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<ラグビー>日本XV対オーストラリアA、明治対立教、帝京対筑波の結果等々

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)
 1920年代というと、アメリカでは、ジャズと禁酒法(下で隠れて飲むこと)と第一次大戦後の空前の繁栄を謳歌した時代だが、この頃に活躍した作家リング・ラードナーを最近読んでいる。本当は原書を入手したかったのだが、古すぎてあまり手に入らない一方、英語が昔の表現なので理解できないところが沢山ある。一方、昔神保町の北沢書店などで購入した翻訳本(古書)があり、これはかなりこなれた良い日本語に訳されている上に、丁寧な解説までついている。

 そのため、とても面白く、楽しく、短編小説作法の勉強を含めて、読ませてもらっている。しかし、ここに出てくるアメリカの若い娘たちは、もちろんラードナー得意の風刺とパロディ表現なのだが、永遠の中二病の原点のような極端な自己中心的な性格で、読んでいて腹が立ってしかたがない。まあ、これは私がよりジジイになった証拠でもあるのだろうが、年齢や性別に関係なく、こんな性格の奴は島流しに処すのが適当だと思う(と言うと、「いつの時代?」というツッコミが妻からあるので、「つい最近」と答えるようにしている。ふふふ)。

1.ウェイン・スミスのラグビー改革案

 ブラックファーンズのディレクターオブラグビー(総監督相当)のウェイン・スミスが、
What 'frustrates' Wayne Smith the most and the law he would change
(ウェイン・スミスがもっともストレスを感じ、またルール変更すべきもの)と題して、現状のラグビーが抱える問題点と改革案を述べている。

 全文を訳すのは大変なので、ポイントだけ記載するが、改革案は二つあり、一つ目はスクラムの組み直しを一回だけに限定し、かつ反則はPKとせずFKにすること。二つ目は、タックルをボールより下に限定することによって、ボールリサイクルが多くなるため、ラックが減少して観客がより楽しめるということだった。

 スクラムの組み直しは、現在のゲームで頻繁にある一方、他のプレー時間を減少させている。さらに、スクラムの反則からタッチキック、さらにスクラムで反則をもらってゴール前にタッチキック、ラインアウトからのモールにBKまで参加してトライ、というプレーはラグビー本来の面白さをスポイルしていると、スミスは見ている。また、ラックは選手にとっても怪我の危険性が高いものである一方、観客も見ていて楽しくないプレーだ。一方タックルをボールより下に限定することによって、ボールが多くつながるようになり、サポートする選手がボールを持って走れるチャンスを増やしたい、ということだった。

 スミスの他にもオーストラリア協会関係者は、モールに参加できるのはFWに限定する、レフェリーは5秒以上プレーを遅らせることを認めないなどの提案もしているので、今後ラグビーは、現在のフィジカルバトル(またはアームレッスル=腕相撲)が大きな割合を占める状態から、本来のボールゲームとしての面白さに回帰していくことを期待している。またそうしなければ、オーストラリア、アメリカ、日本などのように、他のエンターテイメントとして優れている各種プロスポーツと観客を奪い合う国では、ラグビーをプロスポーツとして経営していくことは難しいと思う。

2.日本XV22-34オーストラリアA

 LOダーシー・スワインは、オーストラリアAのメンバーだが、先のオールブラックス戦でオールブラックスのCTBクイン・ツパエアに対して、マイボールのラックからはがす際に相手の膝を故意に折り曲げて9ヶ月に及ぶ怪我をさせたことが、今大きな話題になっている。試合ではシンビンのみの処分だったが、その後の裁定委員会で11月6日までの出場停止処分となったが、もっと重い処分を科すべきだとの意見が、ラグビー関係者からも出ている。

 たしかにラグビー精神をスポイルするばかりでなく、ラグビーをプレーする子供たちへの悪影響も心配されるが、一方的に当事者を断罪させてこと終わりとする考え方には同意できない。こうした反則・事故を防止するためにはどうするべきかという、もっとラグビー全体を考えた議論をしなければ、ラグビーと言うスポーツは進化しないと思う。そこで、上述のウェイン・スミスの提言は良い参考になると思っている。

 オーストラリアA監督のジェイソン・ギルモアが選んだメンバーは、皆スーパーラグビーパシフィック参加チーム所属の選手となっている。一方、11番WTBフィリポ・ダウグヌと14番WTBスリアシ・ヴニヴァル、23番WTBマーク・ナワカニタワゼらは、いずれもフィジカルに長けた決定力ある選手なので、トイメンとなるジャパンXVは苦労しそうだ。

 ジャパンXVのジェイミー・ジョセフ監督は、SOに中尾隼太を起用するなど、若手を積極的に起用して経験を積ませようとしている一方、李承信と山沢拓也の2人が怪我をしていることが影響しているのだが、だからといってベテランの田村優を起用する考えはないようだ。

 メンバーには、先発15人よりも、リザーブに良い選手を多く入れている。19番LOワーナー・ディアンズ、20番FL姫野和樹、22番BK松島幸太朗らだ。なおSOのリザーブがいないため、FB山中亮平がカバーするものと思われる。

 ほぼ秩父宮は満員。とても良い風景だ。また、日本代表の指導陣、ジェイミー・ジョセフ(マネージメント)、トニー・ブラウン(アタック)、ディフェンス担当のジョン・ミッチェルらがTVに映る。かなり良い人材が代表チームを指導していることを実感する。ジョセフの次は、おそらく日本ラグビーを熟知しているブラウンが適任ではないか?または、ロビー・ディーンズにも期待したい。

 オーストラリアAのジャージの胸に、キャドベリーのロゴがあって、懐かしくなった。チョコレートなどスイーツ製造の会社で、NZだけでなく、インド、マレーシア、ヨルダン、ルーマニアなどの海外で良く購入していた。

 テストマッチではないのに、ナショナルアンセムはちょっと違和感あり。この規定ってあるのだろうか?準代表ということで、判断したということかも知れない。

以下試合経過と感想です。

1分、日本の10番SO中尾隼太がPG、3-0。
4分、オーストラリアの9番SHライアン・ロナーガン(ロネガンと表記されていますが、私のこだわりでこの表記にしています)がPG、3-3。
15分まで、お互いに陣地を取るキック合戦が目立つ。一方、日本のアタックチャンスが少ないのが気がかり。
17分、オーストラリアのSHロナーガンがPG、3-6。
22分、日本の中尾がPG、6-6。
30分まで、日本は2回トライチャンスがあったが、いずれも仕留めきれず。中尾のディフェンス、NO8.マイケル・リーチ、19番LOワーナー・ディアンズ、13番CTBディラン・ライリー、15番FB山中亮平らのプレーが良い。また、モールディフェンスは安定しており、スクラムはなんとか計算できている。
36分、日本の中尾がPG、9-6。
最後にオーストラリアにゴール前に攻め込まれるが、6番FL下川甲嗣がブレイクダウンでターンオーバーして終えられる。
前半、日本9(3P)-オーストラリア6(2P)。ほぼイーブンの展開。後半に期待。

44分、日本が、右中間25mスクラムから左展開。9番SH斎藤直人→SO中尾→FB山中→13番CTBライリー→11番WTBシオサイア・フィフィタとつないで、左スミにトライ。セットプレーからの非常に良いトライだった。中尾のコンバージョン失敗で、14-6。
47分、オーストラリアが、左中間ゴール前ラックから左へ攻め、SHロナーガン→14番WTBスリアシ・ヴニヴァルとつないで左スミにトライ。SHロナーガンのコンバージョン成功で、14-13。
51分、日本が、中央22mラックから、アドバンテージを受けてSO中尾が右へショートパント。これを味方がキャッチしてサポートしたFB山中につなぎ、そのまま左中間インゴールに入るが、TMOの結果ノッコンが確認されてノートライ。
52分、日本の中尾がPG、17-13。ちょっと消極的に思えたが、(テストマッチではないが、それに匹敵するような)シビアなゲームであれば、こんなものか。
54分、日本が、キックオフレシーブからのカウンターで、11番WTBフィフィタが左サイドを抜け、その後のポイントから右展開。最後は12番CTB中野将伍がディフェンスを引き付けて22番WTB松島幸太朗をフリーにするパスをして右スミにトライ。中尾のコンバージョン失敗で、22-13。フィフィタの力強さと松島の走力が存分に発揮された良いトライだった。
57分、オーストラリアが、中央22mラックから左展開。SHロナーガン→2番HOラクラン・ロナーガンでラインブレイクし、サポートした20番FLブラッド・ウィルキンが中央にトライ。SHロナーガンのコンバージョン成功で、22-20。
59分、オーストラリアが、左45mラインアウトから右展開。10番SOベン・ドナルドソンがパスダミーで抜け、キック。これを取った23番WTBマーク・ナワカニタワゼが左中間にトライ。SHロナーガンのコンバージョン成功で、22-27とオーストラリアが逆転。
62分、日本の中尾が中央35mのPG失敗。これが、この後の試合の流れに影響したように思う。
70分まで、日本のセットプレーが安定しなくなってくる。また、ハンドリングを筆頭にしたミスが多くなり、流れを取り戻せない。
72分、オーストラリアが、左中間30mラックから左タッチライン際を、23番WTBナワカニタワゼが小刻みにステップを踏んでディフェンスを抜け、左スミにトライ。10番SOドナルドソンのコンバージョン成功で、22-34。
後半、日本13(2T1P)-オーストラリア28(4T4C)。
合計、日本22(2T4P)-オーストラリア34(4T4C2P)。

 後半途中まで、日本は拮抗した良い試合をしたが、その後自滅するミスが多くなって、流れをオーストラリアに渡してしまい、最後に勝負を付けられてしまった。しかし、実力差はあまりないように見えるし、またラインディフェンスやブレイクダウンでも良い戦いをしている。さらに、フィフィタや松島のトライに見られるように、きれいにつながったトライを取っているので、残る2戦で勝利を得ることは難しくないと思われる。

 個々の選手では、NO.8のマイケル・リーチがあらゆる局面で奮闘していた。BKではFB(途中からSO)の山中亮平が大ベテランとは思えないフィットネスの高い良いプレーを見せていた。抜擢されたSO中尾隼太とFL下川甲嗣も良くやっていたので、代表スコッドの質を上げるのに大きく貢献したと思う。

3.明治88-0立教、帝京45-20筑波

 
 せっかく家から近い江戸川陸上競技場でのゲームだが、未だに新型コロナウイルス感染防止云々の人数制限とか、満席にならない観客数なのに、事前の予約が必要とか、とにかく気軽に感染できない多くの障害の数々がありすぎるため、スタンドでの観戦は止めて、家でぬくぬくとTV中継を見た。

 TV中継の良い点は、スタンドからは良く見えない細かい部分をアップにしてくれることだが、大学レベルのゲームでは、そうした細かいところの面白さはあまりないわけで、全体を見たいなと思いつつ、スタンドではたしか禁止されているビール(泡盛)でも飲みながら、のんびり視聴した次第。当事者でないというのは、実に呑気なものです(立教の選手が脳震盪で退場したとき、家内は「お母さん、心配だろうね」と選手の母親視点になっていたのに、愚息の高校ラグビー時代を思い出した)。

(1)明治88-0立教

 立教には申し訳ないが、明治が何点取るか、どういう内容のゲームをするか、調子の良い選手はいるかを見るのがテーマになってしまうような、かなり実力差がある対戦だった。そうした中で明治は、14トライ9コンバージョンを記録した一方、立教に2~3回あったトライチャンスをノートライに抑えたので、明治としての最大の成果はディフェンスということかも知れない。

 ただし、リザーブ全員が交代した最後の81~82分は、気の緩みというか、立教のこの日絶好調かつ孤軍奮闘の15番安藤君にかき回されたし、またスクラムをターンオーバーされるなど、すべてが万歳という終わり方ではなかったが、これも次戦以降の良い教訓になると思う。

 明治では、キャプテンのWTB石田君が怪我をしたようで、ちょっと気がかりだが、彼は将来のセブンズのみならず15人制でも日本代表として活躍できる良い人材なので、大切に育成して欲しい。他の選手では、7番FL福田君、10番SO伊藤君、12番CTB廣瀬君、15番FB安田君らの活躍が目立ったが、今後の上位チームとの対戦でその真価を見極められることになるだろう。

(2)帝京45-20筑波

 ある程度得点が競った良いゲームになることが期待されたが、前半の帝京は故意にスローペースにしたのか、筑波のN0.8谷山君を筆頭にした奮闘に圧倒され、なんと12-17とリードされて折り返した。しかも前半が得点しやすい風上だったので、風下になる後半は苦戦することが予想された。

 ところが、リザーブから入った選手や6番青木君、7番奥井君の両FLを筆頭にしたFWの巻き返しとスクラムなどのセットピースでの圧倒、さらにBKを加えたオフロードパスの連続で、次々とトライを重ねる。後半は筑波に1PGの3点しか与えない一方、52分に24-20と逆転してからあっという間に突き放し、後半だけで5トライを重ねて圧勝した。

 筑波は、ノーサイド直前の82~84分に2回のトライチャンスがあったが、既に前半に消耗してしまったフィットネスの影響もあり、帝京の自信あふれるディフェンスに容易にノートライに抑えられてしまった。今日の敗戦が次につながることを期待したい。

 この日の帝京としては、最後に圧勝すれば良いということなのだろうが、こうした競馬の「ゴール前追い込み」みたいな試合運びが、今後上位チームと当たる後半戦にどういう影響が出るのかが、ちょっと興味深い。まあ、その時は「先行差し」に変わっているのだろうけど。

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