セールスフォースが削減から一転3000人採用。パワハラ解雇訴訟が続く会社に転職して大丈夫か
CEO「大丈夫、戻っておいで」
8月30日のアメリカ系IT大手・セールスフォースの第2四半期決算発表で、マーク・ベニオフCEOはウォール街のアナリストからの「セールスフォースはレイオフを完了したのか」という質問に、明確には答えず、「これで底を打ったと言えるかどうかは分からない。だが今年初めのような大規模なリストラは計画していない」「あれは一度きりのことで、過ぎたことと思いたい」と答えた。
日本法人でも400人削減か
2023年1月4日、セールスフォースのアメリカ本社からグローバルで社員1割のレイオフ(一時解雇)実施が発表された。
日本の労働法制では、レイオフは認められていない。セールスフォースは、日本国内で人員削減があったかどうかを公表していない。しかし社員によると、実態は日本法人でも、規模、対象となる基準、時期が社員にも知らされないまま、退職勧奨の形を取ることで進められていたという。
同社の従業員数は2022年11月末で約3800人になっていたとされる(日本法人の小出伸一代表が2022年12月にオンライン番組PIVOTで述べた)。だが、日本年金機構のサイトにある「厚生年金保険・健康保険適用事業所検索システム」で調べると、同社の健康保険加入者数、すなわち従業員数は、2023年5月20日時点で3607人、8月20日時点で3417人だった。2022年11月~2023年8月までに、控え目に見て約400人が削減されたとみられる。
「請求権放棄は公序良俗違反」
筆者は独自ルートで、同社が退職勧奨の対象とした社員の退職条件を示した文書を確認した。それによると、損害賠償など全ての請求権の事前放棄を求める条項があった。
元社員複数から「とてもサインできるものではなかった」という声があった。
請求権の事前放棄について、労働問題を扱ってきた中谷雄二弁護士は、退職合意による訴訟リスクの回避とみなしたうえで、「公序良俗違反の契約である」と問題視した。
「外資系企業では高額のパッケージが示されるだけ配慮がある」と言われることがある。しかしセールスフォースの場合、パッケージは3か月分だった。中谷弁護士は、労働者が契約内容を認識しておらず、情報を持ち合わせていないのを背景に、使用者が労働者に対して裁判や労働審判の解決金の相場より極めて低い額のパッケージを示し、一切の請求権の事前放棄を迫っている、と問題視する。
パッケージと引き換えに迫られる退職合意書は、英語と日本語で合わせて12ページ。請求権放棄の他にも、以下の条項について、元社員複数から警戒する声があった。
・労働者には一般的な守秘義務より広範囲にわたる守秘義務を定め、一方で雇用主はこの守秘義務の除外とされ、労働者の情報を開示できるとする
・いずれも広範囲にわたる誹謗行為禁止、秘密保持義務、機密保持義務
・1年間の競合他社での就労を禁ずる
日米で相次ぐ訴訟
日本法人では2件の訴訟から、ハラスメント相談窓口が機能していない実態が浮かび上がった。被害を申し立てた方が解雇や雇い止めに追い込まれることが続いている。
さらに言えば、平等の取り組みへの疑問や報復解雇の疑いは日本法人だけの問題ではなく、アメリカ本社でも昇進での人種差別訴訟や製品の説明をめぐる内部告発訴訟という形で起きた。
8月30日に決算発表を報じたBusiness Insider USのEllen Thomas記者は、「だが同時に、セールスフォースの現役・元従業員が、退職を告げられたり戻ってくるように言われて鞭打たれたように感じているとするなら、それはトップからのメッセージが複雑なせいだ」と結んだ。
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