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【日本一周 京都・滋賀編32】 国道沿いの寂寥

・TRANZITで時間が溶ける

 瀬田駅前の餃子の王将に入る。駅前のゴミゴミした感じが関東っぽくて、旅の終わりを感じた(歓楽街に西も東もないのかもしれないけれど)。炒飯と餃子をシェアして、夕飯とする。炒飯についてきた葱のスープが冬の体に染みることよ。

王道コンビ

 あとはバスの時間までを快適に過ごす拠点を確保すべく、大津温泉 おふろcafé びわこ座まで歩くのみ。と思っていたら、これが瀬田駅から結構遠い。夜の国道沿いを棒になった足でひょこひょこ歩き、虚無の鼻先が見え隠れしたあたりでやっと到着した。フロントの灯があたたかい。。。

 露天風呂ですっかり癒されたあとは、浴槽の脇に据えられた石盤でオセロに興じた。いくら温泉であたたまったとは言え、2月の夜に素っ裸で外気に当たるのは体にこたえる。けれども、白熱した戦いに自ら水を刺すわけにもいかず、寒さに震えながら試合を続けた。


 結果は大勝利!お風呂でやるボードゲームは特別感があり、旅情も手伝ってとてつもなく楽しい。また、機会があったら巡行中にやりたいな。

 入浴後は「おこもりラウンジ」というカプセルホテルみたいな個室でTRANZITを読み漁った。コロナということで国外の取材ができない代わりに、日本国内の「青」に関するスポットが特集されていて、日本巡行を遂行する僕にとってはうってつけの内容だった。中でも、沖縄本島以西に位置する慶良間諸島の雰囲気がたまらず、一部のサラリーマンがある日突然離島に移住してしまう気持ちを理解してしまった。その後に読んだネパールのカトマンズの特集や中国の際限ない麺や餃子の記事にも心を鷲掴みにされてしまい、結局バス停へと出発する23:30まで一睡もすることができなかった。睡眠はバスまでお預けだぁ。

明石

・国道沿いの寂寥 

 帰りの夜行バスまで、まだ数時間残っていた。計画していたスポットをすべて見終え、疲労もピークに達した我々は、「適当なところで腹ごしらえを済ませてネカフェにでも籠ろうか」と残り時間をなるべく楽に過ごす策をあれこれ思案した。

 その結果、バスの出発地、南草津駅のひとつ手前瀬田駅で下車し、国道1号線沿いを歩いたところに位置する「お風呂caféびわこ座」で時間をつぶすという最高の案にまとまった。

 瀬田駅に到着。ひとまず空っぽになった胃袋に飯を補給しないと、お風呂caféまで歩くことさえままならなかったため、ロータリーの「餃子の王将」に駆け込んだ。尋常じゃないくらい空腹だった我々には、どのメニューもたいそう魅力的に映ったが、その中でも一際目を引いたのが、チャーハンと餃子だった。ベーシックに勝るものはない。

 チャーハンに先行して届いたセットのスープが満身創痍の体に染みた。それと同時に、料理のおいしさを決めるのは、味以前に、その時の疲労度と空腹度であることを再確認した。熱々のチャーハンと餃子を無心でかっ食らいながら、「間違いない」と心でうなずく。大衆飯サイコー。ごちそうさまでした。

 2月の寒空のなか、お風呂caféを求めて国道沿いを1.5km進むのだが、なぜだかこれがすごく寂しかった。国道沿いの店はどこも車での来店を想定しているため、車内からでも十分目立つように、巨大な看板や派手な電飾を設けている。これらが直線上に果てしなく無数に並ぶわけだが、そんな光景を見ていると、徒歩でこの道を進む自分が、何からも相手にされていないように思えた。くわえて、真横を猛スピードで追い抜くトラックの轟音なんかも、自分が招かれざる存在であることを声高に宣告しているようで、えも言われぬ恐怖心と孤独感を煽られるのだった。


 そうこうしているうちに、暗闇のなかに佇む「びわこ座」と書かれた巨大看板を確認した

尾道



・安息の地

 「お風呂café」が全国に構えていることは知っていたが、まさか初めての利用がここになろうとは想像もしていなかった。大宮店を知る明石曰く、この系列はお風呂の他にも、漫画や雑誌、飲み物まで充実していて、時間つぶしには最適とのことだが、まったくその通りだった。

内湯(公式HPより)

 円形の浴場には、同じく円形にシャワーが設置されており、稀有な配置にスパリゾートの遊び心を感受した。レバーを捻り、全身にシャワーを浴びる。その瞬間、沖島に始まる長大な一日のゴールを迎えたような気分になり、軽く感動した。1日目、2日目はバス移動が中心だったが、今日なんてバスはもちろん、電車やフェリーにも乗ったし、おまけに相当な距離を徒歩で移動した。寝ても決して清算しきれない積み重なる疲労を抱えながら、よくここまで行動できたものだ、と自分を労りましたとさ。

 右奥に写る席でオセロをした(公式HPより)

 露天スペースに行く。風呂の外にはオセロとそれで遊びための席が用意されていたため(本当にサービスが良い)、明石と文字通り"裸一貫"の対決に興じた。大抵、ボードゲームには定石の動きが存在し、オセロだってその例に漏れないはずだが、生憎それを知らず、慎重に思考しているようで実際はノリでゲームを進めることになった。結果、大敗北。ゲームが進むにつれ、じわじわと行き場がなくなっていく感じを久々に経験した。悔しい。

 風呂から上がるも、まだまだバスの時間まで余裕があったため、休憩スペースで漫画を読み漁る運びになったが、自分は漫画には手を付けず、持参した岡本太郎の『今日の芸術』を読み進めた。周りが漫画や雑誌に耽るなか、ただ一人、活字とがっぷり四つな自分に、大変質の悪い悦を覚えた。ただしばらくすると、読書を続ける体力は尽きてしまい、結局最後は出発の時間までスマホをぽちぽちしてた。

尾道

・メンバー
明石、尾道

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