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姉弟仲

あらすじ

自分には3つ離れた姉がいる。
姉だけ県外に住んでいる。
会うのは年に数回あるかないか。
過去の出来事とかがあって、姉との間に距離感の厚い壁があった。
その壁がなくなった話。

姉との関係性

とても小さい頃、姉とよくケンカして泣かされていた。
ちょっかいを出してきて、子供ながらウザいと思っていた。
だけど、一緒におつかいに行ったり、家で遊んだりしていた。
その頃はまだ仲が良かった頃だろう。

姉が中学2年生の頃、反抗期が始まった。
それまではまじめで学校の成績もそこそこ良かった気がする。

高校に進学すると、もうやりたい放題。
学校に行かず、遅くまで出歩き警察に補導され、いわゆる反社会的な行動そのもの。
家に帰ってくると、母と姉の大喧嘩が始まる。
ガシャンガシャンと物が飛び交う音と、怒鳴り声の嵐。
そして、最悪な時は家出をする。
人に言えないようなことを他にもやっていた。

自分はちょうど中学生で思春期真っ只中。
このとき、姉と話すことは全くなく、顔も見ていなかったと思う。
自然に姉との距離が離れていった。

姉が高校卒業してから反抗期はなくなっていった。
卒業して少し経ったとき、親から離れて県外で一人暮らしを始める。
職を転々としながらなんとか生活している。
今では、反抗期の時が夢に思えるくらい、優しくて立派に生きている。

しかし、姉との関係性や距離感は、反抗期の時と何も変わっていなかった。
自分からは話しかけることもなく、何か言われたら返事するだけ。
それは、姉に対して関心や興味がなくなっていたのだと思う。
勝手に頭の片隅に追いやっていたのかもしれない。

転機

姉が最近おばあちゃん家に住み始めていた。
ある日、おばあちゃん家の近くに仕事の出張で行くことになった。
自分の家に帰るのが面倒だから泊まる予定だった。
次の日休みだったから、仕事終わりに1人で飲みに行こうかな考えていた。
だけど、「そういえば姉がこっちにいるな」と頭に浮かぶ。
「そもそも今まで姉とサシで飲んだことなかったな」と気づく。
ふと、一緒に飲んでいるところを想像する。
自然と楽しさとワクワクした気持ちが湧いてきた。
直感的に今しかないと思って、姉にLINEをする。
自分から連絡することとか、ましてや、誘うことなんて今までになかったことだ。

サシ飲み

仕事が終わり、一度おばあちゃん家に帰る。
そして、姉と一緒にバスに乗って駅へ向かう。

お互いによそよそしくて、変にテンションが高い。
当たり障りのない会話。
これが姉との距離感だなと感じつつ、バスから降りて居酒屋を探す。

大きな通りから少し逸れて、小さな居酒屋を見つける。
「ここにするか」と話しながら店内に入る。

姉も最初は生ビールか。
飲む時はあまり食べないことを知る。
ちなみに自分は食べないと飲めない質だ。
そこは兄弟でも似ていない部分だった。

最初はいたって普通の会話だった。
おばあちゃんの話、仕事の話とか。

だけど、気がつけばお互い熱い話をしていた。
心をオープンにして、ありのままの自分で話している。
やりたいことや悩みごととか、深い話まで。

飲み終わる頃には、姉との厚い壁はなくなっていた。

ここで帰るかと思いきや、まさかのゲイバー(ミックスバー)へ行くことに。
姉のオススメのお店らしい(笑)
そこでは、お酒を飲みながら、カラオケをしてみんだで熱唱。
家族でカラオケに行ったことはあった。
だけど、今まで姉と一緒に曲を歌うことあったっけな。

まさか姉弟でゲイバー行くとは想像もしていなかった(笑)
気がつけば、閉店の夜中2時。
めっちゃ楽しかったな。

そこから駅周辺をぶらぶら歩く。
まだまだ話は尽きない。

いろいろ話していると、姉の感情が爆発。
泣き出してしまった。
いろいろな考えや思いを吐き出しているように見えた。
今まで抱えていたたくさんのものがあるのだろう。
それを横で座って聞いている自分も感情が爆発。
涙があふれてくる。
胸が熱すぎる。

駅の前で地べたに座りながら姉弟揃って号泣している光景は、さぞ不思議で謎な光景だっただろう。
そんな少し肌寒い夜中3時。

そこからは、カラオケに行ったものの、歌わず寝て1時間で出た。

もう眠くてネットカフェに行った。
午前10時まで爆睡し、バスでやっと帰宅。

2人の時間

コンビニで買ったカップヌードルを2人して食べながらまたおしゃべり。
少しして、1つの布団で2人で昼寝した。
先に自分が寝ていると掛け布団をそっとかけてくれた。
お母さんのような優しさ。
なんか今知ったかのように新鮮で心も温かくなった。

目覚めて、自宅に帰る準備をしていると、姉が「一緒に帰ろうかな」と言い出して、一緒に帰る事に。

姉とまたバスを乗り、電車を乗り継ぐ。
そういえば、小さい頃に姉と電車に乗っておばあちゃん家に行ったな、と記憶が蘇る。
20年以上?ぶりに姉と電車に乗っているなと回想しながら自宅に向かう。

電車に乗っている間、自分はほとんど寝ていた。
その間、姉は何を考えていたのだろうか。

もう夕方の6時。
帰宅して、家族みんなで鍋を食べる。
やっぱりうちの家族は仲良いな。
改めて幸せを感じた時間。

時が動き出す

姉との関係のことが頭のどこかに引っかかっていたのかもしれない。
姉との関係性は、学生の頃から止まっていたのだと思う。
時が止まっているかのように。

だけど、やっと時が進み始めた。
心の中のシコリが1つなくなったかのように、気持ちがすっきりした。

こんな身近に、自分が気づいていない部分に、予想以上に大きな問題があったのかな。
その分、解消されたことで、清々しくて、心が温かい。

姉とは性格も考え方も正反対だと思っていた。
だけど、考え方は意外と似ていた。
信念があって何があっても突き進む強い人間だ。

自分の直感に従って良かった。
とても充実した楽しい時間だった。

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