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人的資本開示で数字が伴わないPRはもう通用しなくなる!?

「新しい資本主義」を標榜する岸田首相は、施政方針演説で「人への投資の強化」を打ち出し、「人への投資が企業の成長につながる」とし、2022年中に非財務情報、人的資本の情報開示ルールを策定すると明言しました。

新しい資本主義は、成長と分配の好循環を重視しているというところで、いま海外で盛んな、差別や貧困などへのアクションを企業に求める「ステークホルダー資本主義」に通じると言えなくもない。

人的資本の開示、欧米では先行していますが、日本でも上場企業はこれが求められ、投資家、求職者から見られるようになる。投資や就職の判断材料のための、人への投資に関する企業間比較が容易になる。

私は、人的資本開示のルール整備が進めば、障害者の雇用の透明化が進む、とみてきました。

企業が雇用率を達成しているかは、都道府県の労働局に情報開示請求し、雇用状況報告提出企業一覧表のデータを取り寄せれば、調べられます。ただし取り寄せに1か月くらいかかります。また、調べたい企業の本社所在地を管轄する労働局に請求しなくてはなりません。

企業が自主的に雇用率を開示すれば、これが変わります。

個人的に、障害者の雇用率は有価証券報告書に記載を義務付け、未達成企業には上場、特にプライム市場への上場は認めないように、と考えています。

さらに、定着率や正社員登用率、採用コスト、研修の参加率・研修の受講時間・研修にかけた費用、人的資本の生産性と組織パフォーマンスへの貢献度合いを問う指標、出勤はしているのに体調不良やメンタル不調によるパフォーマンス不足がある「プレゼンティーズム」の数値化、ハラスメントなど倫理的な問題がなかったか、その他も開示されるようになれば、行政の指導では行き届きにくい雇用の質チェックにもなりそうです。

これをリンクトインに投稿すると、就労支援に携わる方から、賛同の意見が来ました。

以前支援していた方が就職した企業さんは、雇用した障害者の合理的配慮も受け入れてくれなかったですが、「障害者雇用」を企業PRとして利用しており、蓋を開けてみたら雇用率は満たしておらず行政指導が入っていました。
当事者も支援者も騙されたような気分になりましたし、支援者としても障害者雇用に慣れているかいないかで支援度が変わるので知る権利があるように思います。

ある就労支援者

まさにその通りで、「障害者雇用」を企業PRとして利用しており、蓋を開けてみたら雇用率は満たしておらず行政指導が入っていました、という企業があるんですね。

人的資本開示は、ダイバーシティでこんなことがまかり通っている現状にインパクトを与えるでしょうか。

だからこそ私は、リンクトインで2020年にトップボイスになった発信力を背景に、セールスフォース事件(障害者雇用訴訟)を「ビジネスと人権の問題」と宣言し、被告会社の13年間の雇用実績データを公表し、リンクトインの論調を主導することを目指しました。

法令違反の雇用状況報告未提出の年は、原告への退職勧奨の時期と重なっている。そのうえに厚生労働省の企業名公表の信用低下リスクも抱えている。これまでの実績を踏まえると、その増員計画では雇用率達成に無理が出ないか。そんなタイミングで起きた訴訟です。それだけ重大なインシデントなのです。

「発達障害=訴訟リスク」というイメージを強化し雇用からシャットアウトしようとする見方にも、被告会社の障害者求人公開状況そして野村総研レポートを持ち出して、全面反論しています。

そうしていくうちに、被告会社の関係者が「雇用率を達成した」情報を出してきました。

こちらはそれを見て、雇用率が達成されていればよいとするのではなく、「定着できる環境なのか」、さらに「企業側の認識を追認する判決となった場合、どのような影響となってくるか、障害者雇用にさらなる不安定をもたらすことにならないか」という問題意識を喚起しました。

これにより、定着率、正社員登用率、さらに多くの情報が出されるでしょうか。

ステークホルダー資本主義の旗手となっている巨大企業が、日本でも非財務情報や人権デューデリジェンスの開示で抜本的な解決策を示すための働きかけは、これからも続きます。


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