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指人形、はじめましたの行為と記録 Vol.134「今週もタルト」

ゆびにん制作日記(2024.04.08 - 04.14)
今週もタルトを作っておりました。
屋内の点検の兼ね合いで急遽部屋の片付けをしなければならないことになり、2日ばかり作業をしない日が発生したので作業が捗っておりません。
4/8 (月)
 ブルーベリータルトのペプラム縫い付け。
4/9 (火) ブルーベリータルト、チョコレートタルト、桜タルトに顔パーツ縫い付け。レモンタルトパーツ切り出し。
4/10 (水)
 オレンジタルト、マスカットタルトパーツ切り出し。マスカット縫い付け。
4/11 (木) マスカット縫い付け。
4/12 (金) - 13 (土) 制作休み。
4/14 (日) マスカットタルトの生地を縫い付け。

右端がマスカットタルト

今週観た映画
・劇場版 名探偵コナン 100万ドルの五稜星(感想

今週読んだ本・今読んでいる本
『人志とたけし 芸能にとって「笑い」とはなにか』杉田俊介(晶文社)

読了。
映画に特化して松本人志・ビートたけしの「笑い」に対する考え方やパーソナリティを解き明かそうと試みていましたが、これはどうにも無理があると思いました。テレビ番組や舞台で表現したい笑いと、映画で表現したい笑いは全く違うものの可能性もあるわけですし、映画でやろうとしている笑いは一部分でしかないのに、そこにクローズアップして一人の芸人の笑いに対する考え方を論じるのは、木を見て森を見ずというやつじゃないでしょうか。簡単に観られる映画やバラエティ番組からああじゃないか、こうじゃないかと想像するのは一般人でも出来ることなので、プロの批評家として一芸人の精神性について論じようと思ったら、最低限舞台での芸は観ておいて然るべきなんじゃないですかね…
とはいえ、ダウンタウンは2022年の伝説の一日まで31年間舞台で漫才は披露していなかったそうで、本書が出版された2020年当時は当然観られませんし、31年前、著者は10代で関東住まいとなると難しいでしょう。実際に芸を観ていないんだったら、無理に映画から本人の精神性まで解き明かそうとせずに、映画の中で描かれていることだけに着目して書けばよかったのにと思いました。
また、松本さんについて明確な論拠も示さずに「天才ではない」「凡庸な人間」と繰り返し書かれているのにもうんざりしました。私は松本さんがバラエティ番組でボソッと挟むコメントに対して絶妙だと思うことはあっても、取り立ててファンではなく、ごっつの時代も知らないのでどこらへんが天才と言われる所以なのかいまいちわかりません。だから著者の天才ではないという意見に反対しているわけではありません。ただ「天才ではない」「凡庸な人間」と断定している以上、その考えに至った経緯や論理立てられた意見を期待してしまいました。根拠がぼんやりとしている割に柳田國男や折口信夫の芸能についての考え方をやたらと引っ張り出してくるあたりに、とにかく天才と認めたくない、天才であっては困る、みたいな必死さは感じさせられましたし、一体何がこの人をここまで駆り立てているんだろう…と著者のこれまでの人生の方が気になりました。松本さんについて書かれた文章はnoteの記事が元になっていると記載されていたので覗いてみたらなかなか大変そうなことになっていましたが…

昨年12月に読んだ小林信彦著『決定版 日本の喜劇人』の記憶が新しいこともあり、終始「小林さんだったらどんな風に松本人志を論じるだろうなあ…」と思いながらの読書になってしまいました。(たけしについては終わりの方でチラッと触れられていました)
小林さんは舞台・テレビ・映画・役者や芸人自身のパーソナリティにまで精通していて、クレイジーキャッツとの縁が深く『植木等ショー』の製作にがっつり携わっていたり『夢で逢いましょう』で作家を務めていて、なんなら出演したこともある方なので、そういう人と比べるのは酷かもしれません。しかし、「笑い」についての批評を書くならば、せめて小林さんと同じくらいの気概は持っていて欲しいと思いました。

あと、「この人、そもそもお笑い自体が全然好きじゃないのでは?」となんとなく思いました。お笑いを含めた芸能全般を政治や社会に結び付けてあれこれ考えるのが好きというか、お笑いを観て笑う・楽しむという行為自体には興味がなさそう。現代のお笑いをやたらと映画『ジョーカー』に当てはめて語りたがるし…
その点、小林さんは批評家である以前にお笑いファンなのでご本人の楽しさが伝わってくるし読んでいて楽しかったので、単純にお笑いについて書かれていればどんな本でも面白くなるわけじゃないんだなと気づかされました。

そんなわけで杉田さんの批評パートはまあとにかく睡魔に襲われまして、本書の文中の言葉を借りるならば、第1章こそ「なんなんだろう、このつまらない本は」でした。杉田さんが「ビートたけし/北野武」という人に心酔しているのは伝わってきたので、バズった松本人志についてのnote記事をダシにして北野武を褒める文章を書きたかった、北野武について語り合う対談も載せたかった、そんなところなんじゃないかと思ってしまいました。対談、とりわけマキタスポーツさんの発言は面白かったので、気になる方は第2章を読んでみてください。小林信彦さんの名前が出てきて「おおっ!」と思ったり、マキタさんの著作を読んでみようと思ったりしました。

ただ、対談内でも事実誤認などいくつか気になる箇所がありました。
大きいものだけ一点挙げると、九龍ジョーさんが松本さんについてM-1を立ち上げた人間かのように言っている以下の部分。

NSC出身であり、松本さんだっていろいろな段階で勝ち上がり、勝ち残ってきたわけです。そういう人が『M-1』や『キングオブコント』を生み出した。勝ち負けを競技化した。

P.152

M-1を生み出したのは当時吉本社員だった谷良一さんと島田紳助さんです。1月に読んだ谷さんの『M-1はじめました。』によると、開催から賞金に至るまで中身はほとんど紳助さんのアイデアで出来上がっています。さあ審査員を誰にしようとなった時、ようやく松本さんに声がかかっているので、彼は作った側ではなく招かれた側の人間なのです。ここらへんの事実誤認は校閲でいくらでも直しようがあったと思うのですが、出版社内にお笑いに明るい人がいなかったのでしょうか…

本書は2020年に書かれていることもあって、状況が変わっている部分も多いですし、現在進行形のお笑い界についてはお笑いナタリーの「今月のお笑い」を読むのが一番いいのかもしれませんね。


『金は払う、冒険は愉快だ』川井俊夫(素粒社)

読んでいる最中。
本と雑談ラジオで吉泉知彦さんが面白いと言っていたので気になって借りてみました。私が骨董屋さんが好きなのもありますが、めちゃくちゃ面白いです!


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