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突然片目がつぶれると、くも膜下出血になるよ!😶‍🌫️

くも膜下出血という病気は、40歳から60歳の働き盛りの人に
突然発症する病気で、発症すると約30%ぐらいの人は、今でも
死亡しています。

ご家族の中で働き手がこの病気にかかると、まだ一人立ちしていない
子供たちの人生も変わってしまい、一家全員が不幸に
なってしまいます。

くも膜下出血は多くの場合、前兆がありませんが、今回は唯一の
前兆である動眼神経麻痺について説明したいと思います。

知っておいていただくと、くも膜下出血になる前に治療ができ
後遺症を残さず治癒させることが出来ます。

1)症例

くも膜下出血は、突然発症の激しい頭痛が特徴ですが、
この症例は、頭痛がありませんでした。

くも膜下出血は、通常は突然発症の激しい頭痛を起こすのが
ほとんどですが、この症例は、頭痛ではなく右の瞼(まぶた)が
下がったのです。

このような場合、眼科を受診される人もいるかと思いますが、
瞼が下がるのは神経の病気で、必ず脳神経外科を受診してくださいね。

2)来院時の患者さんの目

右動眼神経のすべての働きが麻痺しています。

1)眼瞼下垂

動眼神経は、上眼瞼を挙上させる神経であり、それが麻痺して上眼瞼が
下がっています。

2)眼球外転

動眼神経は、眼球を内転させる神経でありそれが麻痺すると眼球が
外転(外に寄る)してしまいます。両眼で見ると物が二重に見えて
います。開眼した方の眼だけで見ると、物は3Dではなく2Dにしか
見えないので遠い、近いの判断があいまいになりますから、
自分で車の運転をすることは、事故に繋がることがありますので
来院は救急車でお願いします。

3)瞳孔不同

瞳孔とは、黒い瞳の事です。動眼神経は、光が瞳孔に入ると
瞳孔を小さくする働きがありますが、傷害されると瞳孔が大きく
なったままになってしまうのです。
だから、左右で瞳孔の大きさに差が出て、不同となります。
(画像では、白い丸が左右の瞳孔の大きさを示しています。)
麻痺してる側が大きくなるのです。

瞳孔が大きくなると、光が多く入ってくるためまぶしく感じますが、
眼瞼下垂があり、目がふさがれるためにまぶしいとは訴えません。

3)来院時のCT,MRI,MRA.

CT,MRI,では、くも膜下出血は、起こしていませんでした。

来院時のCT,MRI,では、くも膜下出血は、起こしていませんでした。
くも膜下出血が、起きていないため頭痛が起きなかったのだと
思いました。
しかしMRA(MRによる脳血管撮影)で、右内頚動脈に動脈瘤を
認めましたのでCTによる脳血管撮影(3D-CTA)を続けて
試行しました。

4)3D-CTA

右内頚動脈側面像

CT脳血管撮影(3D-CTA)で見ると右内頚動脈側面像で、MRAで
見られたよりはるかに大きな、形の悪い動脈瘤が認められました。

動脈瘤の切迫破裂と診断して、緊急手術を行う事に決定しました。

5)緊急動脈瘤根治術

動脈瘤が大きいためブースターとして2個のクリップを
使用しています。

手術は、右前頭側頭開頭(右側)から行っています。
前床突起(頭蓋底の骨)の一部を切除しています。動脈瘤の全貌を見せる
ことは、破裂の危険性がありできません。

また、近くにある動眼神経の確認も必要が無いためしていません。
ただ、クリップの先が動眼神経を挟んでいないことは、
クリップ後に確認しています。
(動眼神経をあえて確認しないのは、動眼神経に触れるだけで、
麻痺の治りが遅くなる可能性があるからです。)

手術時間は、約3時間程度です。👨‍🎓

6)術後CT,3D-CTA

術後のCT,3D-CTA

術後1週間目のCT,3D-CTAです。
脳梗塞などの異常は、起きておらず、2個のクリップで動脈瘤も
完全に消失しています。くも膜下出血の危険性は去りました。

7)術後の患者さん。

くも膜下出血は、女性に多い傾向があります。

術後2週間目の患者さんです。動眼神経麻痺は、まだよくなる兆しは
見られていませんが、目以外の症状はなく、早期に社会復帰が
出来ると思います。
(動眼神経麻痺が回復するのには、少なくとも1か月以上は
多くの場合かかります。)

8)動脈瘤で動眼神経麻痺が起きる機序

もう1か所動脈瘤が動眼神経にあたりやすい部位が
あるのですが、今回は内頚動脈瘤でした。

左図の模型で見てもらうと右の内頚動脈のすぐ近くを黄色い動眼神経が
走っています。右図は実際の患者さんです。内頚動脈瘤が大きくなると
右動眼神経にあたってしまって動眼神経麻痺をきたすのです。

破裂する前に急激に膨らんだ(大きくなった)動脈瘤が
動眼神経を圧迫することにより麻痺させていると言う事です。

動眼神経は、切れていなければ必ず回復します。

9)まとめ😶‍🌫️

ほとんどの脳動脈瘤は、破裂する前兆が無く、くも膜下出血に
なってから救急車で運ばれてきます。

唯一起きる前兆が、目がふさがるという症状ですが、極めてこれも
稀な事で、医者も含め多くの人が知りません。

くも膜下出血という病気は、非常に重症化した状態の患者さんを
世界一の名医が手術しても必ずしも良くできません。

それよりも発症する前に見つけて手術すれば、私のような下手くその
脳神経外科医でも良くしてあげることが出来るのです。

脳の病気は、発症する前に予防するのが一番なのです。
(傷ついた脳を回復させる方法がいまだ無いのですから。)

くも膜下出血は、血縁のある2親等以内に多発します。
親、兄弟、子供、にひとりでもくも膜下出血を起こした
人がいる人は、脳ドックの受診をお勧めします。😊

突然のくも膜下出血で、ご家族全体を不幸にしないためにね。😶‍🌫️
また、この情報を知って、ひとりでもくも膜下出血から救われますように。👨‍🎓
                   ありがとう。😊

このひとだれ?  源さんじゃないよ。



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