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【論文】日本における女性起業家のキャリア形成-女性起業家の4つのタイプとは-

東京商工リサーチが発表した「全国女性社長調査」結果によると、2023年の全国の女性社長は61万2224人(前年比4.8%増)で、初めて60万人を超えたといわれています。(2023/09/20)

海外と比べるとこの数値はまだまだ低い方ですが、自分自身が起業していることもあり、日本における女性起業家のキャリアはどうなっているのだろう?と気になったので、日本の女性起業家について取り上げている論文を調べてみることにしました。

【論文名】日本における女性起業家のキャリア形成/李侖姫さん

この論文は、女性起業家のキャリア形成過程における資源の獲得過程と起業活動に関する事例研究です。

起業家の概念

そもそも起業家の概念についてアルドリッチ(Aldrich,2005)はこう述べています。

「革新」「機会認知」「新しい組織の創造」の三つの側面がある。まず、「革新」という側面では「起業」を新しい商品や新しい市場を生み出す確信的活動や、プロセスとみなす(Schumpeter,1911)。「機会認知」については他者が見逃した潜在的な価値に気づく個人の能力に焦点が当てられる(Kizner,1997=2001)。「新しい組織の創造」では、起業家とは新しい組織体をつくる人である、と定義される。

『日本における女性起業家のキャリア形成』

この論文では、起業家の定義を「新しい組織を創造する人」としています。

起業家に与える3つの要因

自営業者(起業家)に関する先行研究によると、起業家に影響を与える要因は階層要因、ライフコース要因、ネットワーク要因の3つあるそうです。

階層要因は、いわゆる親が経営者であるような、本人が自営業者になりやすく、かつ財政的な支援やネットワークを継承する傾向がありました。

ライフコース要因は、子供が生まれたり、子供のライフステージにおける親のタイミングや、IT革命などの時代効果が起業活動に影響します(Aldrich,1999=2007)。

ネットワーク要因は、社会関係資本(ソーシャルキャピタル)として起業活動に影響を与える要因です(三輪,2011)。

デービスとシェーバーはライフコース要因に着目し、特に起業する前の就業、教育、家族における経験が起業意図及び、起業行動に影響を与えると論じています。

また、女性起業家は人種に関係なく、「人的資本」「社会関係資本」「経済資本」へのアクセスが困難であり、これらの資本をどのように獲得するのかが起業活動において重要であると指摘されたそうです。

女性起業家の職業キャリア形成においての4つのタイプ

女性起業家のキャリアは4つの要因の相互作用(資本、資本を獲得する領域、ライフコース要因、職業キャリア)によって形成され、これらの要因の組み合わせが起業家のキャリアを形成し、異なるタイプの起業家を生み出します。

分析の結果、女性起業家は、スペシャリスト、意図せざるキャリア、ジェネラリスト、最初から起業を目指すキャリアの4つのクラスターに分割されるそうです。

スペシャリスト:特定の領域に特化した中核的能力を獲得し蓄積した起業家
意図せざるキャリア:最初から意図されたキャリア・パスを形成するよりも偶然の出来事にその後のキャリアが形成された起業家
ジェネラリスト:異なる領域間を連結して、あるいは、橋渡しして、特定の中核能力を獲得し蓄積した起業家
最初から起業を目指すキャリア:キャリア形成の初期段階から起業家になることを意図し、そのためにキャリアの各段階で戦略的に必要な資本を準備した起業家

私はどちらかというと、「意図せざるキャリア」になります。
最初から独立しよう!と思って起業したかというとそうではなく、偶然の出来事が重なって(コロナで事業停止してしまったり)、独立した流れになります。

女性起業家のキャリアが4つの要因の相互作用(資本、資本を獲得する領域、ライフコース要因、職業キャリア)によって形成され、かつその組み合わせによって起業家のタイプが異なるという発見は非常に面白いなと思いました。

どのタイプが良い悪いという話ではないですが、どのタイプがどういう組み合わせで決まるのか、興味が湧いた方はぜひ論文をご覧ください!

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