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<ラグビー>日本XV対オーストラリアA第2戦、女子RWCプールマッチ日本対カナダ、オーストラリア対NZの結果から

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)
『Classic Rugby Clangers(ラグビーのどたばた物語)』という本があって、2003年にロンドンで出版されている。シンガポールの紀伊国屋書店で昔買ったもので、最近になって読みだしている。

クラシック・ラグビー・クランジャーズ

 内容は、ラグビーの面白いエピソードを、1871年から2002年の間から75話ピックアップして、各話を2~3ページの短文にまとめているもので、ラグビー好きな人に対するジョークや新聞などの軽いコラムにぴったりのものばかりだ。

 その中で、ちょっと面白かったものを簡単に紹介したい。それは、いずれもラグビーのテストマッチ(国対国の国際試合)でプレーするチャンスを、様々な理由で取りそこなった選手たちのものだ。

 1911年、フランスのガストン・ヴァレイユは、パリで行われるスコットランドとの試合に出場予定だった。ところが彼は試合時間に遅れてしまってプレーできなかった。しかし面白いことに、スタンドで観戦していたフランスの陸上短距離選手アンドレ・フランクエンネルが、ヴァレイユの代わりにWTBをプレーして、フランスは16-15で勝利した。肝心のヴァレイユはどこにいたかと言うと、パリに向かう途中、乗っている列車の停車駅でサンドウィッチを買ったが、購入に時間がかかってしまい乗り遅れてしまったのだった。この事件のせいか、ヴァレイユはとうとうキャップを得られなかったが、フランクエンネルはさらに2キャップを得たそうだ。

 他にも1914年、ベルファストでウェールズと対戦したアイルランドのディッキー・ロイドは、普段やらないゲーム前のウォームアップのランニングをやって怪我をしてしまい、初キャップを逃した。しかし、その後プレーして通算19キャップを獲得できた。1969年、フランスとスコットランドが対戦したとき、ジャンピエール・サルーは、ゲーム開始のためにグランドに入る直前にある階段で転んでしまい、足首を骨折して初キャップを逃した。幸い彼は、その後キャップを得る機会を得た。

 1890年のウェールズ代表になったトム・イングランドは、怪我のため最後まで一試合もテストマッチでプレーできなかった。彼の代役でプレーしたビリー・バンクロフトは、このチャンスを生かして、通算33キャップを得た。1937年のアイルランド代表となったチャールズ・アンダーソン、ハリー・エドワーズ、トム・ストーンの3人は、ダブリンのウェールズ戦で初キャップを得る予定だったが、試合が濃霧のため延期になってしまい、初キャップを逃した。残念ながら、その後この3人が代表に選ばれることはなかった(たぶん、第二次世界大戦勃発が関係していると思う)。
 
 人生、ラグビーだけじゃないから、この人たちには、きっとラグビー以外のことで良いことがあったと信じたい。

1.日本XV21-22オーストラリアA

オーストラリアAのジェイソン・ギルモア監督は、次のワラビーズ育成を考慮して、先発及びリザーブなど数人をローテーションした。先発では、10番SOのテイン・エドメッド、11番WTBディラン・ピーチ(セヴンズの選手)が注目される。FWでは、3番PRポーン・ファウマウシリ、7番FLブラッド・ウィルキンが先発に入っており、いずれも活躍が期待されている。

 リザーブでは、16番HOリッチー・アシアタ、19番LOセル・ウル、20番FLロリー・スコット、21番SHテディ・ウィルソンがそれぞれ入っており、良いプレーで最終第3戦の先発入りをアピールしたい。

 日本XVのジェイミー・ジョセフ監督は、先週のメンバーからローテーションしてきたが、怪我人を除けば、今週のメンバーがそのまま日本代表になる可能性が高いと思われる。注目されるのは、SO李承信、12番CTB中村亮土、19番LO小瀧尚弘らの復帰組と、SOのリザーブが先週に続いて不在となるため、FB山中亮平が後半SOに入ったときのプレーぶりだ。

 好天のラグビー日和。福岡のスタンドは約7割の入り。テストマッチ以外では、国歌斉唱は許されていないかのように揶揄する人がいるが、セヴンズワールドシリーズ各大会決勝ではちゃんと国歌斉唱をするし、昔日本で開催されたU20世界大会決勝(NZ対イングランド)でも普通に国歌斉唱をしていた。国を誇りに思う愛国心の発露である国歌斉唱を、意味なく(政治的な理由で)否定する必要はないと考える。

1分、日本が、左中間ゴール前15mラックから右展開。12番CTB中村亮土が、ディフェンスを引き付けてから右外の14番WTB松島幸太朗にパス。そのまま抜けて右スミにトライ。10番SO李承信のコンバージョン失敗で、5-0。
8分、日本SO李がPG、8-0。
10分、オーストラリア9番SHライアン・ロナーガン(日本ではロネガンと表記)がPG、8-3。
この後、お互いに攻めながら、得点まで至らない攻防が続く。特にオーストラリア側に「らしくない」イージーミスが目立つ。
30分、オーストラリアが、左中間35mラックから左展開。15番FBジョック・キャンベルが、パスダミーで抜けて走り切り、左スミにトライ。SHロナーガンのコンバージョン成功で、8-10。
33分、オーストラリアSHロナーガンがPG失敗。
38分、日本が、相手陣ゴール前に12番CTB中村が良いショートキックをするが、15番FB山中亮平がキックオフサイドをしていてトライチャンスを逃す。

前半、日本8(1T1P)-オーストラリア10(1T1C1P)。
オーストラリアはメンバー交代したこともあり、パスミスなどのイージーミスが目立つ。日本は相手のミスにつけ込みたいが、アタックを継続できない。

43分、オーストラリアが、自陣右中間10mラインのラックから左展開。11番WTBディラン・ピーチと23番FBトム・バンクスの間で、左タッチライン際をパス交換しながら前進して、最後は23番バンクスが左中間にトライ。SHロナーガンのコンバージョン失敗で、8-15。
51分、日本SO李がPG、11-15。テストマッチ相当のゲームだから、PGは常道だが、流れから考えれば、トライを狙っても良かったように思うが・・・。
61分、日本が、NO.8マイケル・リーチがPKから右中間ゴールラインに突進してラック、続けてできたラックからリーチが左に持ち出して、右中間にトライ。リーチが自ら仕掛け、自らタッチダウンした獅子奮迅のトライ。SO李のコンバージョン成功で、18-15と日本が逆転。
65分、日本SO李がPG、21-15。6点差は安全圏ではないが、この時間帯でリードしているのは大きい。
79分、オーストラリアが、日本の連続したPKからゴール前5mのラインアウトを繰り返す。そこからモールを作って押し込み、16番HOリッチー・アシアタが左中間にトライ。これで、21-20と1点差。コンバージョンが外れれば日本の勝利だったが、SOテイン・エドメッドがコンバージョンを決めて、21-22と再逆転してノーサイドになった。

後半、日本13(1T1C2P)-オーストラリア12(2T1C)
合計、日本21(2T1C3P)-オーストラリア22(3T2C1P)

 勝てる試合を落とした感が強い。単純に難しい位置からだったが、コンバージョンを決めていれば勝っていた他、勝負所で踏ん張れなかったという印象が残る。その中で、NO.8マイケル・リーチが、文字通りの獅子奮迅の大活躍をして、まだまだ日本ラグビーの大黒柱であることを証明した。他の選手では、7番FL姫野和樹、12番CTB中村亮土、14番WTB松島幸太朗が、いずれも2019年RWCでの活躍を彷彿させる信頼できるプレーをしており、2023年RWCに向けて中心選手となることを確信させた。

 来週14日には、3連戦の最後の試合が予定されているが、第1戦及び第2戦からのベストメンバーを選んで、マストウィンで戦ってもらいたい。

2.女子RWCプールマッチ 日本5-41カナダ

 女子日本代表監督のレスリー・マッケンジーは元カナダ代表なので、母国代表とRWC初戦を戦うことになる。日本は、RWCに向けた練習試合で、NZブラックファーンズに手も足も出ない完敗だったので、ブラックファーンズ以上のフィジカルが強いカナダに、どこまで迫れるかと言うのが実情だと思われる。

 NZワンガレイの牧歌的な、そしてかつてのアマチュア時代を思わせるようなスタンド風景。ラグビーの原点のように思える。

1分、カナダが、日本陣22m付近に蹴りこみ、これを日本が蹴り返すところを、13番CTBサラ・カルジュヴィがチャージ。これを拾った11番WTBペイジ・ファリーズがトライ。9番SHブリアンナ・ミラーのコンバージョン失敗で、0-5。まるでラグビーを知らない素人が経験豊富なチームと対戦したような、あまりにも簡単に取られたトライ。先が思いやられる。
5分、日本が、ゴール前ラックからのピック&ゴーを執拗に繰り返し、最後は5番LO高野眞希がトライ。10番SO大塚朱紗のコンバージョン失敗で、5-5。
12分まで、日本はスクラムをきちんと組めず、そのうちに押されていってペナルティーを取られる嫌な展開が続く。
13分、カナダが、右ゴール前5mラインアウトからモールを押し切って、2番HOエミリー・ツットシがトライ。SHミラーのコンバージョン成功で、5-12。
23分、カナダが、日本陣右中間22mラックでターンオーバーし、SHミラーがパスダミーで抜けてトライ。ミラーのコンバージョン失敗で、5-17。
28分、カナダが、左ゴール前10mラインアウトからモールを押し切って、HOツットシがトライ。NO.8ソフィー・デグードのコンバージョン失敗で、5-22。
33分まで、日本はアタックのチャンスがあっても、パスミスが多く自滅する展開。
34分、カナダが、左ゴール前15mラインアウトからモール。SHミラーが左に持ち出してトライ。NO.8デグルードのコンバージョン失敗で、5-27。

前半、日本5(1T)-カナダ27(5T1C)。
前半で、既に勝負が決まってしまった。セットプレーやブレイクダウン、さらにキック処理で負けた上に、反則を繰り返しては勝つことは難しい。

49分、カナダが、右中間ゴール前ラックからピック&ゴーで、HOツットシがハットトリック(3つ目)のトライ。NO.8デグルードのコンバージョン成功で、5-34。
64分まで、日本のグランドに転がるイーブンボールへのセービングが、一歩も二歩も遅いため、せっかくのチャンスを継続できない。これはスキル云々ではなく、気持ちの面が大きいと思う。
65分、カナダが、右中間ゴール前ラックからピック&ゴーで、17番PRミキエラ・ネルソンがトライ。デグルードのコンバージョン成功で、5-41。

後半、日本0-カナダ14(2T2C)
合計、日本5(1T)-カナダ41(7T3C)

 正直、このカナダは、フィジカル以外はまったく強くない上に、パスミスなどが多い未熟なチームだ。個々の選手では、SHブリアンナ・ミラー以外は、経験もスキルもない。この試合の前に対戦したアメリカ対イタリアのビデオハイライトと比べればわかるように、このプールでは、イタリア>アメリカ>カナダ>日本の順になる。TVでは、カナダを世界ランク3位と言っていたが、これは実力を反映していない。日本が対戦した南アフリカやアイルランドと同レベルと思うので、決勝トーナメント入りは難しいだろう。なお、ベスト4は、NZブラックファーンズ、オーストラリア・ワラルーズ、フランス、イングランで決まりだと思う。5位以下のチームが付け入るスキはほとんどなさそうだ。

 この程度のチームにも勝てない日本という印象が残る。後半は良く立て直したものの、それでも勝つまでにはまだまだ時間がかかることを実感させた。6番FL齊藤聖奈と15番FB松田凛日以外は、ほとんどラグビーになっていない。斎藤が、6番FL→NO.8→HOと後半にポジションを代えて80分間プレーしたが、斎藤がそういうプレーをしなければならないことが、そのまま日本の弱点になっている。

 齊藤のベストポジションはHOと思うので(男子の堀江翔太と同じ!)、日本代表強化のためには、両LO、NO.8、13番CTB、11番WTBにフィジカルに長けた外国人を入れたい。そうすれば、ラインアウトとスクラムのマイボールキープ、ディフェンスとブレイクダウンでの安定、キック処理(キャッチと距離の出るキック)とトライを取りきる走力を得られると思う。なお、SHのディフェンスは、個人の努力とFWのカバーしかないと思う。

3.女子RWCプールマッチ オーストラリア・ワラルーズ17-41NZブラックファーンズ

 一時期低迷したブラックファーンズは、イングランドやフランスのフィジカルに負けた頃は、ワラルーズの高いアスリート性にも負けていたが、最近のテストマッチではかつての強さを取り戻して、ワラルーズに完勝している。そのため、ここもブラックファーンズが確実に勝利を得られると思われるが、ワラルーズは女子ラグビー界のトップレベルの一つであるので、楽観視は禁物だ。

 まさに楽観視は禁物ということで、ワラルーズがアスリート性の高いBKを走らせて、28分までに3トライ1コンバージョンで17-0とリードした。しかし、その後ブラックファーンズも落ち着いて反撃を開始。31分、38分とトライを重ね、17-12としたところで前半を終えた。

 後半に入り、ブラックファーンズの猛攻が期待される中、11番WTBポーシャ・ウッドマンが2つ目のトライを挙げた一方(次に3つ目も記録し、ハットトリックを達成)、ワラルーズはPGを失敗するなど流れをつかめない。そうした中、64分に、ワラルーズ11番WTBイヴァニア・ウォンがインターセプト狙いの故意のノッコンでシンビン、さらにキャプテンである7番FLシャノン・ペリーがレッドカード相当のショルダーチャージ(ノーバインドタックル)をして、同時に2人がシンビンになってしまう。

 そのためワラルーズは、64分までの10分間は13人という数的劣勢になってしまい、これをブラックファーンズは的確に突いて2トライ2コンバージョンを挙げ、17-31と引き離す。そして、ワラルーズが15人に戻った後も攻勢を続け、68分、74分と14番WTBツイがトライを重ねて、17-41と最後は完勝した。

 ブラックファーンズとしては、優勝争いのライバルとなるフランスが南アフリカに40-5、イングランドがフィジーに84-19と、それぞれ完勝・圧勝しているので、この試合は負けられないものだったが、とりあえず一歩前進できたと言える。

 ただし、前半にワラルーズのバックスリーに走られたことや、スクラムでターンオーバーされたことなど、これがフランスやイングランド相手では致命傷になりかねないプレーもあったので、智将ウェイン・スミスを中心に修正していくものと思われる。

 最後にご参考まで、WRは今大会の専門ウェブサイトを開設しており、各試合のスタッツを含む結果及びビデオハイライトを、以下のURLで提供している。


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