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有斐閣の編集者が新入生におすすめする本:政治学編

こんにちは、有斐閣書籍編集第2部です。

前回から続いて、各分野を担当する編集部員に「新入生におすすめする本」をたずねる企画。今回は「政治学編」です。

内容は、今回もこんな感じ。

1.分野のかんたんな紹介

それでは、編集部からイワタオカヤマに話を聞いていきましょう!


——:政治学って、名前そのままに考えると、政治家とか、政府のやることを研究する学問だと想像できますけど、それで合っていますか?

オカヤマ:おおまかにはその認識で間違いないと思います。ただ、私たちが政治に働きかける行動、たとえば選挙での投票行動やデモなどの社会運動なども研究対象です。また、そもそも政治とは何かといったことや、自由や平等といった概念・理論、さらには国家と国家の関係を研究している方もいます。いずれの分野も入門書がありますから、気になるテーマから手に取るとよいと思います。

——:政治に関わることなら、具体的なことから、抽象的なことまで……

オカヤマ:政府とは直接関係のない、家庭内の政治を含む日常生活こそ政治だという議論もありますし、そういった日常生活の分析も政治学に含められています。ちょうど最近、日常生活こそが政治の場なのではないかという問題意識から編まれた『日常生活と政治』(田村哲樹編、岩波書店)という骨太な論文集も出版されましたね。


——:研究対象は、名前から想像されるよりもだいぶ幅があるんですね。

オカヤマ:それに応じて、研究手法も多様で、歴史学、統計学、心理学、経済学、量的・質的な社会調査の手法を積極的に取り入れていることにも特徴があると思います。個人的には、「政治学」は対象も方法も、(怒られるかもしれませんが)悪くいえば雑多、よくいえば総合的な学問であると思っています。

2.予備知識なしに1冊目に読みたい本

——:なるほど。政治学には有名な新書も多いし、著作の多い分野という印象もありますけど、予備知識なしで「1冊目に読みたい本」を紹介するとしたら、何を選びますか?

イワタ:1冊目としては、エピソードも豊富で、説明もとてもわかりやすい有斐閣アルマ・シリーズの『はじめて出会う政治学〔第3版〕』をおすすめします。有斐閣の政治学の教科書の中では、累計でいうと、最も売れているものだと思います。『はじ政』と略されることもあります。

ちなみに、最近『ここ政』も出しました。有斐閣ストゥディア・シリーズの『ここから始める政治理論』なんですが、この本も、身近な話題を切り口にした政治理論のテキストとして好評です。

——:『はじ政』と『ここ政』、どっちもおもしろそうですね。いわゆる定番教科書としても、まずは安心して読めそうです。ちなみに、この本が読めた人には、ほかに何かおすすめはありますか?

イワタ:その次というと、『NLAS 政治学〔補訂版〕』はどうでしょうか。政治思想から国際政治まで、政治学がカバーする論点が、ほぼ網羅されていると思います。同じシリーズの『NLAS 国際政治学』もおすすめです。

――:こ、これは、一気に厚〜くなりましたね。がっつり。いわゆる「鈍器」というか。

イワタ:すいません。たしかに、通読するのは厳しいかもしれませんが、関心のある章だけでも読んでいただいて、各章末で紹介している文献などに進んでいってもらえればと思います。

――:たしかに、文献リストも充実していますね。

イワタ政治理論政治過程論といった各論については、アルマやストゥディアといったシリーズの中でいくつか刊行しているものがあるので、そちらのほうも手にとっていただけるとうれしいです。

――:ラインナップを眺めてみると『はじめての東南アジア政治』とか『比較政治制度論』など、いろんなタイトルがありますね。

イワタ:シリーズの中には、政治史外交史各国・各地域の政治といった『NLAS 政治学』ではあまり取り上げられていない領域のテキストも数多く揃っています。日本や世界の歩み、そして日本と米国中国韓国との関係史、あるいは米国やEUの政治などに関心がある人は、そちらから読み始めていただくのがいいかもしれません。

オカヤマ:私からは方法論についてのテキストを紹介したいと思います。先ほど研究手法も多様とお伝えしましたけど、ここでは1冊だけ。『原因を推論する』という本があります。この本は、身近な例や有名な政治学の研究を題材に、実証分析の考え方をわかりやすく紹介した本です。おかげさまで多くの一般読者も獲得しました。政治学をまだ学んでいなくても、おもしろく読めると思います。

――:『原因を推論する』は電子書籍版も好評らしいですね。今こそ手に取ってもらいたい一冊、という感じでしょうか。

3.その次に読むといい本

――:いわゆる有斐閣っぽい「教科書」以外で、初学者におすすめの本ってありませんか?

オカヤマ:先ほど「政治学には有名な新書が多い」という話がありましたが、初学者の方には新書がとっつきやすいかもしれません。各社から、お手頃な価格にもかかわらず本当におもしろい本がたくさん出されてます。とくに政治学の分野では、中公新書が政治学の古典と呼んでもいいような本から、いまホットな政治テーマを第一人者が書き下ろしたもの、また最先端の研究をまとめた本までラインナップされています。

新書には本当にいい本が多いので、挙げだすときりがないのですが、1冊だけとすると『女性のいない民主主義』(前田健太郎著、岩波新書)を紹介したい思います。この本は、政治学におけるさまざまな通説が、ジェンダーというレンズを通して眺めると、まったく違って見えてくる様を見事に描いています。ぜひ政治学の2冊目として読んでみてください。


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