろんリップサービスもあると思うのだけど、母は若い頃ガチで女優並みだったので、あながち嘘とも思えない。

顔が変わるわけじゃないけど、印象が大きく違う。これがウィッグじゃなく帽子だったら少し反応が違ったんじゃないかなぁなんて思いながらおべっかを聞いていた。

母もまんざらではなさそう。
やっぱりさぁ、きれいになった自分を見るのは気分がいいものよ。

帰宅してあまりに似合うので記念撮影。

これでお値段税込み8000円ちょっと。プリシラさんアッパレ!

店舗が東京・大阪にしかないのがちょっと不便ではあるけれど、やはり多少足を延ばしても、実際に試着するのがおすすめかなぁと思う。

高齢の方ひとりで大都会とか、ハードルは高いと思うんだけどね。高齢になるとどうしても髪は薄くなるし、同じようなことで悩んでいるシニアも多いと思う。

介護サービスの場所などにプリシラをはじめ、いろんなウィッグを試せて、スマホやネットが使えないシニアの代わりに購入代行してくれる場所とかがあればいいのになぁ。プリシラさん、ぜひ営業お願いします!
※関西方面はイオンなどで取り扱いもあるそうなので、HPに情報載せてくれたら嬉しいなぁ。

初めてのウィッグを付けて、はにかみながら、まんざらでもなさそうな母を見て連れて行って良かったなと思ったし、美人だった頃の母が戻ってきてくれたような気がしてわたし自身もほっとした気分になった。

アラフィフにもなると、親の年齢も必然的に高齢になる。薄毛で悩んでるお母さまをお持ちの方はちょっと検討してみてはいかがかな。

プリシラさんの商品は型番や価格など定期的に変わるので、直接問い合わせてみていただければ。

数千円のウィッグでテンションあがって楽しくなるなら儲けもの。わたしも乳がんで抗がん剤治療しなければウィッグなんて想像もしなかった。だからこそ誰か必要な人に記事を通じて情報が届けばいいなぁと思う今日この頃だ。

今日もお読みくださりありがとうございました!

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