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有斐閣の編集者が新入生におすすめする本:商学・マーケティング編

こんにちは、有斐閣書籍編集第二部です。

今年は春から例年と違うかたちで進んできました。そんななかでも新しく学問に興味をもつ方、もった方は多いと思います。この一連のシリーズ記事では、各分野を担当する編集部員に「新入生におすすめする本」を尋ねています。(経済学編政治学編社会学編心理学編経営学編もどうぞ)

今回は「商学・マーケティング編」、編集部のシバタに話を聞いていきます。内容は今回もこんな感じ。

①分野のかんたんな紹介

――:商学って、文字通りに受け取ると「商い(あきない)」を学ぶわけで、経営学の紹介でも話題になりましたけど「お金儲け」の印象があります。マーケティングはもう少し華やかで、人気があるイメージのような……

シバタ:「商学」はあまり定義されていないので、じつは難しいですね。大学で「商学総論」といった科目もありますが、多くは商業学や流通論ですから。

――:なるほど、字面のイメージとは違う感じになりますね。

シバタ:商学とは「お金儲け」を学ぶのではなくて、「企業が相互に関連し合い、循環する状態にそのまま関心を寄せる」(石原武政・忽那憲治編『商学への招待』)学問でして、経済学と経営学の中間的な位置を占めると言われています。

つまり、経済主体、たとえば企業間の取引に関心をもっている領域といえると思います。ですから、対象は広く、商業流通物流はもちろん、金融保険貿易為替会計など、多様な分野が含まれるわけですね。

――:なるほど!「取引」という言葉から広く想像してみると、かなりイメージがしやすいですね。働く世界のバックグラウンド全般、という感じでしょうか。

シバタ:一方、マーケティングはやはり商学の一分野といえ、いかにして製造業者が商品を消費者に届けるかといったことを中心に考える分野といえるでしょう。ですから、メーカーによる戦略といった視点だけではなく、商品を届ける対象である消費者の心理が研究されることが多くあるわけですね。あと、マーケティングには、消費者の好みの変化といったことが影響しますから、たとえばSNSなどの広がりといったようなコミュニケーションに関する新しい動向にも強い関心をもっています。

――:マーケティングのほうも想像していたよりずっと関心が広い学問みたいですね。心理学とか社会学とか、他分野の議論とも通じそうです。人気があるのも納得ですね。

②予備知識なしに1冊目に読みたい本

――:それでは、学生さんに一冊目におすすめしたい本を紹介してください。

シバタ:商学全般を取り上げた書籍は少ないのが現状ですが、やはり先ほど挙げた『商学への招待』がいいと思いますね。わかりやすく書かれていながら、深い内容も含んでいて、関心が引かれると思いますよ。

マーケティングですと、その名も『はじめてのマーケティング』はいかがでしょうか。語り掛けるような筆致ながら、マーケティングの奥深い世界に引き込まれます。

また、『マーケティングをつかむ 新版』も架空のケースを読み解きながら、広がりのあるテーマをおもしろく学べますよ。

――:パラパラめくっただけでも、どれも読みやすそうですし、はじめの一冊によさそうですね。ストゥディアに、「つかむ」と、マーケティングのタイトルはどのシリーズでもよく読まれている印象があります。

③その次に読むといい本

――:それでは一冊目が終わったあと、その次に読むといい本を教えてください。

シバタ:そうですね、ベストセラーとなっている有斐閣アルマというシリーズの『マーケティング戦略 第5版』がおすすめですね。体系的なテキストといえますが、企業のケースも多く入っていて、生き生きと学べます。実務家にも好評の本でして、この本を読み込んだら、マーケターへの第一歩といえるのではないでしょうか。

――:この本は定番中の定番、といった感じでしょうか。入門書はいっぱい出ていますが、こういう体系的な本はなかなかなさそうです。

シバタ:あと、いまマーケティングで世界的に最も著名なフィリップ・コトラーが中心となって書いた『コトラーのマーケティング4.0』(朝日新聞出版)は新しいマーケティングの展開を解説していて、スマホをよく活用している学生さんにとっても大きな刺激を受けるのではないでしょうか。読みやすくまとめられていますし。

そうそう、あとウェブ上で読めるものも紹介しましょう。碩学舎という出版社のサイトには、オープン・アクセスできる雑誌がありますね(SBJといいます)。そこに、商学やマーケティングを学ぶために参考になる内容が載っています。第一人者が対談形式で、さまざまに語っていますので、読みやすいですよ。


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