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突然の後頚部痛は、危険だ。(脳血管障害)

久々に私の多重人格のひとつの側面、脳神経外科医に戻ってきました。
今回は、「突然の後頚部痛 頭痛は、命にかかわる病気が
隠れていますよ。」というお話です。

病名は、「椎骨動脈解離」。頸椎の骨の中を通って脳に動脈血を送る
椎骨動脈が原因は、よくわかっていないのですが、血管壁が剥がれ、
血管が破れるとくも膜下出血。血管が閉塞すると脳梗塞を起こす
やっかいな病気です。

比較的若い中高年に起こり、私たちの地域では、増えてきている
気がしています。私がまだ駆け出しの脳神経外科医であった
30年以上前には、この病気になった患者さんの9割は、死亡して
いました。

最近では、血管内手術の進歩のおかげで、早期に治療ができれば、
9割の患者さんを救う事ができるようになっています。
では、始めましょう!👨‍🎓

1)椎骨動脈解離って何?

「解離」とは、3層でできた動脈壁が剥がれることを言います。
正常の動脈は、血管の内側から内膜 中膜 外膜と3層でできていますが
内膜と中膜の間で剥がれると、血管が細くなったり、閉塞するため
脳梗塞の原因となります。

外膜と中膜の間で剥がれると、血流が薄い外膜を破り出血を起こします。
だから、くも膜下出血となるのです。

症状としては、意識があれば、後頚部に突き上げるような拍動性の痛みが
起こることが多いのです。動脈解離は突然起こるため、突然の後頚部痛を
軽く考えると命を落とすことになります。

動脈の壁が剥がれることを解離と言います。解離が解消されない限り
後頚部痛が軽快することはありません。

2)症例 50歳男性 後頚部痛で鎮痛薬を飲んでいた。

椎骨動脈解離は、鎮痛薬を飲み始めた頃から
起きていたと思われます。

患者さんは、喫煙20本/日、毎日飲酒。これは、私と変わりがありません。
してはいけないことは、突然の後頚部痛が数日前から起きているにも
関わらず、鎮痛薬を内服して様子をみていたことです。
この時にすでに解離は、始まっていたと推測されます。

みなさんは、頭痛や後頚部痛で病院を訪れ、頭部CT検査を受け
異常が無ければ、鎮痛薬で様子をみることになると思いますが、
命に係わるような、病気は、頭部単純CTでは、見つかりません。

命に係わる頭の病気は、多くが脳血管の病気です。しかも、
血管の病気は、この患者さんのように急変します。だから、
私の病院では、頭痛や後頚部痛の検査は、MRI,MRA検査をすぐに行います。

脳血管の病気は、発症する前や重症化する前に防ぐことが大切なのです。
でも、この当たり前のことがほとんどできていないのが現状ではないかと
思っています。恐ろしい事です。

3)救急搬入時CT

くも膜下腔が出血で白くなっています。
くも膜下出血が起きています。脳室も拡大して急性水頭症です。

CTで、くも膜下腔が白くなっていますから、くも膜下出血が
起きていますね。引き続き、3DーCTA(CT血管撮影)で
脳血管を検査しました。

4)CT血管撮影

右椎骨動脈(赤矢印)に膨らみがあり、解離性椎骨動脈瘤の破裂と
診断は容易です。

右椎骨動脈の一部が、ラグビーボールのように膨らんでいます。この部位が
解離して外膜が破れ出血が起きたのです。

通常の脳動脈瘤は、中膜が欠損していると言われています。でも、
外膜と内膜の2枚の膜で動脈瘤の壁ができているのです。
ところが、解離性動脈瘤はの壁は、外膜1枚でしかない。だから、
極めて再出血を起こしやすいので緊急で、再破裂の予防をしないと
助かりません。そこで、緊急血管内手術を行います。

5)解離性動脈瘤の治療とは?

カテーテルを送り込み、そこからコイルを出して
破裂部位を閉塞させるのが治療です。
破裂部位にカテーテルを挿入しコイルで破裂部位を閉塞してしまいます。

破裂部位をコイルで閉塞させると脳梗塞が起きると思われるかも
しれませんね。でも椎骨動脈は、左右2本ありそれが合流しているので
1本を閉塞してももう1本が流れていれば、脳底動脈の血流は
保たれ、脳梗塞を起こす心配はありません。

解離性椎骨動脈瘤の再破裂を防ぐ手段として、
血管内手術ができるようになり、この病気の救命率が格段に
良くなったのです。

6)脳血管攣縮予防と急性水頭症に対する処置

コイル塞栓術(コイルで血管を閉塞する事)が終わったら、
急性水頭症(頭の中に髄液が溜まり、脳圧が亢進する)に対して
脳室ドレナージと腰椎ドレナージをします。

ドレナージというのは、髄液とくも膜下出血を頭蓋外に排出する事です。
脳圧を下げ、脳血流を良くし、血栓溶解液を循環させ、くも膜下出血を
できるだけ頭蓋外に排出します。

脳血管の周辺に血液があると、血管攣縮といって脳血管が細くなり
血流低下から、脳梗塞を起こすことがあるからです。

約2週間は、血管攣縮から脳梗塞にならないように管理します。

7)大きな後遺症を残さずに社会復帰できた患者さん。

何の後遺症もなく、術前に戻れました。ありがとう。

症状が軽いからと言って病気が軽くない事。
CTでは、命に係わり急変する可能性のある病気を見つけられない事。
突然起こる後頚部痛や頭痛は、脳の血管の病気である可能性が高い事。
速く治療しなければ、手遅れになるのが脳血管障害と言う事。
などを少し知ってもらえたとしたら、幸せです。😁

今日は、部下たちに仕事をさせてもらえず、暇な1日を過ごしました。
「go to 窓際族」としては、エネルギーが余っています。

このエネルギーを使って

帰ったら酒でも飲んで、バイク盗んで走り出そうかと思っています。
ウソです。最高権力者である妻(うちのプーチン)が許してくれません。
ありがとう。😂🤣

😂うちのプーチン.けんかで勝てたことがありません。
彼女が怒れば、子供にも被害が及びます。
そして私は、経済制裁を受けた上に、食事まで止められます。
家では、彼女のいいなりです。



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