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有斐閣の編集者が新入生におすすめする本:社会学編

こんにちは、有斐閣書籍編集第二部です。

各分野を担当する編集部員に「新入生におすすめする本」をたずねていく企画(経済学編政治学編)、今回は「社会学編」です。

内容は、こんな感じ。

1.分野のかんたんな紹介

それでは編集部から、シカマに話を聞いていきます。

——:さっそくですけど、社会学ってどんな学問なんでしょう。 身近なようで、よくわからない印象もあるんですが。

シカマ:これ、社会学を勉強した人なら、よく聞かれる質問かもしれません。ぼんやりしてて、はじめはイメージしにくいんですよね。

——:高校までの社会科とは違うんですよね?

シカマ:基本的にはその延長で考えてほしいんですけど、それだと暗記科目のイメージがあるような。大学で学べる社会学って、もっと能動的な、おもしろい学問なんですよ。ちょうど直近で、日本社会学会が、高校生向けの学問紹介を出していました。そこでは、

異なる価値観をもった人間たちが多数集まって形成されるこの社会を解き明かす学問

と簡潔に定義されています。日本社会学会は日本で一番大きな社会学の学会なので、多くの専門家が議論して出した定義として信頼できますね。

そのうえで僕自身が自分の言葉で説明するなら、「自分と違う立場の人たちの考えを知ったり、その人たちが置かれている状況社会の問題として捉えて、考えていく学問」という感じでしょうか。うーん、やっぱり抽象的になってしまうので、本を紹介するのが早いかもしれません。

2.予備知識なしに1冊目に読みたい本

——:じゃあ、実際に一冊目に読むとしたら、どんな本を薦めますか?

シカマ:悩みどころですが、補足や予備知識なしで取っつきやすいのは『質的社会調査の方法』で、とくにまず序章を読むことをお薦めしたいですね。

この本は、社会学の中でも「質的社会調査」の、方法論の分野の教科書なんですけど、長めに書かれた序章が、社会学全体のわかりやすい入門になっています。読むと伝わるというか、響く文章だと思います。

そうそう、この本はライターや記者、編集者からも評判がよくて、人にインタビュー取材をしたり、人と関わってコミュニケーションをする仕事に興味があるなら、絶対おすすめです。

——:電子書籍版も好評みたいですね。たしかに、ぐいぐい読めそうです。

シカマ:もちろん最後まで読み通してもらえれば一番いいんですけど、もし途中で違う興味がわいたら、序章だけ読んで、自分の関心に沿ったテーマのほかの本に飛んでもらってもよいと思います。戻ってきたときには、より深く楽しめるようになっているはずです。

3.その次に読むといい本

——:具体的に、どの本がいいですか? 初学者に向けた本でお願いします。

シカマ:社会学は本当に対象が幅広いので、まずはオーソドクスな教科書で、どんな議論があるかを知るといいと思います。よくいわれる「有斐閣的」な概論教科書だったら『Do! ソシオロジー〔改訂版〕』とか『現代社会論』がよいのかな、と思います。いま、大学で教わる社会学をざっくり自分でも学べますよ。

それから『社会学の歴史Ⅰ』は、歴史に名を残した社会学者が、自身の抱いた「謎」とどうやって向き合ったのか、を講義仕立てで語っていく内容で、かなり好評です。ちょくちょく「『Ⅱ』はいつ出るの!?」と聞かれますが、著者は鋭意執筆中ですから…(西の方角を見る)。

あるいは、最近の傾向として、他社も含めて少し変化球の入門書が増えているので、そういう本を読むのもよいような気もしています。

——:変化球、ですか?

シカマ:たとえば、若い研究者が集まって書いた『ふれる社会学』(ケイン樹里安・上原健太郎編、北樹出版)は、「飯テロ」とか「スニーカー」とか、本当に自分の身近なところにある社会学の糸口をたくさん紹介していて、議論の間口の広さを感じるとともに、学問のおもしろさを手軽に感じられます。いまの社会学の「マインド」みたいなものも伝わると思いますね。

——:スマホ、就活、よさこい、レインボー……社会学って本当に間口が広いですね。へえええ。

シカマ:『ふれしゃか』と共通するような、間口の広さでいうと僕自身は『ファッションで社会学する』という本を担当しています。

この本は、ファッションを研究対象にした文化社会学の本でもありつつ、読み進めていくと社会学の基本的な概念考え方にかなり広くふれられるように作っているので、普通の概論の代わりにこの本で学んでいくのもよいと思います。もちろんファッションに興味がある人なら、まず最初の1冊にお薦めしたいですね。

——:なるほど、パラパラとめくると、この本にはジェンダーの話がよく出てきますね。

シカマ:いまはジェンダーについて勉強することがすべての基礎、教養に通じることだと思っています。『ファッションで社会学する』でも頻出だし、どんな社会学の本にも少しは必ずふれられていますけど、もし自分で読み進めるなら『はじめてのジェンダー論』がイチオシですね。担当書ではないんですけど、これはほんと読んでよかったです。

——:『質的社会調査の方法』と同じストゥディアシリーズの。

シカマ:そうですね。有斐閣というと有斐閣アルマが有名ですけど、ストゥディアはいま元気のあるシリーズです。自習・独習にも向いている本が多いので、分野を問わずお薦めですね。

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