_直感_文学ヘッダー

「直感」文学 *自分として*

 「自分を見つめ直してみたらいいよ」

 友人にそんなことを言われて、僕は早朝の中にいる。

 なぜそんなことを言われたのか、僕には察しが付かないでいた。

 数年付き合った女性と別れたからか、はたまた、会社の上司と揉めて、結果仕事を辞めることになってしまったからか。……いや、飼い猫のナツメが死んでしまったからなのかもしれない。

 そりゃあ、それらのことはそれなりにしんどかったし、僕の心をこれでもかというくらいに痛めつけもした。

 だけど、それらの事柄は僕にはどうしても回避出来ないことだったのだ。

 しょうがない、と完全に割り切れはしないのだけど、なんとなくでも理解することくらいは出来た。

 そんな僕が何を見つめ直したらいいというのだろうか。

 友人は、何を思って僕にそんなことを言ったのだろうか。

 それは分かりそうにない……。

 分かりそうにないのだけど、僕がどんな辛い心情であったところで、太陽は当たり前のように昇ってくる。

 徐々に明るくなる空を見ながら、僕という存在は、世界にとってそれくらい小さなものなのだ。

 ただ、そう実感するばかりで、空虚な心はただそこに佇むばかりだった。

*********************
その他短編小説はこちら↓
■古びた町の本屋さん
https://furumachi.link

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?