第三章 区役所時代⑩「健常者に人権はないんですか!」
新島係長は再び人事課へ苦情を持ち込んだ。三か月かそこらのしんぼうだと思っていたのだが、予想外に長く続いてしまった。「頼みますから、もう辻原さんの指導係を降りさせて下さい」と仲田課長に頭を下げた。
仲田課長にとっても予想外だった。新島係長なら三か月かそこらで慣れるだろうと思っていたのだが、今こうなったことは。
「辻原さん、私に反抗的な態度をとるんですよ!」憤る新島係長。
そこへ、佳奈子がやってきた。現場を見ていた佳奈子は、
「ですが、さっき新島さんが、『ジムっていうのは、やせたい人をカモにした商売』と、辻原さんがジムに通っていることを批判されていたのはどうかと思います。発達障害の人は、否定されているということに敏感なんです」
「私は本当のことを教えてあげただけです。否定ではありません」
新島係長は、発言を撤回する気はないようだ。
佳奈子は、どうして新島係長はあれだけ言ってもわからないんだろう、ともどかしく感じた。
仲田課長には、こういう場を収める方法がさっぱりわからず、様子を見ている。
「福田さんは、私が辻原さんのことをいじめているかのように、一方的にものを言い過ぎるのではないですか。私に言わせれば、福田さんは庶務の仕事に理解がありませんね。辻原さんが、注意散漫、同時にいくつものことができない人だというのは理解しました。で、そういう人だとわかっていながら、どうして私のところに回したんですか!」
新島係長は、紀香だけでなく、人事にも怒りの矛先を向けた。
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小説「艶やかに派手やかに」
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