権威も金も恋人もない40手前男が、それでも夢見て「つみ」を重ねる。 ②

「夏の朝」

しばらく夏の朝は
恐怖だった。

めめしい話しだが、
花火大会当日の夜に
彼女の浮気が発覚し、
遠くで花火の音が鳴り響く中、
ふられた。

ごめんといって彼女は泣き、
僕も我慢できずに泣いた。

いま思うと依存していた。

精神的、体力的に辛い経験は
それまでもあったが、
いなくなることで初めて
ぼくは壊れた。

それから食べれず眠れずの日々。
夏の朝は早い。
5時にはすでに明るく、
うるさく虫の声が鳴り響く。

体力勝負の仕事だっただけに
毎日がこたえた。
仕事中に過呼吸もおこした。
ラジオから聞こえる
ファンモンに涙がとまらなくなった。

ようやく食べる、寝ることができるように
なり、
未練はありつつも
なんとか生活は送れるようになった。

そして、次の夏。
早朝のあの雰囲気が
あのときを鮮明に思い出させた。

辛い。悲しい。苦しい。

2.3年はそうだった気がする。
なんともいえない気持ちになる。

それから10年くらい経った。
もうあの時の気持ちには
なれないけど、
でも嫌いだ。
そんな情緒になりそうな気がして。

彼女との思い出は
薄れていく。
もう忘れてしまったことも
多いだろう。

周りにとっちゃ小さな話しで
しょうもないこと。

でも、
僕にとっては
大事件で、
忘れることのできない夏
なんだ。


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夏の思い出

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