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<ラグビー>2023シーズン、インターナショナルラグビー関連等(7月第二週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 中世から近世のヨーロッパでは、社交の場は街路や広場だった。その後、フランスではカフェ(コーヒー一杯で何時間でも過ごせた)が人と会う場所になり、イギリスでは、パブがパブリック・ハウスとして、人と人が交流する場所となっていた。しかし、大多数の人たちは、一部屋しかない家で食堂、台所、居間、寝室、仕事場、客室を兼ねた生活をしていた。また、固定式の家具は特別なものであり、ルイ13世の時代の王侯貴族であっても、寝台は組み立て式のものを使っていた。(アリエス『子供の誕生』みすず書房 より)
 
 同じ頃の日本では、長屋の井戸端、茶屋、料亭などが社交の場であったと思う。その後、少し前までの東京では、床屋、商店街(市場)、居酒屋が社交の場になっていた。床屋は世界的な社交の場だったらしく、今の手軽で使いやすい剃刀が登場するまでは、欧米の男性は二日に一回床屋で髭剃りしてもらっていたそうだ。
 
 また、母の話では、戦争中までの長屋では、外出時に鍵をかけたり、子守を依頼したりすることはせず、隣近所に声をかけるだけだったという。プライバシーはないに等しいが、生活水準が同等な者による共同体として、相互扶助が働いていたのだと思う。戦後は、そうした機能が崩壊したため、よく吠えるスピッツを番犬に飼う家が増えた。そして今は、母が一人で暮らす実家でも警備会社と契約しているが、これは防犯対策よりも、一人暮らしの老人対策の部分が大きい。


1.U20世界大会

順位決定トーナメント

10位イタリア26-41フィジー11位
9位アルゼンチン45-20日本12位

5位NZ35-44オーストラリア8位
 日本の滑川レフェリーが担当したが、NZは、13分にレッドカード、23分と73分にそれぞれシンビンを出し、47分間を13人で戦う羽目になった。そのうえ、ハンドリングエラーを多発して、NZらしいゲームにならない。せっかくの泥田でないグランド条件をうまく生かしきれなかった。それでも、前半を27-20とリードし、後半も52分に逆転されるが、56分に同点に追いつくなど、カードさえなければオーストラリアに勝っていたゲームだった。これは、反則負けというしかない結果であり、NZのコーチ陣はU20の育成方法を再考しなければならないのではないか。

6位ジョージア21-40ウェールズ7位

2位アイルランド31-12南アフリカ3位
1位フランス52-31イングランド4位

順位決定戦最終戦組み合わせ

11位決定戦
 イタリア対日本
5位決定戦
 ウェールズ対オーストラリア
9位決定戦
 フィジー対アルゼンチン
3位決定戦
 南アフリカ対イングランド
7位決定戦
 ジョージア対NZ
1位決定戦
 アイルランド対フランス

2.テストマッチ等の結果

アルゼンチン12-41オールブラックス

 オールブラックスは、怪我によりFB/WTBウィル・ジョーダン、CTB/WTBレスター・ファインガアヌクの二人が遠征していない。そのため、WTBマーク・テレアの復帰で、スコッド外となったショーン・スティーヴンソンが再招集されている。また、PRフレッチャー・ニュウウェルの欠場により、テヴィタ・マフィレオ(ハリケーンズ)が追加招集された。

 イアン・フォスター監督は、SOにダミアン・マッケンジーを先発させ、リッチー・モウンガが22番のリザーブになった。また、FBにはボーデン・バレットを先発させ、14番WTBには初キャップとなるエモニ・ナラワを入れた。

 アルゼンチンのマイケル・チェイカ監督は、ほぼベストメンバーを揃え、キャプテンには2番HOフリアン・モントーヤを指名した。16番HOアガスティン・クレヴィイ、22番SOニコラス・サンチェスとベテラン二人をリザーブに入れている。また、マルコス・クレメールが出場停止処分、ファクンド・イーザが怪我のため、NO.8にはロドリゴ・ブルーニを先発させる。

 オールブラックスは、HOダン・コールズのトライを皮切りに、前半だけで5トライを奪い、0-31で圧倒する。後半も12-10とまとめて圧勝した。全7トライ中4トライを9番から15番までのBKで挙げるなど、オールブラックスのラグビーを今が旬のSOダミアン・マッケンジーの好プレーを交えて達成した。一方、14番WTBエモニ・ナラワが期待通りの活躍を見せたのとは対象的に、11番WTBケイリブ・クラークは良いインパクトを残せなかったため、怪我で欠場しているウィル・ジョーダンまたはレスター・ファインガアヌクにポジションを明け渡しそうだ。また、両名の怪我の状態が良くなければ、マーク・テレアあるいはショーン・スティーヴンソンの出番がありそうだ。

南アフリカ43-12オーストラリア

 南アフリカのRWC用セカンドジャージは、正直最悪のデザインだと思う。

 南アフリカのジャック・ニーナバー監督は、共同キャプテンに、NO.8デュアン・ファルミューレンと13番CTBルッカンヨ・アームを指名した。また、元アイルランド代表LOジャン・クラインを試合メンバーに加えた。クラインは、南アフリカ生まれであることに加えて、2019年にアイルランド代表でプレーした後の三年間に代表でプレーしていないため、WRの規定に従って今回南アフリカ代表入りとなった。

 また、SOマニー・リボック、6番FLマルコ・フォンスタッデンの二人が初先発となる。なお南アフリカは、オールブラックスとの対戦に備えて、LOエベン・エツベス、WTBチェスリン・コルベなど14人の選手を先にNZに向かわせている。

 オーストラリアのエディー・ジョーンズ監督は、フィジカルに強い選手を好むため、デイヴ・レニー前監督の信頼が厚かったユーティリティーFWのジェド・ホロウェイを外し、初キャップとなるトム・フーパーを6番FLで先発させる。また、リザーブからは、16番ジョーダン・ウエレーゼ、17番PRマット・ギボン、18番PRザーン・ノンゴアー、23番SOカーター・ゴードンが、交代出場すればそれぞれ初キャプとなる。

 SOの先発には、怪我から復帰する大ベテランのクエード・クーパーを起用した。他のBKでは、巨漢WTBマーク・ナワカニタワゼは、リーグから移籍のスリアシ・ヴニヴァルにポジションを取られた形となった。リザーブでは、22番に怪我から復帰途中のサム・ケレヴィが入ったことで、レニー前監督下でCTBとして活躍していたララカイ・フォケティがメンバー外となった。

 前半を17-5で終えた南アフリカは、後半52分と67分にワラビーズにシンビン(HOデイヴィット・ポレキとWTBスリアシ・ヴニヴァル)が出たこともあり、58分と68分にペナルティートライを挙げて圧勝した。また、11番WTBカートリー・アレンゼがハットトリックを記録するなど、ジョーンズ監督から試合前に「ベストチームではない」と見下されたメンバーが、ベストメンバーのワラビーズを圧倒した。

 そして試合後の会見では、南アフリカの記者から試合前の発言を指摘されたジョーンズ監督は、下品なスラングを使って質問した記者を批判するなど、逆ギレ状態となった。これを(shell-shocked:貝の殻のようなショック)と評されている。

 オールブラックス及びスプリングボクスがそれぞれ圧勝したことから、今年の各一試合しか対戦しないザ・ラグビーチャンピオンシップの優勝争いは、来週のNZで行われるオールブラックス対スプリングボクスが、早くも天王山となった。

ジャパンXV6-38オールブラックスXV

 ジャパンXVは、名称こそ違うものの、ほぼそのまま日本代表のメンバーで構成されている。ノンキャップは5人で、5番LOアマト・ファカタヴァ、7番FL福井翔太、14番WTBジョネ・ナイカブラ、17番PRシオネ・ハラシリ、23番WTB長田智希。そして6番FLマイケル・リーチと21番SH流大が、共同キャプテンを担う。

 オールブラックスXVのレオン・マクドナルド監督は、スーパーラグビーパシフィックで活躍した選手を中心にメンバーを選んだ。キャプテンは、オールブラックスのキャップを持つ9番SHブラッド・ウェバーと20番FLビリー・ハーモンが共同する。SOはオールブラックスの次期SOと期待されるスティーヴン・ペロフェタが入り、FBには期待の若手ルーヴェン・ラブが先発する。

 前半こそ、ジャパンXVは6-11と競ったものの、後半に入るとオールブラックスXVに4トライをあっさりと取られて完敗した。蒸し暑い気候がジャパンXVに味方することも期待されたが、オールブラックスXVの方が、前半にフィットネスをセーブし、後半に力勝負をかけてきた辺りを見れば、急増チームとは思えないゲームマネージメントだった。

 全体の印象からすれば、ジャパンXVは前半のディフェンスこそ奮闘し、特に7番FL福井翔太がブレイクダウンで活躍したが、FB松島幸太朗の不調、11番WTBセミシ・マシレワの相変わらずの軽いプレーなどから、思うようにアタックが機能しなかった。また、80分全体を見た印象では、かつてサンウルヴズが、NZのスーパーラグビーチームにやられているようなゲーム内容に近く、点差ほどの実力差は感じられなかったが、個々のスキルがそのまま得点差になった印象が強かった。

 オールブラックスXVでは、6番FLアキラ・イオアネ、13番CTBアレックス・ナンキヴェルの二人が最も活躍していた。しかし得点差につながったのは、SHが単なるキック&パスマシーンではなく、自らランニングできるスキルの差があったことが大きかったように思う。オールブラックスXVのブラッド・ウェバーとフォラウ・ファカタバは、かつてのTJ・ペレナラのような鋭いランニングで得点に結びつけていたが、日本の斎藤直人と流大は、ランニングで勝負していなかった。一昨年のペレナラの活躍は、日本ラグビーに良い刺激を与えたと思うが、今年は、南アフリカのファフ・デクラークから悪い影響を受けてしまったと思う。

 現在、世界トップレベルのSHは、オールブラックスにキャメロン・ロイガードが入ったように、自らランニングでトライを取れる選手を必要としている。日本の伝統的なパスマシーンと南アフリカ伝統のキックマシーンでは、テストマッチレベルでは通用しなくなっている。来週のゲームでは、ランニングでトライを取れる福田健太をSHに起用することで、日本代表のアタックは大きく改善されるのではないか。

(女子のテストマッチ結果)

NZブラックファーンズ52-21カナダ女子代表
オーストラリア・ワラルーズ58-17アメリカ女子代表

 女子代表の世界では、ブラックファーンズ、イングランド女子代表、フランス女子代表がトップ3を形成し、その他のチームとは実力差が大きい状況が継続している。

3.コーチ・選手の移籍、代表スコッド発表等

(1)スチュアート・ホッグが引退


 スコットランド代表FBとして活躍している、スチュアート・ホッグ、31歳は、自らの身体が思うように動かないことを理由に、ただちに引退することを発表した。突然の引退により、スコットランド代表は、RWCに向けてホッグの代役を急遽探さねばならなくなった。

 ホッグは、スコットランドのグラスゴー、イングランドのエクセターでプレーし、それぞれリーグ優勝に貢献した。また、ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズにも、2013年、2017年、2021年の3回選ばれている。スコットランド代表としては、100キャップ、25トライを記録して、スコットランド史上の名選手の一人になっていた。

(2)サム・ケーンが、グランド乱入者に足を引っかけて転ばせる

https://www.rugbypass.com/news/watch-sam-cane-apologises-over-incident-with-pitch-invader/

https://www.nzherald.co.nz/sport/all-blacks-captain-sam-cane-v-pitch-invader-have-your-say/XKVITQKGJNCNDJ6N2LCLNTKHJY/

(上記ヘラルドのサイトには、賛否を問う投票ボタンあり)

 先般、アルゼンチン・メンドーサで開催された、アルゼンチン対オールブラックスのゲームで、試合後に多数の観客がグランドに乱入し、警備員が対応できない状況の中、オールブラックスのキャプテンであるサム・ケーンが、チームでハドルと組んでいるすぐ後ろに走りこんできた乱入者に対して、足を引っかけて転ばせた場面を記録した動画が話題になっている。

 これに対しては、「やりすぎだ」という批判もあるものの、乱入者に対しての必要な制裁行為だとして認める意見が多数ある。ラグビーと言うスポーツが「ジェントルマン」であることを掲げているため、何があっても相手には寛容であるべきという極端な考え方もあるが、アルゼンチンという大衆が興奮しやすい風土の中で、本来厳禁であるグランドに乱入するという違法行為を平然と行っている者に対しては、適切な罰則を与えることが必要ではないか。何よりも違法行為をした者が最大の責任を負うのであり、それに対して軽微な制裁を加えた者を一方的に糾弾・批判することは、倫理的かつ論理的に不当であると考える。


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