花びら舞い踊る、ドローイングセーター
「こんなに服があるのに、どうして着たい服がひとつもないの?」
誰もがうらやむ夢のようなクローゼットを前にこう言い放っていたのは、私が若かりし頃夢中になって観ていたSATC(セックス・アンド・ザ・シティ)の主人公、キャリー・ブラッドショー。
今何してるのかな?とググってみたら、こんな面白企画があったみたい。SJP変わらないなぁ。
あれはたしか、寒さも深まる2023年11月頃。場所は北フランス。
キャリーの3分の1にも満たないクローゼットを前に、同じようなことをひとりごちていたのがわたくし。編み狂オンナ・ユイじょり。
「こんなにたくさん(自分で編んだ)ニットがあるのに、どうして着たいものがないの?」
・・・理由は簡単。私、生まれも育ちも寒冷地で寒さに慣れっことはいいつつ、めっちゃ寒がりなのである。
それなのに、元来好きなニットの系統というのが:
・ほわーっとした柔らかいモヘア〜な素材だったり(=つまり軽くて薄い見た目に惹かれる)
・モチーフによりところどころ穴が空いていたり(=つまりレースのような透かし模様編みLOVE)
このニットなんて、シルクモヘア(一応2本どり)かつレースモチーフ付きだから、着てるか着てないかわかんないくらいのレベルで。。
これらのニットたち、春まっさかりや夏の名残を感じる初秋くらいの生ぬるい季節にはちょうどいい。
でも、そんな季節がなかなか訪れないここ北フランスにおいては、どうにもなかなか出番がないのが正直なところ。
好きなテイストのものばかり編んでいたため、本格的な冬の到来を前にして、ガッチリ防寒を兼ねるセーターが極太糸で編んだこのダスティピンクのニット1枚しかないのである。
かつ、このニット、分厚すぎてとにかく尋常じゃない嵩張りよう。港町⇔内陸の移動の多い生活なので、荷物が嵩張るのはよろしくないのです。困った、コマッタ。
かくして、嵩張りすぎない、冬用のあたたかいセーターを編む必要に駆られることとなった。
そこで目をつけたのが、ジャカード編みを用いたセーター。
このジャカード(Jacquard)、デザインに応じて2色以上の糸を同時に使って編み込んでいくので、裏面は2重以上の糸が交差するようになる。その結果、見た目のわりにしっかりとした厚みが出るからあったか仕上がりとなるのである。
そうと決まれば、あとはパトロン(編み図)選び。ヒト用のセーターをジャカード編みするのははじめてなので、プロの方のパトロンを買おう。
オーソドックスなノルディック柄もいいけれど、既製品でもありそうだなということで、オリジナリティを追求した結果、日本人のデザイナーさんのこちらのものにチャレンジ!
ブルーも素敵だけど、年末年始だしここはちょいとめでたいモードでパキっと赤&白、いっちゃおうかな?想像するに、レトロな感じで可愛いと思うのよ。
という流れで、糸もがっつり仕入れた。
編みに関しては、フランス語で1から独学を始めたので仏語のパトロンが一番慣れているし、わかりやすく、もっともよく使う。たまに北欧系の方とかイギリスの方の編み図を使うときは英語のパトロンをヒィヒィいいながら仏語翻訳をかけて使っているのだけど、日本語のパトロンを使うのは今回が初めて!
日本に帰国したときに、いくつか編み関連の本を読んでみたりしたのだけど、日本のパトロンって方眼図&記号がメインで本文の説明が限りなく少なくてですね・・・。暗号のように1段ごと編み方を全部書いてくれている仏語版に慣れているとどうにもこうにも。なので母国語なのに苦手意識があるという…泣きたいよ。
でも、このTomomi Kawamotoさんの編み図、仏語以上のアンビリーバボーな丁寧さで、「え、そんなことまでアドバイスしてくれるの?」的なかゆいところに手が届く感じで、素晴らしかった(ニッターの方々、おすすめです)。
往復で編まないといけない部分で、裏編みかつ色替えが少ないところがなかなかの苦行だったなあ・・・。でもそれが終われば、輪編みで全部表で編めるので、複雑度が減る。ガッツポーズ。
ジャカード編みのいいところは、編んでいるときただ肩は凝るし目は疲れるし集中してないと即数え間違えるしで意味わかんないけど、何列か編んで遠目で見るとパッと模様が浮き出てくるところ。わ〜コレコレ〜!と今までの疲れが吹き飛ぶ感じ。
ボイラー故障で暖房が不調だったときも、完全防寒で編む。俺は生ける暖房🐶
デザイン部分は退屈じゃなくていいけど、ノルディック柄と違って規則性がないのが編む側としてはチャレンジング。その分達成感は何倍にも!
最近ずっとトップダウンものばかり編んでいるけど、最後のアッセンブリがないのはもとより、全体の長さのバランスを見ながら仕上げていけるから、パーツごと編んだりボトムアップで編むよりもこちらの方がやっぱり私は好きだなあとしみじみ。
最後に、試着をしながら胴体の長さを決めて、裾部分を閉じて完成。ブロッキングも忘れずに〜!
中に色々着込みたいのと、パンツに合わせて少しダボっと着たくて大きめのサイズで編んだ。穴空いてないし、ぽかぽかで、最高でーす。
ちゃっかり年末年始にも間に合ったので、クリスマスイブのディナーもこちらで参加。
紅白でおめでたい感じで、日本のお正月にもいいんじゃないでしょうかね。
2023年の編み納め、良い編みものをした!🧶
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