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<ラグビー>イングランド対南アフリカ、ウェールズ対オーストラリア、そして大学ラグビーなど

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 アメリカ1920年代の流行作家リング・ラードナーの、『ここではお静かに』にある『短編小説の書き方』にある「ナンセンスかつウィットに富んだ」文例が、なぜか私の「ツボ」にはまっている。

「あの」とクルート夫人(これが彼女の名である)が言った。「あの大峡谷、あなたはどうお感じになって?」
「ちょっとした洞穴ですな」と彼女の相手は答えた。
「まあ、なんと奇妙な言い方かしら!」とクルート夫人は答えた。「じゃあ、なにか弾いて下さいな」
 一言も言わずにウォーレンはピアノの前に坐り、黒鍵の上に指をおろして不気味で幻想的な楽音を鳴らした。しかも天来の響きに誘われたかのごとく、彼はショパン作曲『フルートと啖壺のための第十二番ソナタ』第二楽章の中間部を弾きはじめていた。

 たしか、JD・サリンジャーが『Zooey(ズーイー)』に引用していた。・・・探したら、すぐに見つかったので、その原文を孫引きする。ただし、最後のショパンの下りは引用していない。多分サリンジャーとしては、ラードナーのナンセンスさに注目したのではなく、コミュニケーションの(意図的かつ悪意ある)食い違いに注目したのだと思う。

‘Well’, said Mrs. Croot, for it was she,
‘What did you think of the Canyon?’
‘Some cave’, replied her escort.
‘What a funny way to put it!’ replied Mrs. Croot,
‘And now play me something’, 
   Ring Lardner (‘How to write short stories’)

1.イングランド13(1T1C2P)-27(2T1C3P2D)南アフリカ

 南アフリカ監督のジャック・ニーナバーとしては、アイルランドとフランスに負け、イタリアにも前半苦戦するなど、来年のRWC連覇に向けてネガティヴな結果が続いている。2019年RWC決勝のようにイングランドを粉砕して、結果を残したい。

 南アフリカは、恒例の一日早いメンバー発表を火曜にした。11月の国際試合月間の枠外になるため、ヨーロッパのクラブチームは、次の南アフリカ代表選手をリリースしなかった。WTBチェスリン・コルベ、CTBアンドレ・エスターハイゼン、SHコブス・ライナッハ、NO.8ジャスパー・ウィーゼ、PRヴィンセント・コッホ。このため、前の試合からメンバー23人中8人が交代した。

 4番LOにリザーブからエベン・エツベスが戻った。NO.8エヴァン・ロス、11番WTBマカゾレ・マピンピ、13番CTBジェシー・クリエル、18番PRトーマス・デュトイ、19番FLマルコ・ファンスタッデン、21番SHジェイデン・ヘンドリクス、23番BKカナン・ムーディーが、それぞれメンバー入りした。

 なお、リザーブにLOがいないため、4番エツベスまたは5番LOマーヴィン・オリーが怪我などした場合は、7番FLフランコ・モスタートがLOに上がり、19番ファンスタッデンまたは20番クワッガ・スミスが入ることになる。

 イングランド監督のエディー・ジョーンズとしては、ほぼ負けが決まっていたオールブラクス戦を引き分けに持ち込んで、さぞ鼻高々だろう。2019年RWC準決勝に続いて、オールブラックスに「負けなかった」という実績は、彼がこれからも何かにつけて自慢にしそうだ。そして、こんどはRWC決勝のリベンジを果たせれば、アイルランド、フランスとともに来年のRWC優勝候補としての自信がみなぎることになる。

 イングランド13番CTBマヌー・ツイランギは、怪我で欠場する期間が長かったため、ようやく50キャップを達成する。6番FLにアレックス・コールズが戻り、20番FLにサム・シモンズが下がった。HOはジェイミー・ジョージが先発し、16番ルーク・カーワンディッキーとローテーションした。14番WTBにトミー・フランシスが怪我から復帰した。

 試合は、14分にイングランドが、12番CTBオウウェン・ファレルのPGで3-0と先行するが、南アフリカも19分に、SHファフ・デクラークのPGで3-3と追いつく。そして、FW戦を優勢に進める南アフリカは、31分にSOダミアン・ウィルムゼのDGで3-6とリードした後の33分、相手キックのカウンターをつないだ14番WTBカートリー・アレンゼが、イングランドSOマーカス・スミスのやる気のないようなミスタックルをかわしてトライ。デクラークのコンバージョンは失敗したが、3-11とリードを拡げた。その後40分にデクラークがPGを追加して、前半を南アフリカが3-14とイングランドに11点差をつけて終わる。

 後半は、42分に南アフリカSOウィルムゼがDGを入れて3-17とした後、46分にイングランドCTBファレルがPGを返して6-17とするが、48分にはイングランド7番FLトーマス・カリーが、チームの反則の繰り返しでシンビンになってしまう。ただでさえFWが劣勢なところでのシンビンは、イングランドに致命傷となってしまった。50分の4番LOエベン・エツベスのトライとデクラークのコンバージョンで、南アフリカが6-24と大きく引き離した後、58分にはデクラークがPGを加えて6-27と、南アフリカがほぼ勝利を確定した。

 ところが60分に、南アフリカ18番PRトーマス・デュトイが、既にタックルされているイングランド16番HOルーク・カーワンディッキーに対して、飛び込みながら頭部にタックルする危険なプレーをして、レッドカード(退場)となる。このため南アフリカは、残り20分間を14人で戦うことになってしまった一方、数的優位のチャンスを得たイングランドは、前週のオールブラックス戦で残り8分にオールブラックスがシンビンで14人になった隙を突いて、一気に引き分けに持ち込んだことの再現を目指すこととなった。ところが、イングランドのアタックはオールブラックス戦のようには上手くいかず、72分に22番SOヘンリー・スレードのトライとファレルのコンバージョンで13-27とするまで精一杯だった。

 イングランドは、ホームのトウィッケナムで南アフリカに対して二番目となる大敗を喫した上、今年の戦績は12戦5勝6敗1分となり、2008年以来の最悪の結果となった。また、ホームで2敗したことも心証を悪くしている。監督のエディー・ジョーンズは、メンバーに怪我人が多いことを敗因とした一方、若手の成長が順調であることを強調しているが、外部の反応は厳しい上に否定的になっており、2015年RWCで地元開催ながらベスト8入りできなかったときの監督である、スチュアート・ランカスター以来の失態と見ている。そのため、来年のシックスネーションズに向けて、イングランド国内でジョーンズ更迭論が沸騰し始めている。

 一方、見事に得意のFW戦で勝利し、2019年RWC決勝の再現をした南アフリカとしては、6試合で7トライを記録した新星WTBカートリー・アレンゼの活躍や、FLに起用したフランコ・モスタート、LOエベン・エツベス、右PRフランス・マルアーブらの世界トップレベルの選手たちのプレーで、今シーズンをほぼ満足して終えることができたと言える。2023年RWCに向けては、このままFWを中心にした戦術を継続するだろうし、SOのダミアン・ウィルムゼが成長したことと、かつてのブライアン・ハバナのようなトライゲッターにWTBアレンゼがなってくれそうなので、RWC連覇かつ4回目の優勝という野心が益々高まっていくと思われる。

2.ウェールズ34(4T4C2P)-39(5T4C2P)オーストラリア

 オーストラリア監督のデイヴ・レニーとしては、ザ・ラグビーチャンピオンシップから続く不調の波から抜け出せないでいる。さらにBチームで臨んだイタリアに負けたことに加え、フランスとアイルランドに連敗したことから非常に厳しい状況に追い込まれている。このままでは解任問題に波及する可能性もあるため、せめてこのウェールズには勝ちたい。

 試合の23人は、またもや大幅な交代をしている。SOはオーストラリアXVから昇格したベン・ドナルドソンが初先発する。そのため、SHには同じワラターズのジェイク・ゴードンが先発し、12番CTBはハンター・パイサミが怪我のため、ベテランのリース・ホッジを入れることで、ドナルドソンを支える体制にした。レニー監督によれば、ドナルドソンのFBもできるユーティリティー性を評価して先発に起用したと説明している。また、PRタニエラ・ツポウが怪我のため、18番PRにはサム・タラカイが入り、初キャップをめざす。7番FLは前キャプテンのマイケル・フーパーが脳震盪で再びメンバー外となり、フレイザー・マクライトが先発する。

 ウェールズのウェイン・ピヴァク監督も、オーストラリア監督レニーと近い危機的状況にある。今年は、シックスネーションズで不振だった上に、この秋の南半球勢との対戦ではアルゼンチンに快勝できた一方、オールブラックスには完敗し、さらにジョージアにまで負けるという屈辱を味わった。そのため、既に進退問題が取りざたされている状態だ。この試合は、ホームでの今シーズン最終戦であることから、勝ちたい思いはオーストラリア以上に強いかも知れない。

 試合の23人では、NO.8のタウルペ・ファレタウが、ウェールズでは9人目となる100キャップを得る。また大ベテランのLOアルンウィン・ジョーンズが、ウィル・ローランドの怪我もあり、5番LOに戻った。BKでは、12番CTBに、オウウェン・ワトキンの怪我によりジョー・ホーキンズが初キャップ兼初先発を得た。トライゲッターのWTBルイス・リーザミットはクラブがリリースしなかったため、FBに大ベテランのリー・ハーフペニーが戻ってきた(しかし、試合当日に怪我でまたもやメンバー外となり、FBにジョシュ・アダムスが上がり、23番にはサム・コステロが入った)。

 試合は、4分にオーストラリアが、SOベン・ドナルドソンのPGで0-3と先行する。しかし10分にウェールズは、相手陣22mラックからの攻撃で、最後に5番LOアルンウィン・ジョーンズからのオフロードパスを受けた6番FLジャック・モーガンがトライ。この日100%の成功率だったSOガレス・アンスコムのコンバージョン成功で、7-3と逆転する。続く15分、ドナルドソンがPGを返すが、19分にアンスコムもPGを入れて10-6となった後の22分、ウェールズは中央15mラックから右展開し、右タッチライン際を抜けて、インゴール右スミにダイブしたNO.8タウルペ・ファレタウがTMOとなるがトライ。アンスコムのコンバージョン成功で、17-6とリードを拡げる。さらに28分にもアンスコムがPGを加えて、20-6と大きくリードした。

 反撃するオーストラリアは、34分に右ゴール前5mモールからHOフォラウ・ファインガアがインゴールに入り、TMOの結果トライ。ドナルドソンのコンバージョンも決まって、20-13と7点差に迫った。ところが38分、ウェールズに自陣右中間ゴール前に攻めこまれた後のラックからの球出しで、ウェールズ21番SHキエラン・ハーディに対して、故意のオフサイドからタックルをしたSHジェイク・ゴードンがシンビンになってしまう。ウェールズは、この後に絶好の得点チャンスを得て、左中間ゴール前5mスクラムから左へ展開。NO.8ファレタウ→21番SHハーディとつないだボールをインゴールに持ち込むが、オーストラリアにボールヘルドとされてしまい、大切な得点チャンスを逃してしまった。また、このチャンスを逃したことが最後まで大きく影響することとなった。

 後半に入り、41分にまだシンビンが残っているオーストラリアは、中央55mから12番CTBリース・ホッジがPGを狙うが外してしまう。そして、45分には、前半から劣勢だったスクラムを押されて、17番PRトム・ロバートソンがチームの反則繰り返しでシンビンになる。この数的優位を突いたウェールズは、47分に、左ゴール前10mラインアウトからモールで押し込み、6番FLモーガンが二つ目のトライ。アンスコムのコンバージョン成功で、27-13とリードする。さらに52分には、左中間ゴール前ラックから左に展開して、11番WTBリオ・ディヤーが左スミにトライ。アンスコムのコンバージョン成功で、34-13とリードを拡げて、ほぼ勝利を手中にしたと思われた。

 ところが、シンビンが終わり15人そろったオーストラリアが、58分に左中間ゴール前ラックから右へ回して、11番WTBマーク・ナワカニタワゼがインゴール右スミに入る。TMOの結果トライとなるが、22番SOノア・ロレシオのコンバージョンは失敗して、34-18と16点差に迫る。そして63分、ウェールズは敵陣に攻め込んでいたとき、オーストラリア20番FLピート・サムにパスをインターセプトされる。その直後にウェールズ7番FLジャスティン・ティプリックがサムの足を引っかけて転ばしてしまい、TMOで確認の結果シンビンになり、ウェールズは試合の主導権を失うこととなった。

 流れがオーストラリアに傾いた後の68分、オーストラリアは数的優位を突いて攻め込み、左22mラインアウトから右へ16番HOラクラン・ロナーガンが開いたところの内側に、ブラインドサイドから11番WTBナワカニタワゼが走りこんでパスをもらい、そのまま走りきってトライ。ロレシオのコンバージョン成功で、34-25と9点差に迫る。

 その後も数的優位のオーストラリアが継続して攻め込み、74分に左ゴール前5mのラインアウトからのモールで16番HOロナーガンがインゴールに入る。TMOでボールヘルドが確認されたが、ウェールズ16番HOライアン・エリアスがモールで故意にオフサイドをしていたことが確認され、シンビンとなってしまう。これでウェールズは13人となり、オーストラリアの数的優位が増した上に、ペナルティートライをオーストラリアが得て、34-32と2点差に迫った。

 そして78分、15人対13人の数的有利から攻め込んだオーストラリアが、中央ゴール前10mラックから右へ攻め、16番HOロナーガンがトライ。ロレシオのコンバージョン成功で、34-39とついに逆転する。

 しかし、シンビンのティプリックが戻ってきたウェールズは、最後の逆転勝利を賭けて攻め込み、79分にオーストラリア陣でPKを得る。さらに右ゴール前15mラインアウトから左へ波状攻撃し、右中間ゴール前に攻め込むが、81分にオーストラリア16番HOロナーガンにラックでターンオーバーされて、ついにノーサイドとなってしまった。

 ウェールズは、16点差をつけてほぼ勝利確実であったゲームが、残り17分からのシンビン2枚で逆転される一方、最後に5点差を逆転するチャンスがありながら、相手の好守にはばまれて終わる、実に悔やまれる負けとなってしまった。後半の連続したシンビン2枚がなければ、確実にウェールズが勝っていたと思われるので、ウェールズとしては勝利を自ら逃してしまった感が強い。この結果、ウェイン・ピヴァク監督更迭論が一層激しくなることだろう。

 一方、薄氷の勝利を得たオーストラリアは、SOベン・ドナルドソン、WTBマーク・ナワカニタワゼ、NO.8ランギ・グリーソンなど、オーストラリアXVの活躍が認められて代表入りした選手が期待に応えるなど、不本意な敗戦が続いた中で来年に向けた光明が少しずつ見え始めている。また、この試合に勝利したことで、とりあえず監督のデイヴ・レニーに対する批判は収まることとなった。しかし、長期的な人材不足は解消していないため、来年も苦戦が続くと思われる。日本代表入りしたLOジャック・コーネルセンとCTBディラン・ライリーの二人を、できればオーストラリアに返して欲しいくらいの苦しい状況ではないだろうか。

3.秋の南北対決総括(みたいなもの)

 一番の話題は、イングランドに勝利したアルゼンチンで、ザ・ラグビーチャンピオンシップでオールブラックスから初勝利を得たことと併せて、マイケル・チェイカ監督の評価は高いが、好不調の波が大きいのが難点となっている。とはいえ今年は、来年のRWCで上位に食いこむ力を証明して見せたシーズンとなった。

 これに続くのはイタリアで、ティア2国との対戦では確実に勝利し、Bチームとはいえオーストラリアにも勝利した。キアラン・クラウリー監督の手腕が発揮された成果と見られ、RWCでは、フランス及びオールブラックスと同じプールに入ったため、ベスト8入りは厳しいが、ウルグアイとナミビアには勝利して、プール3位を確保しそうだ。

 ジョージアも、ウェールズにアウェイで勝利したことは大きな成果となった。RWCでは、再びウェールズと対戦する他、オーストラリア、フィジー、ポルトガルとの対戦となるため、ベスト8入りする可能性が高くなっている。2019年は日本がベスト8入りして話題になったが、2023年ではジョージアがその栄誉を得る可能性がある。

 北半球勢では、アイルランドとフランスが安定した結果を残し、2023年に向けて好調を維持している。またイングランドは、アルゼンチンに負けたものの、オールブラックスと引き分けて存在感を見せた一方、最終戦で南アフリカに完敗して評価を下げてしまった。ウェールズは不調、スコットランドは不調ではないが、チーム力の上昇がややにぶい感じがする。RWC出場を敗者復活戦で決めたポルトガルは、RWCで勝利することは難しいだろう。ルーマニアはチリに勝利するなどそれなりに順調だが、ティア1国の壁は厚そうだ。RWCではトンガに勝利するのが目標となるのではないか。

 南半球勢では、南アフリカが、総監督ラッシー・エラスムスの不用意な発言によるWRからの制裁措置に加え、ベテランSOエルトン・ヤンチースのチーム内不倫問題など、グランド外の不祥事でチームの足が引っ張られている。また、アイルランド及びフランスとの現時点での頂上決戦では、いずれも惜敗するなど波に乗れずにいる。しかし、強力FWは相変わらず健在であり、BKにもトライを取れる選手がいるため、大崩れすることはないだろう。RWCではベスト4まで確実に行きそうだ。

 オーストラリアは、最終戦にウェールズに勝利したものの、ずっと不調が続いている。スーパーラグビーの不調がそのまま代表に影響している他、選手層の薄さが最大の原因となっている。SOは、ベン・ドナルドソンなど期待の若手が十分に成長していないため、ベテランのクエード・クーパーやバーナード・フォリーに頼るなど、チーム力が安定していない。Xファクターになれそうな若手は、WTBマーク・ナワカニタワゼが挙げられるぐらいで活躍までは予測できない。そのため、RWCではベスト8止まりの可能性がある。

 オールブラックスは、シーズン前半にアイルランドにホームで連敗、南アフリカとアルゼンチンに負けるなど、イアン・フォスター監督更迭論が沸騰する状況になったが、アシスタントコーチにジョー・シュミットを加えることで、かなり改善できてきた。この秋の対戦も、ウェールズに完勝、日本とスコットランドにはBチームで勝利、イングランドには後半残り10分でのシンビンが影響して、ほぼ確定していた勝利を引き分けにされてしまった。

 もしイングランド戦に勝利していれば、不調だったシーズンの良い終わり方となったが、負けに等しい引き分けとなったため、微妙な評価になっている。また、次期監督の期待が高いスコット・ロバートソンは、次期イングランド監督就任の噂が頻繁に出るなど、グランド外の話題もチームのプレー振りに影響したと思われる。RWCでは、ベスト8入りは確実であり、優勝も狙える実力を備えているが、現時点では楽観も悲観もできない状況となっている。

 最後に日本について。Bチームのオールブラックスに惜敗して期待が高まったが、イングランドとフランスのAチームには、歯が立たなかった。現時点の実力差が得点にそのまま反映したように思う。また、SOに人材を欠いていることも影響している。田村がメンバー外となった一方、松田が出ていないことは心配だ。そのため、山沢が第一候補に挙がって欲しいが、まだ定着までには時間がかかりそうだ。また李と中尾の二人は、まだまだテストマッチでは荷が重く、2023年ではなく2027年に活躍するのではないかと見ている。来年のRWCでは、二大会連続となるベスト8入りを期待したいが、チリとサモアには勝利しても、イングランドまたはアルゼンチンに勝利することは、相当に厳しい現状だ。相手に複数のレッドカードやシンビンがでない限りは、勝つのは無理だというのが実情だろう。

4.大学ラグビー

慶應13(1T1C2P)-19(3T2C)早稲田

 過去の統計から好天に恵まれるはずの23日に、なぜか大雨。そして、ゲームの内容も「悪天候」に相応しい、自滅合戦と安易なエラーの連続。大学ラグビーなんて、所詮はこんなレベルでしょう。

 試合は、前半に慶應が10-0とリードする予想外の展開。スクラムは早稲田、ラインアウトは互角(ただし、互いにノットストレートを繰り返す)、ブレイクダウンは慶應という図式で、さらに風下の早稲田がキック処理にもたついた一方、慶應はトライになった22m内へのハイパントなど、総じてキック合戦では優勢だった。

 このまま慶應勝利かと思いきや、後半47分に慶應FWの攻守の要であるNZ人留学生がシンビンになる。1人足りないだけでなく、慶應はアタック&ディフェンスの要を欠くこととなったので、グランドには3人足りないくらいの影響があった。そしてこのシンビンの間に早稲田が12点取ったことが、早稲田逆転勝利につながった。また、このシンビンを含めて、後半の慶應は不要かつ安直な反則を重ねた結果、攻めあぐねる早稲田にボール保持とアタック継続を献上していた。もし慶應が不要な反則さえしなければ、慶應が勝っていたと思われるゲームだった。

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