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君は米国陸軍の「ACFT」を知っているか?~地上最強の軍隊の体力測定、およびトレーニング法について~

「ACFT」というワードを聞いたことがあるでしょうか。
ARMY COMBAT FITNESS TESTの略称で、直訳すると「陸軍戦闘適性試験」のことです。
おそらくこの地上で最強の軍隊である米国陸軍が開発・導入した、最新式の体力テストです。
2019年に、旧来のAPFTに代わって採用されました。
(ただし、コロナ禍もあってじっさいの運用はもう少し遅れたようです)

米軍によると、この試験を行うことで、戦場におけるパフォーマンスの80%以上を予測できるということです。

戦場での活躍を、高い精度で予測できる体力テスト。
これはワクワクしますね!

ACFTは、全部で6種のテストから構成されます。
体力測定ですが、同時にこれ自体がよく考え抜かれたトレーニングメニューにもなっているのが特徴です。

トレーニングに興味があるあなたなら、どんな内容か気になりませんか?
それでは、さっそく順番に紹介しましょう。

※軍事マニアの方へ注釈です。
冒頭の画像、これは米陸軍ではなく、米空軍のものです。
しかも、「G-1」という革ジャンを着てるとおぼしき兵士もいるので、海軍も映ってるかも知れません。

①デッドリフト(3レップス、ヘックスバー)

筋トレ業界ではおなじみ、デッドリフトです。
「死ぬほどキツイからデッドリフトだ!」なんて俗説もあったりして。

特筆すべきは、

1回ではなくて3回挙上の記録を計測する

のと、通常のストレートシャフトではなく、

ヘックスバーを使用する

点です。

おそらく、本音では最大筋力、つまり1回挙上の記録を見たいのでしょうが…
1RM(最大筋力)の測定は、ケガのリスクが増大するとされています。

また、通常のバーベルでなくヘックスバーを使用するのも、腰椎への負担に配慮した結果だと思われます。

デッドリフトという種目はハムストリングスや臀筋を中心に、下半身や背中の筋肉を複合的に動員する、基礎的かつ重要なバーベル種目なのですが、フォームの習得にある程度の訓練が必要になります。

不適切なフォームで行うと、かんたんに腰をケガをしてしまう種目でもあります。

詳しい説明は省きますが、ヘックスバーで行うことで、腰椎の怪我のリスクを低減できるといわれています。

(ただし、ヘックスバーにたいする批判もあります)

わざわざテスト実施のために全将兵にデッドリフトのフォームを指導するというのは現実的ではないでしょうから、折衷的にヘックスバーを選択したのだと思います。

実際のやり方は、下の動画を参考にしてください。
注意してほしいのは、トレーニングベルトやストラップの使用は認められていません

ちなみに、挙上した重量に応じて点数化されています。

3回挙上につき、

140lb(63.5kg)で60点
200lb(90.7kg)で70点
250lb(113.4kg)で80点
300lb(136kg)で90点
340lb(154kg)で100点満点!

です。

実際は、2点刻みで細かく点数化されています。

これで、兵士の基礎的な筋力、つまりストレングスを測定するようです。

154kgを3回なので、筋トレ好きなら100点を取れる人が多いでしょうね。

②スタンディングパワースロー

いわゆる、「メディシンボール投げ」です。
シンプルに、

10lb(4.54kg)のメディシンボールを、両手で後方に放り投げます。

前方や上方でない点に注意してください。

前方だと力を発揮しづらいし、上方だと記録の計測が困難です。

やり方は以下の動画を参考にしてください。

これも点数化されています。

4.5mで60点
8mで70点
9.5mで80点
11mで90点
12.5mで100点満点!

です。これも、実際は2点刻みになっています。

いわゆるパワー、瞬発力を評価するテストですね。
ジャンプ力やダッシュ力、投擲力などの基礎になる指標です。

筋トレの種目でいうと、クリーンやスナッチなどと同系統の種目です。

これが強い兵士は、いわゆる「バネ」のある身体ということになります。

実をいうと、ACFTが公表された当初はもう少し評価基準が厳しかったのですが、やや緩和されたようです(当初は13.4mで100点でした)。

「厳しすぎる!」という声があったのかもしれません。

③ハンドリリースプッシュアップ

ズバリ「腕立て伏せ」です!

2分間で、何回できるか

を計測します。

米軍ならではの、通常の腕立て伏せとちょっと違う点は、

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