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100年先の未来のために。

5月に日本に里帰りしました。めまぐるしく変わり続ける東京。古いものから新しいものへの変換。私の過ごした四半世紀の風景がますます新しい風景となってゆきます。

アメリカに帰る飛行機に乗るために、5月最後の日、高速バスで羽田空港に向かいました。が首都高速道路の橋の入れ替え工事のため、羽田1号線は交通止めになっていました。東京と神奈川をつないで半世紀、首都高速の高速大師橋は多摩川を渡る大動脈、1日8万台の交通量の多い場所は2週間完全に封鎖される大工事が始まりました。
さあ大変。交通渋滞を予測して私は予定より2時間早いバスに乗りました。が、賢い運転手、道を迂回しながら車を走らせて、定刻通りの到着でした。渋滞回避、素晴らしい、ザ日本。

高速大師橋は今、生まれ変わります。100年先の未来のために。(キャッチコピー)
橋の入れ替え工事もスライドによる一括掛け替え( 現在の橋の隣(下流側)に、長さ約300mの新しい橋を組み立て、現在の橋を切り離し移動(上流側)、新しい橋をスライドさせて橋の位置に架け替えます。これにより、現在の橋の撤去と新しい橋の架設という2つの工事を、合わせて2週間という短期間で実施します。)
橋工事自体は続行し、完成は2025年です。日本のインフラ工事は工芸です。そして素晴らしい段取り、ザ日本。

高速道路を迂回したため、見慣れない不思議な光景が広がりました。湾岸沿いの埋め立て地帯にある製油所や化学工場鉄工所、発電所などが立ち並ぶ、川崎浮島を通りました。リドリースコット監督の1982年の名作映画ブレードランナーの冒頭シーンにも使われたあの有名な場所です。40年経った今も、SFの映画の世界に迷い込んだような妖しさと勢いよく燃え上がる炎に引きずられそうになりました。これは作り物ではない現物の不気味さと美しさを意味しますが。。

この高速道路を通りながら、東京滞在中に行ったヘザウィック・スタジオ展・共感する建築を思い出しました。トーマス・ヘザーウィック率いるそのデザイングループは、自然と都市空間を共生させ、過去の建物を再生しながら、人が集う優しい空間を制作しています。それらは、既成概念にとらわれない、人々の好奇心を喚起するような、非常に革新的で斬新な空間です。今年11月には森ビル麻布台ヒルズが完成します。六本木ヒルズの高層ビルから東京を眺めながら、ヘザウィックの視点がどのようにこの場所に生まれ育つかを想像してみました。東京には全然緑がありません。ヘザウィックに緑を増やしてもらいましょうか。

東京の神宮外苑の再開発では樹齢100年の木を含む1000本近い樹木が伐採されるかもしれません。故・坂本龍一氏の音楽が生き続けるのと同じように、彼は外苑の木々を守る為にメッセージを残しました。「木は差別なくすべての人に恩恵を与えるが、開発は一部の既得権益者や富裕層だけに恩恵を与える。そのために、かけがえのない樹木を伐採することは妥当なことなのでしょうか。都市が長い年月をかけて獲得した景観を守り、都市内の自然環境を保全することは、今を生きる私たちの責任ではないでしょうか。」
彼の音楽が永遠に残るように、木々も残っていってほしいです。

地球は有限の複雑系であり、予測不可能な気候変動など、人間の行動によって影響を受けます。私たち人間も、たとえ私たちがいなくなっても100年後、200年後を考える志向や活動が求められます。これからの100年をどうするべきか?私は自問自答します。

私はこの20数年、テキスタイルの芸術と伝統を守ろうとしてきました。イタリアのブルネロ・クチネリを思い浮かてみます。彼がイタリアで始めた小さなカシミヤ染めの会社は、今では職人たちが技術を磨き、精力的に働き、技術を継承し、豊かな生活を送る場となっています。彼が実践して得た経営の成長は次の100年に大きく役立つことでしょう。このように彼のような責任ある仕事をすることが、私自身にとって大切な課題なのだと重々感じてみるのでした。

東京の風景・このテーマをイメージにスカーフを作りました。

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