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【本】組織と個人の期待値調整の理解に必要な「心理的契約」について。

私は現在、立教大学大学院リーダーシップ開発コースに通学しています。

「日本社会にある全ての組織はどうすれば、より良くなるのだろう」と日々考えているのですが、最近読んだ本で面白い学びがあったのでそのことについて綴ろうと思います。

読んだ本はこちら。


会社で働いていて、このようなことを考えたことはありませんか?

「社長なんだから、ここまではしてくれるだろう」
「あの人はマネージャーだから、納期を守らないはずはない」
「大きい会社だから有給もしっかり取れるだろう」

これらは、実際に会社と個人で約束されたものなのでしょうか。

会社で働いていてなんとなく違うと感じている人、モチベーションが下がっている部下をマネジメントしないといけない人、もしかしたら何かのヒントが見えてくるかもしれません。


心理的契約とは?


組織行動論の中に、「心理的契約」という言葉があります。

心理的契約とは当該個人と他者との間の互恵的な交換について合意された項目や条件に関する個人の信念のことをいいます。
会社に例えると、とある新入社員がある程度の規模の会社に採用されたなら、仕事がきちんとできるために研修をしてほしい、と思うような「雇ったからにはこれくらいのことはしてくれるはず」という期待のことです。

上記の定義から、心理的契約には4つの要素があります。

1、個人の信念
ex:この会社は育休実績もあるから、きっと快く育休をもらえるだろう(個人の期待)
2、合意の認識がある
ex:入社時に介護休暇があると聞いていたからもしもの時は使えるはずだ→◎  
  介護休暇が長引いたら、流石に在籍し続けるのは難しいだろう→✖️
3、項目分けされた内容がある
ex:給料、休暇、労働時間など
4、交換的な期待が存在している認識がある
ex:働かせてもらうからこそ、一定の成果を期待されているだろう

『組織行動-組織の中の人間行動を探る-』

もう少し会社目線でわかりやすくまとめると、心理的契約とは、従業員の組織に対する期待、及び、組織の従業員に対する期待に関する従業員の信念です。

心理的契約が生まれるのは、全ての契約を完璧に作ることができないからです。暗黙の約束であったとしても、それを破られたら、人は信頼を失うことになります。そのため、心理的契約には拘束力があります。

そして、心理的契約の不履行は、離職・転職につながるといわれています。
例えば、せっかく頑張って入社したのに、誰も気にかけてくれず初めての仕事に対してフォローもしてくれない。むしろ、指摘ばかりで怒られる。こんな職場だったら誰でも「このままこの会社に勤めていて大丈夫かな?」と疑問に思いますよね。

心理的契約に含まれる契約内容

心理的契約に含まれる契約内容は、取引的契約と関係的契約の2つに分けることができるといわれています。

取引的契約とは、経済的な・条件的側面に主眼を置いた短期的に更新される可能性がある契約のこと。
(例)休日出勤や残業は特別な場合を除けばない等
関係的契約とは、金銭あるいは経済的な側面にとどまらず、心理的な側面をも含んだ長期的な視野の元での契約のこと。
(例)長期的に雇用を保障してくれる等

『組織行動-組織の中の人間行動を探る-』


ここで面白いのが、関係的契約を大事に考える人ほど、仕事や組織に対して意欲的で長期的な勤続を望み、取引的契約を大事に考える人ほど、より高い地位を望むといった立身出世的な態度を示すといわれています。

また、組織変革に対する態度も異なることが示されていて、ある研究によると、関係的契約を認識している従業員には外的な環境に対応するために変革はやむを得ないと感じる人が多かったのに対し、取引的契約を認識している従業員には、変革は経営者の自己都合によるもので正当とはいえない、と感じる人が多かったという結果が出ています。

以上のことから、「取引的契約」よりも「関係的契約」を形成することが組織にとってよりメリットがより大きいことがわかります。

「心理的契約違反」に対する考え方

心理的契約は、個人の心の中に存在するものです。そして、ときに、個人は組織の「裏切り」(=契約違反)を経験することになります。

例えば、営業の仕事ができると思って入社したら、雑務ばかりで全然前に立たせてもらえなかった、ということがあったとしたら、きっと誰もが「この会社は言ってることが違う!」と思うでしょう。

私も新卒で入った会社が、自分の想像していた仕事と全然違っていて、勝手にがっかりして傷ついた経験があります。(笑)

心理的契約違反は、組織と個人の間での互いの期待値調整のプロセスである、という考え方もできます。(Katsuhiko Yoshikawaさんのブログより抜粋)

そう考えると、「自分が思っていたのと違う!」ということが起きるのは自然なことで、個人はそれを受けて、「この会社でどうやって仕事をしようか」と期待値を調整することもできます。(当時の私は、その期待値調整のやり方がわからず、うまくできなかったという苦い思い出があります….)

ここで重要なのは、自分が組織とズレを感じた時に、上司といかに日々コミュニケーションを取って、そのズレを調整していくかなのではないかと思います。

逆も然り。上司が、ズレを感じている部下に気づいて、声をかけることも大切です。

この個人と組織の「ズレ」を、感じているのに見ないフリをして放置してしまうと、メンタル不調や離職につながってしまう可能性があります。

信頼よりも「裏切られた!」と思わせないこと


ある先行研究では、従業員が会社から裏切られたと感じた場合、心理的契約に対して否定的になり、信頼感が増えても心理的契約への肯定的影響が少ないということがわかっています。(青木,2001)

このことはつまり、会社への信頼が増す施策も大切ですが、それよりも会社から裏切られたと思わせない方がより重要である、ということです。

できる限り最初の段階で、従業員が会社に期待していることを把握した上で、会社としてできること、できないこと、今後ズレが起きそうなことを事前にコミュニケーションしておけると良さそうだと思いました。

そしてこの段階で、会社として取引的契約ばかりではなく関係的契約に着目したいですね。


改めて再掲載ですが、心理的契約とは、従業員の組織に対する期待、及び、組織の従業員に対する期待に関する従業員の信念です。


時間がかかるとは思いますが、できる限り、個人も組織も相手への期待を言語化して、(伝えないとわかりません!)お互いのすり合わせを丁寧に行なっていきましょう。

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