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【日本一周 九州編2】 飛行機とかいう亜空間転送装置

・貧弱な扇

 福岡空港に到着して、飛行機では座席の離れていた尾道と再会した。すると、「あの大学生のグループほんとうるさかったね」と不満を吐露していた。よもやこれは、あの機内の乗客の共通認識になっていた。


 朝から何も食べずに飛行機に揺られ、気づけばもう13時過ぎになっていた。これはいい加減何かお腹に入れなければ。空港内を奔走し、九州上陸一食目という大役をになったのは吉野家の豚丼であった。

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安くて美味しい。この基準に勝るものよもや他にあらじ。


 豚丼を食べるかたわら、PayPay古参ユーザーの尾道から吉野家でキャンペーンをやっていることを告げられる。思えば、この旅行の1年前から薦められるもなんやかんや手を出してこなかったが、これを機にはじめて見るのもいい。(ペイペイドームのある福岡にいることだし。)そうと決まれば、Wi-Fiのある空港にいるうちにダウンロードしてしまおう。ポチッとな。

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 しかし、福岡空港のWi-Fiの電波は1と2の間をさまよう貧弱なもので、ダウンロードを開始してから5分が経ってもまだ半分しか落とせていなかった。もうすぐ2人とも豚丼を食べ終わってしまう。尾道は「気にしないで」と言ってくれたが、なんとも申し訳ない。


 結局、もう5分ほどかかってようやくダウンロードできた。しかし、ダウンロードしたらすぐ使えるというわけではなく、初期設定やら入金への審査やらですぐにはできそうにない。待ってもらってなんだったが、吉野家の支払いは諦めて現金をつかった。
 九州旅行スタートです。

明石

・形而上的移動

 飛行機は、移動の実感が伴わない乗り物だと思う。車のように、車窓から流れる街並みが見えるわけでもないし、新幹線のように、通過駅をこまめに知らせてくれるわけでもない。飛行機の窓から外の景色が見えるのは、離着陸の時だけで、それ以外の時間は、雲上とかいうスペースを、時速何百キロの速さで滑空する。移動時間の大半を占める、真ん中の部分が超次元すぎて、移動の実感がつかめない。

 そういえば、以前に読んだ、ムジールの『寄宿生テルレスの混乱』でも、「虚数を含む計算式」をテーマに、本質的に似たようなことが書かれていた。本曰く、そういった式は、計算の最初と最後にはきちんとした実数が並べられているのに、途中式を覗いてみると、意味不明の文字や記号をこねくり回して、形而上的な処理が行われている。それはまるで、最初と最後の橋脚しかない吊り橋を渡っているようなものなのに、最終的にはきちんと着地できるのが不気味だ、と。いかにもドイツ文学らしい思考回路はさておき、言いたいことはとても共感できる。

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到着するとビビッドな曼荼羅が出迎えてくれる

 自分が飛行機に抱いた感覚もまさにこの通りで、つまるところ、移動の実感がないから、「今九州にいる」という事実についていけていない状態だ。空港のなかにいる限り、その無機質な景色からは、地域特有の何かを感受できるはずもないので、異郷に来た実感を得るには、屋外に出るのが有効。ということで、早速外に出て、レンタカーを借りようと思ったのだが、その前に空港内の吉野家で腹を満たして、今から始まる長旅に思いを馳せた。

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明石

・メンバー
明石、尾道

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