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<ラグビー>2024年シーズン(1月第四週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)
 
 図書館で「ラグビーマガジン」を見ていたら、デジタル関係の人材を高給で募集していた。もう紙媒体での雑誌は売れなくなり、ウェブサイトでの購読が主流になっている。そういえば、ニューヨークタイムズも電子版に特化したことが少し前にニュースになっていた。
 
 羊皮紙・パピルス・竹簡に書かれていたものが、やがて紙に移行し、さらに筆写していた書物の作成が、活版印刷の発明で安価かつ大量に行われるようになった。それまで貴重な存在だった本が、いつのまにか身近な存在となって、より簡易な新聞・雑誌が登場し、それらはメディアの花形となった。
 
 メディアの世界では、その後音声(ラジオ)、視覚(映画・TV)の登場で裾野が拡大したが、それでも出版文化は維持された。しかし、インターネットの登場で出版文化は衰退している。人類の文化の歴史を考えると、21世紀初頭の今は大きな変わり目にあるのだろう。そして、IT機器に不慣れな人という新たな文盲を作り出していることに、意外と気づいていない。
 
 一方、文芸の世界でも紙媒体からウェブサイトへの移行が進んでいるように見えるが、こちらは紙媒体としての「重み」・「価値」はある程度生き残るような気がする。要するにレオナルドの作品をデジタルで見るのと、実物を見るのとは大きな違いがあるように、デジタルで読むのと活字を読むのとは、芸術鑑賞という点で差異があると思う。
 


1.リーグワン第6節(第二週)結果

ブラックラムズ東京17-18スピアーズ東京ベイ浦安


 結構接戦になりそうな予感がしたとおりに、ブラックラムズが前半を10-5とリードすると、後半もよく粘りながら、スピアーズに66分のトライと74分のPGで10-15と逆転されてしまい、これで勝負が決まったと思われた。ところが、79分にブラックラムズは値千金のペナルティートライで逆転して、17-18とした上に、スピアーズにシンビンが出て、残り1分を守り抜けば勝利は確実だった。

 しかし、ここが勝ち切れないチームの弱さなのだろう。自陣ラックでボールキープを試みて不要な反則を犯してしまい、そこからスピアーズのゲラート・ファンデルヒーハーに、珍しく外し頃のPGを決められて劇的な負けとなった。ブラックラムズは、SOに入ったアンザック・ルーカスが、アタックで良いプレーをしていただけに、悔しい負けだった。

静岡ブルーレヴズ50-12花園ライナーズ


 ライナーズが、SOにクエード・クーパーが戻ってきてどこまでやれるかと期待した一方、ブルーレヴズは、お山の大将クワッガ・スミスが怪我で不在となり、チームの柱がいない危機的状況となっていた。

 そうしたチャンスを生かすべく、ライナーズSHウィル・ゲニアは奮闘したが、それが早々に裏目に出て6分にシンビン。さらに後半54分に二枚目のシンビンかつ暴力行為によりレッドカードとなり、チームの足を引っ張ってしまった。それでも、前半は19-12と7点差で折り返し、後半も無得点ながらくらいついていたが、ゲニアのレッドカードに加えて、73分にもシンビンになるなど、チームの規律に問題を残す結果となった。

 ブルーレヴズは、スミスに代わって元オールブラックスのチャールズ・ピウタウが格が違うプレーを見せて、チームの勝利に貢献した。

横浜イーグルス27-31神戸スティーラーズ


 イーグルスは、CTBジェシー・クリエルとSHファフ・デクラークの飛車角が怪我で長期不在となり、戦力が落ちているので、スティーラーズはSOが安定すれば、かなりやれると期待した。

 しかし、15分にスティーラーズにシンビンが出て、前半を10-0とイーグルスが順当にリードする。後半に入ると点の取り合いになったものの、60分と63分にイーグルスが連続トライを挙げて27-14とし、勝負あったと思われた。ところが、だいぶチームに馴染んできたスティーラーズSOブリン・ゲイトランドが、得意のキックではなく、自らのランニングで良いプレーを連発し、70分、75分と連続トライを返して、27-28に逆転する。

 残り時間から考えて、イーグルスにも十分逆転するチャンスありと見えたが、ここでオールブラックスNO.8で世界最優秀選手であるアーディ・サヴェアが、特にディフェンスで鬼神の如くの大活躍を見せ、78分にはPGを得てスティーラーズが27-31と差を拡げて、見事な勝利を獲得した。オールブラックス及びNZの選手は、やはり格が違う。

トヨタヴェルブリッツ12-28ブレイブルーパス


 SOのオールブラックス対決が実現するかと期待したが、ヴェルブリッツのボーデン・バレットが15分にリタイアしてしまい、楽しみは早々に終わってしまった。しかし、リザーブに回ったアーロン・スミスに代わって先発した、SH福田健太のビックプレーで、ヴェルブリッツは7分のトライで先制し、その後も素早いディフェンスでブレイブルーパスのアタックを良く抑えていた。しかし、バレットが退いたの期にブレイブルーパスは、PG、トライと得点を返していき、前半を7-10で終える。ヴェルブリッツは、せめて3点でも加点したかったが、ヘビー級の激闘となったゲームで、最初の勢いが徐々に衰えていったのが惜しかった。

 後半に入り、ヴェルブリッツはSHにスミスを投入するが、さすがに肉弾戦で劣勢に傾いた流れを逆転することができず、ブレイブルーパスに加点されていった上に、味方にシンビンが二人も出てしまったため、なかなか得点する機会を得られなかった。ブレイブルーパスは、MOMになったSOリッチー・モウンガが、72分にビッグプレーを見せてトライをアシストするなど、相変わらず好調を維持している。

 一方、同じくオールブラックスのFLシャノン・フリッゼルが、この日はアタックで再三再四MOMに匹敵するランニングを見せており、リーグワンのプレーで成長が期待された部分の成果が出ている。かつて、ジェローム・カイノがトップリーグでプレーした後NZに戻ったところ、心配されていた実力低下どころか、さらに良いプレヤーになっていて、2015年のRWC連覇に貢献したが、フリッゼルもカイノのようになっている気がする。

2.セヴンズワールドシリーズ第3戦パース大会結果


 昨シーズン好調だったNZチームが、オリンピックのある今シーズンは今のところ不調になっている。オリンピックまでの調整をしているのか、はたまた単に調子が落ちたのか。また、フィジーや南アフリカなどのこれまでセヴンズで活躍していた国も調子を落としている。他の国が強化に成功したのか、あるいは強豪国の実力が低下したのか。答えは、オリンピックまでに出そうだ。

女子決勝
アイルランド19-14オーストラリア
日本は最後にスペインに33-5で勝利して11位。ブラックファーンズセヴンズは、フランスに14-10で勝って5位。

男子決勝
アルゼンチン31-5オーストラリア
オールブラックスセヴンズは、サモアに21-14で勝って9位。

3.その他のニュースなど

(1)ブラッド・シールズがハリケーンズのキャプテンを目指す


 2018年までハリケーンズのFW3列としてプレーし、オールブラックス候補にも入ったブラッド・シールズは、その後イングランドとフランスのクラブチームに移籍した。そして、一時期エディー・ジョーンズ指揮下のイングランド代表としてもプレーした。

 その後、昨シーズンからNZに戻り、ウェリントン州代表としてNPCでプレーしている。これまでの実績から、ハリケーンズのスコッドに入っており、古巣に戻った形となっている。一方、ハリケーンズは、これまでチームの中心だったアーディ・サヴェアとダン・コールズの二人が日本へ移籍してしまったため、有力なキャプテン候補が不在となっている。

 現状では、FLデュプレッシー・キリフィーとSHのTJ・ペレナラが有力候補と見られているが、シールズが先発メンバーとして活躍することがあれば、キャプテン候補の一人になると見られている。また、ハリケーンズでの活躍が認められれば、念願のオールブラックス入りが叶うかも知れない。

(2)ブロディー・レタリックが、RWC準々決勝のピーター・オマーニーとのやりとりを振り返る


 現在、リーグワンの神戸スティーラーズでプレーする、前オールブラックスLOのブロディー・レタリックは、RWC準々決勝でアイルランドに28-24で勝利した時、アイルランドのFLピーター・オマーニーと言葉の戦い(原語は「馬上槍試合」)をしたことを回想している。

 それによると、アイルランドがNZに遠征してきた2022年のウェリントンで行われた最終戦で、オールブラックスはアイルランドに負け越してしまったが、その時アイルランドは左、右、中央と縦横無尽にボールを展開して、まさに「アイルランドの日」にしていた。しかし、スタッド・ドゥ・フランセで78,000人の観客を集めたRWCの準々決勝では、アイルランドの18連勝を阻止するとともに、オールブラックスが見事にウェリントンの借りを返して「オールブラックスの日」にできたのは、最高の思い出だったと述べている。

 また、アイルランドのピーター・オマーニーは、オールブラックスのキャプテンであるFLサム・ケーンを、「(偉大な)リッチー・マコウのできそこない(シット=糞)バージョン」とけなしていたが、この試合の最後にレタリックはオマーニーに対して、「ピーター、(RWC優勝まで)また4年、惨め(ファッキング・ウィット)だな」と言ってやったそうだ。

 レタリックは、ホークスベイ州ボーイズユニオン(ホークスベイ州の若手育成機関)から、苦労を重ねた結果ホークスベイ州代表に入り、その後2012年にスーパーラグビーのチーフスで活躍することで、2014年からオールブラックスに選ばれるようになった。そして109キャップを重ねるとともに、2014年にはNZの最優秀選手賞を、2018年にはシドニーのワラビーズ戦で記録したトライで、WRの年間最優秀トライ賞をそれぞれ受賞するなど、偉大な選手となっている。

 そして、功成り名を遂げた現在は、薄給だった若かった頃の、毎日ツナ缶とクラッカーで飢えをしのいだ日々を懐かしんでいる。

(3)オウウェン・ファレルのラシン92移籍が正式決定


 イングランド代表で112キャップを重ねるとともに、キャプテン及びSOあるいはCTBをプレーしたきたオウウェン・ファレル、32歳は、今年7月から2シーズンにわたって、フランスのラシン92へ移籍することを正式に発表した。

 ファレルは、今年のシックスネーションズには精神的な問題から代表でプレーしないことを表明しているが、フランスのクラブチームへ移籍したことで、名実ともにイングランド代表から外れることになった。

 また、2025年のブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズのオーストラリア遠征では、父のアンディ・ファレルが監督を務めることになっているが、イングランド代表から外れた息子のオウウェンをライオンズに参加させるか否かについて、苦渋の決断を迫られることとなった。

(4)イングランドの11月の試合日程決まり、最終戦で日本と対戦


 イングランドの11月のテストマッチ予定が決まった。オールブラックス、ワラビーズ、スプリングボクスと南半球の三強と連戦したのち、最後に日本と対戦する。イングランドの現監督スティーヴ・ボースウィックは、エディー・ジョーンズが最初に日本代表監督をしていたときのアシスタントコーチで、その後多くのジョーンズ体制から逃げ出したコーチ同様にジョーンズの下を去る一方、昨年からジョーンズが解任された後のイングランド代表監督に就任している。そして今年は、元上司との因縁となる二度の対戦を行うことになった。

日程は以下の通り。いずれも会場はトウィッケナムで土曜に行われる。
11月 2日 イングランド対オールブラックス
11月 9日 イングランド対オーストラリア・ワラビーズ
11月16日 イングランド対南アフリカ・スプリングボクス
11月23日 イングランド対日本(注:日本協会の発表では、23日または24日となっている。)

(5)スプリングボクスに多くの怪我人が発生


 昨年のRWCで1点差という薄氷の勝利を繰り返した後に優勝した、南アフリカ・スプリングボクスは、代表選手の大半がフランスや日本でプレーしているところ、その多くの選手が怪我で長期間にわたりプレーできない状況となり、来る7月のテストマッチのメンバー構成が憂慮されている。

その怪我人は以下のとおり。
CTB ジェシー・クリエル 
FL クワッガ・スミス 
SH ファフ・デクラーク 
HO マルコム・マルクス
HO ボンギ・ムボナンビ
PR フランス・マルアーブ
PR ヴィンセント・コッホ
LO RG・スナイマン

なお、南アフリカの7月のテストマッチは、初対戦となるポルトガルとの試合を含めて3試合を予定している。
7月 6日 対アイルランド
7月13日 対アイルランド
7月20日 対ポルトガル

 格下のポルトガルとの試合では、二番手の若手選手中心で構成しても勝敗に影響しないだろうが、アイルランドとの対戦では怪我人の影響が大きく、特に先発HO二人が不在となった場合、RWCのようにFL兼任のデオン・フーリーを起用するわけにはいかないため、三番目の若手HOの育成が急がれている。

(6)マイケル・フーパーは、シュミットのワラビーズ監督就任を大歓迎


 長年にわたりオーストラリア・ワラビーズのキャプテンとしてチームをけん引してきた、世界屈指のオープンサイドFLのマイケル・フーパーは、昨年のRWCでは監督のエディー・ジョーンズによって、「彼はロールモデル(お手本)には相応しくない」という理由で、突然スコッドから外された。一方ワラビーズは、史上初のプールマッチ敗退という惨状をさらすこととなり、ジョーンズは「協会の協力不足」を理由に監督を辞任した。

 そうした昨年のワラビーズの状況を、フーパーは「チームは明確な目標をもって、誰かが皆をけん引していくことが必要で、それはまるでジグソーパズルを完成するようなものだ」、「しかし、昨年のチームはまったくクレージーな(狂った、馬鹿げた)チームだった」と回想している。

 一方、NZ人であるシュミットが新たな監督に就任したことに対し、「選手は勝ちたい、良いコーチングを受けたい、尊敬を受けたい、エキサイティングなプレーをしたいと願っているが、そうしたことをオーストラリア人が(指導)できると良い」、「しかし、そうした良い環境をシュミットがもたらせてくれることを期待している、またオーストラリア人がシュミットのような素晴らしいコーチになることを願っている」、

 「シュミットの過去5~10年の実績からも、彼の就任は大歓迎だ」、「シュミットは、ボール保持、ゲームプラン、プレッシャーの与え方、エリアの獲り方などを理解している」、「ボールを持ち続け、フェイズを重ね、良いストラクチャー(構図)を作り上げ、そうして結果につなげている上に、もちろん80分間にわたる力強いゲームコントールもしている」と、シュミットのコーチングを称賛している。

 さらに、「ある人の話では、(シュミットの)選手に対するマネージメントについては、選手がベストのプレーをできるようにしているそうだから、どの部分でも良いことばかりだ」として、前任者との違いを強調している。なお、フーパー自身は、ジョーンズに代表から外されたことを契機として、セヴンズへ転向する意向を示しており、現在もオリンピック出場のために日々奮闘している。

(7)トニー・ブラウンがスプリングボクス入りか?


 前日本代表アタックコーチとして、ジェイミー・ジョセフの躍進を支えてきたトニー・ブラウン、49歳は、ジョセフが退任した後、後任のエディー・ジョーンズ体制には参加せず、現在次の仕事先を探している。そうした中で、ラッシー・エラスムス体制となった南アフリカ・スプリングボクスのアタックコーチ就任の情報が、南アフリカのラポルト紙に掲載された。

 スプリングボクスは、ジャック・ニーナバー前監督がアイルランドのレンスターへ異動したのに加えて、アイルランド人コーチのフェリックス・ジョーンズが、イングランド代表コーチへ異動している。一方、ディフェンスコーチには、元アイルランド代表HOジェリー・フラナリーが就任する方向にあると報道されている。

 ブラウンは、現役時代最後に、南アフリカのシャークスとストーマーズでプレーした経験があるので、南アフリカでコーチをすることに距離感はない。一方、オールブラックス監督のスコット・ロバートソンは、ブラウンの賢く斬新なアタックを評価して、2019年にクルセイダーズのコーチ陣入りを打診したが、ブラウンがジョセフへの忠誠心から断った経緯がある。

 もしブラウンのスプリングボクスのアタックコーチ就任が実現し、ブラウンの考え方がチームに浸透することができれば、FWとキックだけの旧態依然としたスプリングボクスのラグビーに、革命的な変化が起きるかも知れない(もっとも、過去にオールブラックスのようなラグビーを志向したときのスプリグボクスは、いずれも弱体化しただけだったので、ブラウンのようなラグビーは、日本代表やオールブラックス、あるいはワラビーズのようなチームにこそフィットするのかも知れない。)

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