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「被害妄想」「配慮は特別扱いだ」一人だけ在宅勤務許可せず出社強制…職場の発達障害者への差別・偏見に関するアンケート結果①

筆者は世界自閉症啓発デーおよび発達障害啓発週間(4月2日~8日)に合わせて、「職場の発達障害者への差別・偏見に関する緊急アンケート調査」を実施しました。職場で発達障害者が受けた差別や偏見の状況を明らかにし、障害者雇用促進法の効果を検証すると同時に、障害者雇用訴訟に対する発達障害者の意識についても調査しました。

回答内容は回答者の個人的体験などを基にした印象を答えた主観的なものであり、必ずしも最新で正確な情報であること、普遍的であることを保証するものではありません。しかし意識調査とは、客観的でなくても断片的であっても、矮小化せず、当事者の声を拾い、可視化することが大事だと考えています。

集計結果を発表します。今回は1回目で、差別や偏見を受けた体験についての意識調査です。

Q.あなたは職場において、差別や偏見を受けたと感じる場面がありますか。

有効回答22件中
頻繫に感じている 6件
〇配慮が全くされてない、福祉系なのに上の人間に障害の知識がない、周りに変な目で見られる、発言をからかわれる
〇つい先日、上司に意見したところ「精神の病気の人は、他人を否定することしか言わない」的な言い方をされました。上司が明らかに間違えたことを言っていたのに、こちらが否定するせいだと言われました(本当です)
〇キャリアがあるにもかかわらず簡単な業務しかさせない、業務上孤立させる、一人だけ在宅勤務を許可せず出社を強制する、無視する、障害者差別発言や障害者を揶揄する発言をされる、等
〇パワハラにならないギリギリのラインで、嫌みな言動をされる。「精神障害」という言葉を含む資料を読み上げるときに、殊更、その部分だけ強調して読み上げて、周囲の人も薄ら笑っていた。会社の専属のカウンセラーさんに相談しても、私が被害妄想で言っていると思われてしまい、悲しい気持ちになりました。結局、そういうことは、当事者が自分の胸にしまって、受け流すしかないのだと思いました。
ときどき感じている 8件
〇発達障害の診断を受けたことを公表し、業務量を配慮してほしい相談を上司にしたところ、「そんなものを持ってこられたら特別扱いしなきゃいけないってことじゃない」「今でも新人ということで十分に配慮している、これ以上は無理」と言われた
〇"差別、偏見というより理解できてない、この仕事は頑張ってもできないと言ってもなぜできないのか、なぜそうなるのかという感じ。
無意識の差別がある。
合理的配慮を受ける前に認識できてない。甘えだと思われる。"
〇同期が次々転勤する中、異動も転勤も昇格もなく理由を聞いたら病気のことを言われました。でも営業成績は私の方が上でした。
あまり感じていない 4件
〇合理的配慮はしないと言われました
〇差別や偏見というよりも障害への理解の乏しさからの誤解や誤認識
まったく感じていない 3件
〇特に差別偏見を受けたことはない

Q.実際に差別や偏見を受けたと感じた際、どちらに相談しましたか。

有効回答22件中
職場の上司・同僚 3件
職場の相談窓口 1件
職場外の専門機関 4件
家族・友人 4件
インターネット 0件
誰にも相談していない 5件
その他

〇ハローワーク経由の障害者雇用のため、ハローワーク、労基に相談しました。ごく少人数の企業ということもあり、退職をすすめられましたが、すぐに無給になってしまうのがつらいので、まだ辞めていません。友人にも相談しましたが、実際にはさらにひどい言い方をされたため、全員「やめたほうがいい」と言っていました。
〇社内で相談しても無駄だったので、グループ会社全体の相談窓口、労働基準監督署、伊藤弁護士
〇職場のカウンセラー

講評~否認する差別・偏見

差別体験を書いた後に「当事者が自分の胸にしまって、受け流すしかない」ということを書いていた人がいました。まさにそうした現状にあるなか、「差別・偏見を受けている人が声を伝えやすいように」という趣旨に沿った回答が集まりました。

差別や偏見を訴えても「被害妄想の強い精神障害者の言っていることだから」というだけで信じてもらえない、「福祉系なのに障害への理解がない」ということが起こってしまっている、「合理的配慮は特別扱いだ」と反発される、という声もありました。

「パワハラにならないギリギリのライン」というのは何でしょうか。グレーゾーンや抜け道を見つけて、パワハラをそこまで温存したい人がまだまだいるのかと、暗い気持ちになります。

あからさまな差別・偏見は減ってきましたが、「否認する」という形の差別・偏見が強く存在するという印象です。

また体験談のなかに「一人だけ在宅勤務許可せず出社強制」というものがありました。筆者はコロナ以降の障害者雇用を取材していて、「リモートワークの体制が整うのに時間がかかり、長期間自宅待機になった」という話も聞いています。その一方で、企業によっては、もっともらしい理由を色々とつけて、意図的に他の社員と切り離して出社強制していることも行われている可能性も否定できません。

障害者雇用訴訟では、被告会社が2020年2月に全社員の在宅勤務への切り替えを推奨し、その先駆性がメディアに称賛される一方で、メンタル悪化から復職を目指す原告の通勤訓練が行われていたことが発覚しています。裁判で通勤訓練の妥当性が争われています。根拠となったのは厚生労働省の復職の手引きでした。

障害者雇用訴訟をきっかけに、担当する伊藤弁護士が発達障害者の労働問題に取り組んでいることを知り、相談したという人もいました。

次回は、障害者雇用促進法についての意識調査の結果を発表します。


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