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 紀香がシャイニング下北沢店に通うようになってから、九か月経ったある日。

「辻原さん、今日はどうしてそんな色っぽい格好に?」

 四月初めの水曜日の夜、吉永先生のエアロビクスの時間。黒のブラトップと黒のカプリパンツという姿でスタジオにあらわれた紀香に、吉永先生は驚いた。

「やせられたことで、お腹を出したり、身体のラインを見せてみようと思ったんです。シャイニングの広告に出ているモデルさんをイメージしました」

 すっきりした首筋や肩、真っ直ぐに横に伸びた鎖骨、引き締まった二の腕や背中、くびれた腰を露に。バストはいい形に上がっている。滑らかな黒の生地に覆われたお尻や太ももは裸よりもなまめかしい。ふくらはぎにはほどよい筋肉が付いている。

「大胆なのねえ」

 吉永先生は、シャイニングの広告に出ているモデルを見ると笑ってしまう。あんな客は現実のクラブには百人にひとりも見かけない。体型のいい女性客も、魅せるウェアを着たりしていない。広告のモデルのような女性客が目の前に現れると、大胆だな、と思う。

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仕事のつまづきで発達障害に気付き、エアロビクスインストラクターに転身し成長していくヒロイン。周囲の人間関係のダイナミクスにどう向き合っていくか?

現代日本を舞台に発達障害のあるヒロインの成長を描いた小説。ヒロインは学校時代を経て就職後につまづき、発達障害の診断をされて再就職しますが、…

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