見出し画像

【日本一周 京都・滋賀編5】 駆け足平等院

・10円玉には収まらない国風文化

 平等院鳳凰堂の最寄り、京阪宇治駅のロータリーに「大人はズルいと思いませんか?」を店名に掲げる食パン屋を発見した。そういえば最近この手の、奇を衒った店名で街行く人の注意を引きつける食パン屋をよく目にする。明石曰く、これらの店は、とあるプロデューサーの手によって数を伸ばしているらしい。とにかく目に留めてもらいたいという一心での広告戦略なのだろうが、食パンの良さをアピールするわけでもないやり方は、広告として不健康である。食パンの味に自信があるのなら、それをアピールすべきであって、真っ向勝負を放棄したああいう看板は、穿った見方をすれば商品への自信のなさの表れとも言えるのではないか。本当に、大人はズルい。

画像1

よく見ると10円玉を持っている


 そんなことを考えているうちに平等院鳳凰堂に到着。窓口で拝観料を収めたのち、鳳凰堂の前まで進んだ。第一に目が行くのは、そのシンメトリカルな構造である。後から聞く話であるが、横長の造りが両羽を広げた鳳凰に見えることから、江戸時代以降「鳳凰堂」の呼称が広まったらしい。せっかくなので誰かにカメラを預けて写真を撮ることにしたが、周囲には外国人の方しかおらず、“Could you take a picture of us?”と尋ねる度胸も持ち合わせなかった我々は、後から来たおばさんにお願いするのであった。10円玉を持っての撮影といういかにも観光客らしい写真を収めたのち、鳳凰堂内陣の見学ツアーに参加した。

画像3

世相を反映している

 内陣中央に鎮座する阿弥陀如来は、荘重な眼差しを対岸に投げかけ、平等院全体を統括する存在に感ぜられる。4割ほど胴体表面の金箔が剥がれ落ちていたが、黒と金のコントラストが却って美しく見えるうえに、平安から続く歴史の厚みを物語るのに一役買っている。その周囲には雲中供養菩薩が配置されているが、ひとつひとつに異なる意匠が施されており、それ単体でも十分見学する価値のあるものだ。実は私、この日本巡行企画において「日本史の教科書・資料集に載る建築や仏像を見学する」という目標を密かに掲げているのだが、1コマ進めた形となる。

 ところで、我々が内陣を見学する間、対岸の参拝客はどう思っていたのだろうか。折角ならば人が写りこまない写真を撮りたいだろうに、内陣という主要点に我々がウロチョロしているのである。もっとも我々は追加で300円支払った太客なので、文句を言われる筋合いはないが。

画像3

撮影禁止エリアが大半なので、この画像を”箸休め”代わりとさせてくれ

 内陣見学を終えると鳳翔館の見学に移る。タイトな行動スケジュールを組んだ影響で、じっくり見学することは許されない状況にあったが、その中でも要点のみをつまみ食いすることで充実した時間となった。館内には26体の雲中供養菩薩が展示されている。もとは内陣に配置されていたものを半分移動させたのである。銅鑼を持つもの、琵琶をもつもの、雲に立つもの、座るもの。各々が異なる恰好を取り、今にも動き出すのではないかという躍動感があった。以上で1時間の見学が終了。終始駆け足だったけど、密度の高い時間だった。

・メンバー
明石、尾道

次の記事はこちら↓


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?