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soar元理事告発騒動から1年 記憶を風化させない

「発達障害や障害者雇用やソーシャルグッドの界隈で有名なライターで、生きづらさをテーマにしたウェブメディアを運営するNPOの元理事だった人が、複数の女性に性加害を行っていた」という内容の告発がツイッターで行われ、その状況を伝える記事が出た。あれから1年。

筆者も被害者から直接話を聞くことがあった。しかし結局は根本的な問題解決につなげることはできなかった。

記憶の風化は恐ろしい。風化してしまえば、被害の矮小化につながる。不祥事組織の思うつぼだ。自戒を込めて書く。

調べていくうちに、性被害というのは実態(特に被害者の立場)が理解されていないことが多く、「被害者が勇気をもって真実を伝えても信じてもらえず、噓つき呼ばわりされるなどの二次加害を受けることがある」などという話を聞いている。

加害者側が問題解決することなく活動再開させ、時間が過ぎていくなか、人々は何が起きていたのかを正しく知ること、事実と異なる内容が流布されることが助長されないように、十分留意が必要と考える。

性暴力取材を専門にしてきたライターの小川たまかさんによるYahoo!ニュース個人からの第一報。

弁護士ドットコムでも、NPOのガバナンスに法律的見地から着目する観点で報じられた。

被害者と継続的に向き合ってきた秋日子さんにより、時系列に詳しくまとめられた内容。

soarは昨年12月に活動再開。問題発覚の前には860人程度いたサポーターは、現在では550人程度と3割減少した。理事・スタッフの一部も離脱。組織再編をして活動再開後、記事の配信ペースは問題発覚前は月4本程度だったのが、現在は月1、2本程度と少なくなっている。ツイッターで過去記事をシェアするなどして配信ペースの減少を補っているもよう。7月9日には中部地区を主な拠点としたダイバーシティ推進企業と出会えるイベント「Diversity EXPO」に、工藤瑞穂代表が登壇する予定であることがわかった(告知)。

元理事の鈴木悠平氏は、問題発覚を機にYahoo!ニュース個人やツイッターアカウントを閉鎖。今年に入ってから自分のサイト「閒(あわい)」での文章発信を再開。文筆家としての活動以外にも、昨年から立命館大学大学院先端総合学術研究科の後期博士課程に三年次転入していたことがわかった。研究者情報サイトが2021年10月1日付で更新されている。

それにしても彼らは、「生きづらさを抱えた人」から、何を学んだのか。同業者としてみても残念に思う。

彼らは、外部から問題を指摘されてもなお、何が解決されるべきなのか、根本的な問題に向き合う様子はなかった。活動停止して雲隠れし、ほとぼりが冷めた頃にひっそりと活動再開。組織再編と称して表面的には変わったように示す。被害当事者は置き去りのまま。

人々の記憶が風化するに任せるようにする。問題を知らない人、気にしない人を取り込んで再拡大を狙う。そういう方向に向かっていくのだろうか。

ソーシャルグッド、SDGs、ESG、ダイバーシティ&インクルージョンをうたう組織は、理念通り運営されているのか? そう首を傾げざるをえないことが、あちこちで起きている。これからもそうした事象に注視したい。


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