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「直感」文学

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「直感的」な文学作品を掲載した、ショートショート小説です。
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2017年6月の記事一覧

「直感」文学 *自分として*

「直感」文学 *自分として*

 「自分を見つめ直してみたらいいよ」

 友人にそんなことを言われて、僕は早朝の中にいる。

 なぜそんなことを言われたのか、僕には察しが付かないでいた。

 数年付き合った女性と別れたからか、はたまた、会社の上司と揉めて、結果仕事を辞めることになってしまったからか。……いや、飼い猫のナツメが死んでしまったからなのかもしれない。

 そりゃあ、それらのことはそれなりにしんどかったし、僕の心をこれで

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「直感」文学 *ねえ、頭の中見せて*

「直感」文学 *ねえ、頭の中見せて*

 頭の中に入られる。

 という感覚を味わったことがあるだろうか。

 僕はある。

 彼女のユメはいつも僕の頭の中に入ろうと必死だ。

 「今何考えているの?」
 「今どう思った?」
 「ねえ、どうしたいの?」

 質問の嵐は、僕を疲弊させ、そして狼狽させる。

 彼女がなぜこんなにも僕の頭の中に入ろうとするのか、僕は考えてみるのだけど。

 しかし、それで得られるメリットなど存在するのだろうか

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「直感」文学 *ハットとミサト*

「直感」文学 *ハットとミサト*

 「ねえ、まだなの?」

 僕はミサトに急かされながらも、15個あるハットの中から今日の気分に一番合ったものを選び出そうとしていた。

 「ねえ、どれも変わらないって」

 玄関から聞こえてくる声を無視しながら、僕はじっと帽子を眺めている。

 彼女を無視するのだって仕方ない。だってこれが僕の唯一の楽しみだとも言えるのだから。

 帽子を被るまでの時間。こうして15個のハットを並べて、自分の気分に

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「直感」文学 *「マモル」*

「直感」文学 *「マモル」*

 「少しだけでもいいか」

 マモルはそう言ってから、ゆっくりと目を開けた。

 マモルはきっと、何かを決意したようでもあったし、何かを諦めたようでもあった。

 つまりそこには何かを清算しようとする試みが感じられる。

 ただそれだけであるように、……いや、ただそれ以上の物事を収集するように。

 しかしマモルには失うものは何もなく、いや、欲するものだって何もなかったのだ。

 マモルが持ってい

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「直感」文学 *ただの口実*

「直感」文学 *ただの口実*

 雲の下で何を想う?

 まだら雲、とても綺麗で、その隙間に、何か小さな星を見た。

 ずっと遠くの星だけど、なんだか意味は少しだけ近くにあるような気がしたりもして。とても綺麗で。

 もし、その星をコウジも見ていたとしたら、私たちは何かちょっとだけ繋がっているように思えるかもしれない。

 だからコウジに電話を掛けて「ねえ、今空見てよ!」と言ってみる。

 「え?空?」

 とコウジの低い声が耳

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