「直感」文学 *自分として*
「自分を見つめ直してみたらいいよ」
友人にそんなことを言われて、僕は早朝の中にいる。
なぜそんなことを言われたのか、僕には察しが付かないでいた。
数年付き合った女性と別れたからか、はたまた、会社の上司と揉めて、結果仕事を辞めることになってしまったからか。……いや、飼い猫のナツメが死んでしまったからなのかもしれない。
そりゃあ、それらのことはそれなりにしんどかったし、僕の心をこれでもかというくらいに痛めつけもした。
だけど、それらの事柄は僕にはどうしても回避出来ないことだったのだ。
しょうがない、と完全に割り切れはしないのだけど、なんとなくでも理解することくらいは出来た。
そんな僕が何を見つめ直したらいいというのだろうか。
友人は、何を思って僕にそんなことを言ったのだろうか。
それは分かりそうにない……。
分かりそうにないのだけど、僕がどんな辛い心情であったところで、太陽は当たり前のように昇ってくる。
徐々に明るくなる空を見ながら、僕という存在は、世界にとってそれくらい小さなものなのだ。
ただ、そう実感するばかりで、空虚な心はただそこに佇むばかりだった。
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