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<閑話休題>「ペーパー オア バッグ??」

 英語圏の国、とりわけアメリカに住んでいて、もちろん英語に慣れていないこともあるが、その習慣の違いから困惑した言葉の使用例がある。
 
 ある友達は、レストランやカフェで注文した後、ウェイターorウェイトレスから「Anything else?(エニシングエルス?)」と聞かれたことを挙げていた。日本語に直訳すれば「他に何か?」ということで、つまり「注文された以外に何かご用件(例えばトイレはどこですか?などのサービス一般)はありますか?」という決まりきったフレーズだ。
 
 しかしこれは、日本ではあまりない習慣(たまに、「他に何かご用件はありますか?」と聞かれることもあるが、違和感があったりする)であることに加えて、そもそも不慣れな英語で必死に注文した後なので、早口で言われるとよく聞き取れないことも重なって、少しパニックになったりする。そういうわけで、海外で住んだ人がよく使う笑い話のネタにもなっている。
 
 同様に、スーパーのレジ(もちろん有人レジ)で清算を済ませる前に、ちょうどプラスティックバックが有料化された時期でもあったので、「Paper or Bag?(ペーパー オア バッグ?)」と必ず聞かれることがある。「ペーパー」は紙であるとわかるが、バッグがプラスティックバッグ(日本でいうところのポリ袋)とはすぐに理解できずに、「?」という表情をしてしまうことが多い。そうすると、大抵高校生アルバイト風のアフリカ系アメリカ人の女性が、表情に「こんなこともわからないのかよ!まったくアジア人は使えねえーな」というメッセージを前面に出しながら、いかにも面倒くさそうにして、無言で紙袋とポリ袋を指さすのだ。
 
 ここで初めて事の次第を理解した日本人(つまり私)は、いかにも申し訳なさそうに、地球環境に良くないとは知りつつも、日本でポリ袋の利用価値をよく知っているため、「Bag please(バッグ プリーズ)」と小声で伝える。するとそのレジの女性は、やはり「こいつは地球環境のことを知らないボケだな」と言いたげな顔をしつつ、レジの計算にポリ袋代を無言で加算する(もちろん、ポリ袋が有料だという説明は一切しないし、不要と思っている)。でも日本人は、日本のスーパーほど丈夫ではないが、紙袋より丈夫なポリ袋(紙袋だと、特に水分が多い品物を入れるとすぐに破けてしまうことが多い)に買ったものを入れて、「これで買い物ができた」とほっと安心するのだ。

 今は日本でも、マイバッグ持参が普通になってきたので、マイバッグがあれば、海外のスーパーでのこんな与太話は遠い昔話になってしまうことだろう。でも、その際は「I have my bag (アイ ハブ マイ バッグ、マイバッグがあります)」と申告する必要はあるけど。

 そういえば、ヨルダンのアンマンにある、フランス系のスーパーであるカルフールで買い物をした時、まだセルフレジが普及していなかったため、どこのレジもかなり混んでいたことがあった。ところが、なぜか一部のレジだけが異様に空いていたので、急いでそこに並んだところ、スーパーのロゴが入った大きなバッグを安くはない値段で買い求めることが、そのレジで精算するための条件となっていたことを後から知った。

アンマンのカルフールで購入したバッグ

 それで、レジに並ぶ客が少なかったのだが、結局、私と妻は「これから沢山使うことになると思うから」という理由で、そのレジで精算するとともにバッグを買った。私たちの予想どおり、それは例えばクリーニング屋に服を持っているときなど、大きな荷物を入れるのに今でも重宝しているから、やっぱり買って良かったと思っている。(でも、日本のスーパーで使うと、ちょっと浮いている感じは否めない。特にアラビア語表示は、けっこう目立ってしまう。)

注:表題の画像は、ルーマニアのブカレストにある、ドイツ系スーパーマーケットのカーフランドのもの。ルーマニアには、カーフランドの他、フランス系のカルフール、ベルギー系のメガイマージュなどのEU加盟後にできたスーパーマーケットに加えて、郊外の会員制大型専門店メトロ、昔からある各地の市場なども庶民の台所となっていた。

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