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<ラグビーの閑話休題>2023年7月第二週(大学ラグビー、そして中学生までの普及)

 これまで、noteのマガジンとして、<ラグビー>と<閑話休題>をそれぞれ掲載してきたが、<ラグビー>記事の中で、いつもの試合結果や様々なニュースとは毛色が違った、提言のようなものを思いついたので、それを<ラグビーの閑話休題>として、不定期に掲載することにした。今回はその第一回となる。

1.大学ラグビーあれこれ

 再放送の春の関東大学交流戦帝京対早稲田を、ランチの合間に一部分だけ見た。大差のゲームだったので、80分見ても意味ない一方、この手の試合は、10分くらい見ればだいたいのことがわかる。そして、まるでかつての大学選手権一回戦のような、帝京がボールを持てば簡単にトライを取るのに対して、早稲田がトライを取るのは相手のミスか、自分たちにラッキーにバウンドしたボールが来たときに限られていた。まだ新チームの成長途中とは言え、この実力差ははなはだしい。

 これについて、ある人は十年一日の如く、「リクルートの差」と嘆いているが、リクルート、つまり高校の良い選手が早稲田に入らず、帝京に皆入っているというのであれば、それは的外れだ。もしも高校代表全員が帝京に入っていて、帝京の各学年が皆高校代表と顔ぶれが変わらないのであれば、そうした理屈も一理あるが、実際はいくつかの(決して多くはないが)大学に高校代表選手は散らばっており、早稲田にも毎年複数人が入学している。それは、何よりも「早稲田」というブランドのなせる業で、早稲田のリクルート力が劣っているとは単純に言えない。

 では、なにが違うかと言えば、それはチームとしての指導力・育成力の差というしかない。なぜなら、リクルートは別として、両チームの個々の選手を比較して著しい実力差があるのであれば、帝京出身でない選手がリーグワンのチームに入った後に、すぐに活躍する事例が多くあることの説明にならない。リーグワンに入ってから活躍し出す選手は、大学時代の指導が合っていないかまたは適当ではなかったからだろう。そして、リーグワン各チームの、最先端のラグビー理論を屈指した優れたコーチングによって、もともとあった才能が開花したからだ。

 そうした中で帝京は、伝統校というしがらみがないメリットを最大限に生かして、優れたコーチングを行い、また優れたチーム作りをしているからこそ、勝利と言う結果につながっている。それは選手個々の差からは生じないものだ。例えば、昨年の明治が、BKを中心にしたプレーをしているのに対して、「明治がキャラ変した!」と嘆いている年配者がいるが、明治はラグビーの進化に追いつこうとしているだけであり、それはごく自然なことだ。これに対して、「伝統」、「個性あるチームカラー」、「独自のコーチング」などの旧弊にしがみついて、コーチングとチーム作りを劇的に変化させない限り、帝京のような常に進化していくチームに勝つことはできないのだと思う。

2.中学生までのラグビーと普及の方法

 
 現在の日本では、少子化などを大きな理由として、子供のラグビー人口が激減している。もともとラグビーはマイナースポーツだから、こうした人口減は切実だ。そうした厳しい中でも、日本代表が男女とも世界に伍して戦っているのは、実に立派なことだと思う。
 
 ところで、この若年層のラグビー人口減に対する対策として、私はセヴンズの一般化を提案したい。私が考えるには、15人+リザーブ8人という15人制の人数を揃えるのは、そう簡単ではない。まして、学校単位でチームを作ろうとしたら、これはかなりの難問だ。合同チームという解決策があるではないか、という人もいるだろうが、やはり合同ではチームとして楽しくない。自分たちの学校のみで単独チームを作って試合をしたい。それには、セセヴンズが適当だ。
 
 私は、中学生までは皆セヴンズだけをプレーすれば良いと思う。そして高校生になってから15人制をプレーさせるとともに、セヴンズも継続してプレーさせる。また、本人に15人制かセヴンズかを選択させることも良い。もちろん、掛け持ちもOKだ。部員数が多い高校からは、複数チームでの大会エントリーも許可する。そうした一校から複数チームのエントリーを可能とする大会では、花園のような優勝のみを争うのではなく、多くの試合を経験するためのフレンドリーなレベルと、花園のような熾烈な勝ち抜きを行うものに分けた、複数のレベルを作れば良い。
 
 それから、タックルは高校生からで十分であり、また怪我防止につながる。中学生までは、タックルは危険である他、特に小学生レベルであれば、単純に身体が大きい選手が、スキルとは別の次元で活躍してしまうから、プレーを磨くことにつながらないし、またゲームも面白くない。だから、中学生まではタックルでなく、タッチでゲームを行えば良い。そして、セヴンズをプレーさせる。こうすれば、ラグビーという敷居の高さはかなり低くなる。もちろん、高校からタックルをすることを想定して、特に中学生では基本となる身体つくりは粛々と行っていく。
 
 高校に入ったら、タックルに耐えるレベルの身体つくりを継続しかつ負荷を高くしていく一方、タックルは安全面とスキルの基本からきちんと教える。また、一年生に対する15人制の教育については、各校が個別で指導するのではなく、都道府県ごとに講習会を行うようにする。こうすれば、学校側の負担は相当に軽減されるだろう。
 
 そして、その中で特に優れた選手が見つかったら、リーグワンのチームに練習生として入れる。もし本人が大学進学を希望すれば、大学に行くことも可能とし、また高校や大学のチームでプレーすることも許可するが、リーグワンのチーム事情を優先することとする。こうすれば、早い段階から優れたコーチングを受けられることとなるため、高校・大学の7年間で無為に時間を浪費することはなくなるだろう。また、高校・大学レベルで優れた才能を浪費してしまうことも防げると思う。


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