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新人だった江藤が泣いた日、何があったのか

今でこそいつも明るく、かつ鉄のハートと言われるわたしですが、新人だった頃、一度だけ泣いたことがあります。どちらかと言うと、泣かされたと言う方が近いかもしれません。

なぜかひどく叱られた日

若い頃のわたしは跳ねっ返りで、どう考えても扱いやすい人間ではありませんでした。態度も多分いまと比べると悪かったし、男性ばかりの職場で目立ちまくっていたと思います。採用も、教育実習中に決まるなど、ちょっと珍しいパターンでした。とはいえ、卒業生でもあったので可愛がってくれる20歳くらい年上の方々もおり、それなりに楽しく過ごしていました。

しかし、それをよく思わない人たちもいました。今はお互いその学校を去っていますし、なんの恨みもないのですが、当時起こったことは24歳のわたしにとって悔しいし、悲しいし、逃げることもできず、恐怖体験でした。

何があったか。それはわたしの一言がきっかけでした。

「生徒の成績が上がるのは、ほんの少しの何かなんですよ。」

それが先輩の逆鱗に触れたのです。正確にいうと、その先輩が尊敬していた方にわたしが言い放ったことを聞きつけてのことでした。1時間以上、お前は間違っている、偏差値を上げるのはそんな簡単なことじゃない、俺たちがどんな思いでやっているか分かっているのか、お前は間違っている、生意気だ、という趣旨のことをまくしたてられたのでした。

表現する手立てがない

そのうちなぜか涙がこみ上げてきて、気づくと流れ落ちていました。その先輩は満足したのか、しばらくすると帰してくれました。20世紀の日本の学校にはそんなことは日常茶飯事でしたし、パワハラという言葉すら存在しなかったので、そんなものかと飲み込みました。

その時、何が悲しかったのか最近になって考えていました。

今なら何が違うのか。今は知識と経験と、成功体験があるので同じことは決して起こりませんが、一体その時のわたしは何が悲しかったのだろうかと。

それは、「ほんの少しの何か」が何かというのを説明する言葉がなかったこと。絶対に生徒が変わることは感覚として分かっていたし、実際自分の教えていたクラスは軒並み他のクラスより模擬試験の成績も出ていました。でも、それがなんなのか説明できなかったのです。当時のわたしは英語の主格と目的格すら怪しい文法知識でしたから、学校で使うボキャブラリーがほぼ欠けている状態だったわけです。

その無力感ときたら!これはバンデューラの言葉ですが、まさに自分でどうしようもない、解決できない状態で1時間も怒鳴られたのですから悔しかったに違いありません。

Human functioning is facilitated by a personal sense of control. If people believe that they can take action to solve a problem instrumentally, they become more inclined to do so and feel more committed to this decision. The construct of self-efficacy was introduced by Bandura and represents one core aspect of his social-cognitive theory.

Bandura, 1977, 1995

24歳のわたしに教えてあげたい言葉

当時わたしが知らなかった言葉、「ほんの少しの何か」というのはセルフ・エフィカシーでした。日本語だと自己効力感と訳したりします。上記の英語をDeepLさんに訳してもらいました。

人間の能力は、個人が自分でなんとかできるだろうという感覚によって促進される。もし、人が自分の力で問題を解決できると思えば、そうする傾向が強くなり、この決断により強い意志を感じるようになる。

Bandura, 1977, 1995

これは、根拠もなく自分はできる!と勘違いすることとは異なります。生徒が経験によって、何かの課題について解決する見通しを持つことができることに近いでしょうか。特にいわゆる成績不振者は高校にもなると「自分には無理」「どうせできない」と最初から決めつけて、言われたことの最小限しかやろうとしかなったり、学ぶ意欲を持つことができなくなっています。そんな彼らでも何かのきっかけで成功し、成功が積み重なることで学ぶ意欲を持つようになる。結果的に成績がついてくるということを感覚として言いたかったけど、説明がつきませんでした。

24歳のわたし、それはセルフ・エフィカシーだよ!

それ以降、一度も職場で涙を見せたことはないので、よほど悔しかったんでしょうね。笑

さいごに

次の講座ではこのセルフ・エフィカシーが言語の授業や教科横断型の取り組みでどのように変化したかという実践例について、小中高大の先生から聞くことができます。ワークショップ形式ですし、ゆるっと楽しくご参加いただけます。オーガニックラーニングでは年間を通して様々な講座やワークショップをしています。いつかお会いできるのを楽しみにしています。(2023年3月3日スタートです) 

オーガニックラーニングでは年間を通して様々な講座やワークショップをしています。いつかお会いできるのを楽しみにしています。



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